2019年花組「CASANOVA」の豪華な舞台と…軽くて長い祝祭喜歌劇

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明日海りおの退団公演が東京宝塚劇場で18日に始まりました。
ファンの皆さんは「A Fairly Tale 青い薔薇の精」をナマで観ているでしょうが、僕は遠く離れたオーストラリア自宅TVで「CASANOVA」を映像観劇することにしました。

今年2月に宝塚大劇場で初公演となった「CASANOVA」については、初日映像を見て記事にしています。

 

花組「CASANOVA」の初日映像で見た美しい衣装と歌、そして仙名彩世
花組「CASANOVA」公演の初日映像を見ました。 短い映像ではストーリーが全くわかりませんが、とりあえずどんな生徒さんがどんな衣装で舞台に立っているのかを覗きに行きました。 最近の衣装は斬新ですね。月組の「1789-バスティーユの恋人たち...

 

作曲はドーヴ・アチア。宝塚では彼の『太陽王』『1789』『アーサー王伝説』などが舞台になっていますが、今回は彼の書きおろしということでずっと観たかった作品です。

キャスト感想は次に回しますが、今回の記事は少々辛口の部分もあります。あくまでも僕自身の個人的感想ということで。

 

多才な人、ドーヴ・アチア

ドーヴ・アチアはチュニジア系フランス人で、元々は大学で修士課程を終了し、進学校で数学、物理学、化学を教える教師でした。芸術的才能も優れていて、その後は本も出版し、またテレビのドラマなどの脚本も執筆していたようです。

2000年になって、彼がプロデュースしたミュージカル「十戒」が大ヒットとなり、その後次々と新しいロック・ミュージカルを発表してフランスのミュージカル界の寵児となったのです。

僕は彼がどんなひとかあまりよく知らなかったので、少し英語とフランス語のサイトで調べてみました。

それによると、宝塚でもヒットしたミュージカル『太陽王』『1789』『アーサー王伝説』はどれも「プロデューサー」つまり製作者としての扱いです。もちろん作曲と作詞にも名を連ねていますが、それはもうひとりの作詞者との共同、また作曲に至っては4−5人の作曲家の中のひとりとされています。彼がストーリーの作者であることには間違いがありませんが、これも共同作業のようで、彼ひとりの名前があげられているのは「製作者」としてのみでした。

ドーヴ・アチアが全ての分野で原案を出したのか、それとも何人かの作曲家そして作詞家が分担して作り上げたのかまではどこにも書かれていませんでした。

ただし、「音楽プロデューサー」としては辣腕であり、フランスや各国のミュージカル界ではかなり有名なひとだとわかりました。

今回の「CASANOVA」は全曲彼が担当したそうですから、少々趣きが違うようですね。彼独特の旋律がそこかしこに見られ、耳に残る美しい曲もありました。

 

稀代の女ったらしカサノヴァの華やかな物語は…

ストーリー自体は「祝祭喜歌劇」と記されているように、よく言えば「軽い仕立て」、悪く言えば「浅いストーリー展開」です。題材がとても華やかな時代のベネチアであるだけに、ちょっともったいなかったかなという印象です。
これなら一本物というよりもう少し短くしてレビューを改めて2本目としてつけたほうがよかったのではないかと思いました。

「大作」にするために法王やモーツァルトの挿話を加えなくても、自由と愛と恋をテーマに2つのカップル(カサノヴァとベアトリーチェ、コンデュルメルとその奥方ロザリー)に重点を置いたほうが、観客をもっと惹きつけられたのではないでしょうか。コンデュルメル夫妻の話などは、とてもおもしろい題材だと思いましたし、ベアトリーチェの革新的思想も、もう少し掘り下げたら現在のフェミニズムの台頭にからめて興味深い生き方になったかもしれません。

もしかしたら法王を登場させることで、「この御方をどなたとこころえる!」で会場を笑いに包みたかったのでしょうか。菊の御紋の印籠がないだけで、まるで水戸黄門です。最後にカサノヴァに言う「そなたが会ったのは諸国を遍歴するわたしの仮面」も水戸黄門のセリフにそっくりでしたが…あまり笑いがとれなかったところを見ると、若い観客には古すぎるジョークだったのかもしれませんね。

最後も何となく終わって尻すぼみ。いきなりロケットになったので、いったん暗転してから最後のショーに行くものとばかり思っていた僕は、肩透かしをくらってしまいました。

辣腕プロデューサーのドーヴ・アチアにせめてストーリーの原案をまかせられなかったのか、と今更ながら残念です。

いずれにしろ、今回の物語は、明日海りおと花組面々の美しさを楽しむためのものと解釈しました。

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衣装とヘアスタイルの斬新さに感動

僕は40年前の宝塚を覚えていますが、あのころの衣装と比べると現在のものは格段に豪華になったと思います。

もちろんファッションの変遷もありますが、例えばブーツひとつとっても、膝を覆って膝下を長く見せる工夫、そしてたぶんスパンデックスを使っているそのブーツの中に入れるパンツのすっきりした足のラインの美しさなど。

そして、もうひとつは衣装に使う素材の種類が格段に多くなったことですね。

素材については「1789」のときに気づいて、初めて有村淳の存在を知りました。名前を確認するまでには行きませんでしたが、そのときの衣装には本当にビックリしたのを覚えています。

 

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今回は、第一幕では明日海りおの美しさを引き立てる銀色と柔らかな素材を駆使して見事な衣装をつくりあげています。フィナーレに向かうときの全身真紅の衣装も情熱的で素晴らしいです。時代考証を無視されても、そんなことが全く気にならないのは言うまでもありません。

そして、何よりもカサノヴァの物語ということで、もちろん女性たちが大量に周りを囲います。娘役冥利につきるであろう美しい衣装ばかりが次々と現れて、楽しかったです。そして、その髪型とアクセサリーにも喝采を送りたいです。小物は全て自前だと教えてもらってから、特にアクセサリーにも気をつけて見るようになりました。

仙名彩世のドレスは夢見るような青を基調としたカラフルなものが多く、最後には情熱の真紅のドレスに着替えて明日海りおのカサノヴァとの愛を歌い上げます。

また、次の記事にも書く予定ですが、他の娘役とは全くちがったスタイルの、スッキリとした黒の衣装をまとった鳳月杏。スタイルの良さも相まって、彼女のボディラインと長い足を見せつけるようなスリットが印象的でした。

最近の舞台衣装はそのほとんどが有村淳の作品のようで、斬新なアイデアと多様性のある素材で目を楽しませてくれます。

 

次の記事は主要キャストの感想です。こちらは…なにしろ美しくてため息ばかりついていました。

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