相手役の花乃まりあですが、彼女は綾瀬はるかにそっくりですね。日本の俳優に疎い僕がなぜそんなことを知っているかと言うと、「似ている」という記事を読んだわけではなく、日本に来る機内で「海街diary」という映画を観たからです。綾瀬はるかが長女役でしたから、ミー・アンド・マイガールを観る前に現役花組生の下調べをしたときに「あっ」とビックリしたのでした。
しかし、舞台化粧をしないほうが美しいひとというのは本当にいるのですね…まあ、北翔海莉もそうですが。
普段は整った綺麗な顔立ちなのに、宝塚の濃い舞台化粧というものは罪作りだと思いました。
歌はそれほど上手とは言えませんが無難にこなしていました。ただ、時々高音に乱れが生じるのが気になりましたが。高いキイというのは訓練と努力次第で出るようになる、と確か故・本田美奈子が言っていたのを読んだことがあります。
それでも、ビルへの愛のために身を引こうとするサリー、花乃まりあの「一度ハートをなくしたら」はしっとりと胸に響きましたし、その哀しさと愛らしさで観客の心をつかんでいたと思います。
(いや、そりゃあ僕にとってのサリーはこだま愛以外にいないのですが、それは彼女の歌い方がしっとりというだけではなく、その声の強弱と美しい表情で歌詞を自分のものにしていたからだと思います。30年たった今でも、その歌を聴くだけで僕はじわりと来て鼻の奥がつんとします。よろしければ、僕がその初演のミー・アンド・マイガールについて書いた記事を参照してください。)
僕の観た日はこの歌劇団から配信された映像のAパターンでした。
両手で数えられるほど元々登場人物の少ないミー・アンド・マイガールで、まさかその他全員端役にするわけにもいかないのでしょう。ただし、1995年までの公演では役替りはありませんでした。初演では涼風真世がずっとジャッキーでしたが、1年というあまりに長い公演期間のため、最後のほうでビルになって剣幸がジャッキーという変則的な役替りがありましたが、それだけです。
柚香光は僕が観たときにはジャッキーでしたが、Bパターンではパーチェスターを演じるということで、なんだか想像もできません。何しろ出てきただけで舞台がぱあっと明るくなるほど華やかで美しいジャッキーでしたから。金髪のカツラとピンク色のワンピースもよく似合い、腕の動きも優雅に「自分のことだけ考えて」を歌い始めたら…あらら。
今回雪組に続いて2度めの経験でした。柚香光の場合声そのものが歌として安定していないのです。僕はシロウトですから技術的なことはよくわからないのですが、それでも彼女自身があまり自信を持って歌っていないのが少々わかるくらいでした。涼風真世のジャッキーとくらべてはいけないのですが、僕はここの歌が好きなので残念です。
ジョン卿役の芹香斗亜は、初めて見る男役でした。なかなか味のあるいい演技をする中堅のひとかなと思ったら、フィナーレでヒゲをとった衣装で大階段に現れたときには、あまりの美しさに僕は椅子からずり落ちそうになってしまいました。オジサンじゃなかった…。若い二枚目ではありませんか。
いや、それを言ったら柚香光だって同じです。実は華やかなイケメンだったのですね…。これには本当にビックリしました。
3人目の男役は鳳月杏ですがあまりAパターンでは出番のないひとで、僕はこの3人で出てくる場面で初めて気づきました。Bではジャッキーを演るそうです。
僕があとで検索してビックリしたのは男役たちばかりではありません。マリア公爵夫人役の桜咲彩花が、本当は芹香斗亜より下の学年の若い娘役だったからです。
普段どんな役を与えられているのかは知りませんが、よく通る声を低くしゆっくりと話し、そして歩き方に威厳を持っていることで年齢を上げるという技を使ったものと思われます。少々ふくよかなのも貢献していたかもしれません。いずれにしろ、場を締める重要な役どころを見事に演じていたと思います。
それからもちろんパーチェスター役の鳳真由。
未沙のえるの役作りを踏襲した正統派パーチェスターですね。彼女が出てくるだけでかなり笑えました。僕が映像で観た中では、月組の星条海斗がずいぶんとハチャメチャなパーチェスターで観客たちも腹を抱えて笑っていましたが、鳳真由も含め歴代のパーチェスターは皆どちらかというとそれほど台本から逸脱していないように見えました。しかし鳳真由ももしかしたら二枚目男役ですか? だとしたら、今回のミー・アンド・マイガールは僕にとってビックリの連続と言うしかありません。初演の動画を見ればわかるとおり、実際オジサン(いや中堅男役の女性のこと)とオバサンが多い舞台なのです。
最後に、ロケットで「なんだなんだ、なんでこんな目立つ子がいるのだ」と思った子がいました。…笑顔が元気いっぱいでオデコさん、目鼻立ちがハッキリしています。そして、ダンスが溌剌としていてキレがいいのです。群を抜いて背が高いのも目立つ理由のひとつでした。ロケットをやるくらいだから、まだ若くて研1−3ぐらいではないかと思います。調べてみましたが亜蓮冬馬という男役かなあ…どうも自信がありません。どなたか知っている方がいたらお教えください。
いずれにしろ、僕にとっては懐かしく楽しい舞台でした。
イギリスではすでに階級社会のあり方が問われているせいか、少々古風なこのミュージカルがまた上演されたというニュースも聞きません。以前にも書きましたが、このミュージカルはロバート・リンゼイの出世作で、ブロードウェイでもヒットしました。残念ながら、21世紀になってからは宝塚(と富山のオーバードホール)以外では上演されていないようなのです。
さてロビーに出ると、甲にしきさんが黒いロングドレスのシックなジャケットスーツという出で立ちで、柱の陰にひっそりと立っていました。今は東宝の支配人ですが、40年前は花組の美しい男役トップとして舞台に立っていた方です。今でもお美しいですが、お年で小さくなってしまったのでしょう。とても華奢でした。
僕は思わずご挨拶を。なんだか大学生になったばかりのころに戻ったようで、緊張してどもってしまいました。ちょっとお話をして最後には思い切って握手してもらいましたが、目がうるんでしまい恥ずかしかったです。
僕は案外センチメンタルなジジイなのです。
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コメント
はじめまして。
宝塚50周年の舞台を知っているオールドファンです。
以前から、私も大好きだった安奈淳さんの記事を拝見し、更新を楽しみにさせて頂いておりました。
旧東宝劇場、懐かしいですね。
私もブランクがありましたが、最近チケットが取れれば通っています。
つい、昔のスターさんや舞台と比較してしまうのですが、それは大切な思い出として。
今の舞台も勿論楽しく、やっぱり宝塚は良いなと思わせてくれます。
そして、帰りにコウちゃんの笑顔に会えるのが何よりのご褒美になっています。
私も必ずコウちゃんに『今日もありがとう。舞台だけでなく、コウちゃんの笑顔に会えて今日の観劇が終了します』とお声をかけてしまいます。
現役時代と変わらない美しさ。
タカラジェンヌなればこそですね。
大劇場に行けない悔しさ?はありますが、東京にはコウちゃんがいるのよ!と自慢したいです。
長々取り留めのなく、申し訳ございません。つい、懐かしくコメントさせて頂きました。
これからも楽しみにさせて頂きます。
HINさん、こんにちは。
コメントをありがとうございます。
50周年の舞台もご存じとは! 僕よりほんの少し先輩ですね。
さすがに甲にしきさんを覚えてらっしゃる方はいないと思っていましたので、何だかものすごく嬉しいです。
僕も昔のスターと比較してしまうこともありますが、それでも今の宝塚もやはり昔のように夢があり楽しく観劇しています。
来年1月はたぶん実家の用事で東京に少し滞在できるので、そのときにはまた東宝劇場に足を運びたいと思っています。もちろん、東京にはコウちゃんがいるんだ!と胸をはって。
はじめまして。
ベルばら四天王時代に関西在住で10代を過ごした者です。
旧大劇場、特に3階が懐かしいです。
安奈さんのファンでしたので、とても懐かしく読ませていただいていました。安奈さんのノバ・ボサ・ノバが、当時最も衝撃の舞台で、今でも胸が熱くなります。
安奈さん退団後は熱がほとんど薄れ、鳳さんの舞台を2回、退団公演含め見たきり、完全に縁が切れてしまっていました。住まいも関東に移り、関西と違い、関心がないと本当に縁がなく過ごせるものだということも知りました。
(関西テレビも阪急電車とかないですし)
エリザベートもミーマイも知らずにおりましたが、ひょんなことから100周年ナポレオンを初めての東京宝塚で観劇でき、近年の宝塚の歌唱力は落ちている、と噂も聞いていたので全然期待していなかったのですが((>_<))、かつてとはまた違う魅力もいっぱいで、以後、こちらのブログ含め、長年のブランクを少し学習させていただいてました。
北翔さんのトップ姿も見たくなり(安奈さんファンには特に評判いい方みたいで)、「こうもり」を見に行き、先日は「ミーマイ」を遂にリアルで舞台観劇。A・B両方見てしまいした。初演、見たかったです。剣さんって、「ザ・タカラヅカ」番組でバンビーズにいた方ですよね?お名前が読めなかったので印象に残っていました。ニコニコ動画で一部見ましたが、ビル登場シーンは剣さんの自然さが光っていたようでした。貴族のなかに、その存在感がおかしい、みたいな。その後のあらゆるビル達の動画見ましたが、登場場面は作りすぎ・・・と思えてました。。
Aのジャッキーの柚香光さん、良かったです。お歌がちょっと残念なことは色々言われているようですが、それを言ったら、大昔のくららさんはどうなる・・・って、つい思ってしまうんですよ。。ネットのない時代で良かった。訓練しても、歌に向いてない人というのがいる、ということかな、と。
(私ごとですが、最近、歌を習っているのですが、確かに高音は出るようになります。)
柚香さんのパーチャスター、イケメンの変な3枚目で、いい味で面白かったです。1回しか歌わせてもらえない、という設定にも、ご本人の少し不安定な歌唱力ともぴったりでした^^。
私、オーストラリアにも何度か行っており、パースには短期留学もどきをしていたのですが、東京宝塚周辺の工事風景など、何だかちょっとパースに似ている、と思えたのは私だけでしょうか?
つらつら思わず長文書いてしまいました。私もfc2のブログを持っており、一度安奈さんのことを書いたことがあります。(画像検索で、「安奈淳 ノバボサノバ 1976」で出てくると思います。自分の絵で載せているので、うっかりファンの方にはお見せしづらい…もし気が向かれれば、チェックしてみて下さい。)
今はまたYouTubeでも分割で「安奈さんノバ」をアップしてくださった方がいらして、とても有難いです。
北翔さんも、退団後が楽しみです。
色々教えて下さって、ありがとうございます。
はじめまして、ばーばらさん。
コメントをありがとうございます。
僕も安奈淳の「ノバ・ボサ・ノバ」がやっぱり1番好きです。
でも、北翔海莉も見てみたかったなあ…と。
「ミー・アンド・マイガール」は僕は初演を見ていますが、やはり剣幸が1番自然な登場の仕方だったと思います。他のひとのビルは少々作りすぎていたり、軽すぎたりしているような。
だから、2−3年前でしたか、剣幸がオーバード・ホールで30年ぶりにビルを演じたと聞いた時には(後の祭りでしたが)見てみたかったと本当に残念でした。
FC2のブログも拝見しました。
プロローグのカラーの墨絵は美しくて、あの安奈淳の歌い始める姿を思い浮かべました。
ダンスシーンの白黒の墨絵の躍動感。スゴイなあ。
こんなふうにひとつの墨でダンサーたちの跳躍やしなやかな動きを表現できるなんて、とてもよいものを見せていただきました。
ブックマークしましたのでまた色々な絵を拝見しに行きます。
こんにちは。「笑顔が元気いっぱいでオデコさん、目鼻立ちがハッキリして・・・」というとやはり亜蓮冬馬くんでしょうか。パレードでは上手側大階段だったかな?
実は「New Generation IV」なる本がTCAから出版されています。各組の研3-6の若手ホープを特集した本で、「おとめ」や劇団のHPの写真よりもずっと沢山のカットが収録されています。もちろん亜蓮君も載っています。こちらをご覧頂ければ確信が持てるかもしれません。
amazon.jpでも取扱いがあるのでオーストラリアでも読めるのではないでしょうか。ご参考までに。
こんばんは、ペン吉さん。
お返事が遅くなって申しわけありません。
少々本業のほうが忙しくなってしまい、ブログは当分放ったらかし状態です。
さて、ロケットで目立っていた子ですが、やはり亜蓮冬馬ですか!
なるほど、「New Generation IV」などという本があったのですね。こういう特集本があれば、若手ホープたちのことももっとわかるようになるかもしれません。
ちょっとアマゾンで探して取り寄せてみることにします。
ありがとうございました!