2008年星組「スカーレット・ピンパーネル」の初演に感動する

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新しいトップを迎えた星組がこのミュージカルの再々演をお披露目とすると聞いたので、評判だった初演がどんなものか観たくなりました。

 

「紅はこべ」は勧善懲悪の楽しいドラマ

スカーレット・ピンパーネルと言えば、もちろん小説「紅はこべ」のミュージカル舞台ですが、英国では何度も映画化されており、比較的新しいところでは1982 年のドラマですが、ショーブラン役は「ロード・オブ・ザ・リング」のガンダルフ役や「Xmen」シリーズの悪役マグニートで有名なイアン・マッケランでした。

その後BBCのミニシリーズとしても1999年にドラマ化されています。こちらは僕の好きな俳優リチャード.E. グラントがパーシー・ブレイクニー、マルグリットにはまだ若かったエリザベス・マクガヴァン(ダウントン・アビーの奥方役ですね)が起用されていました。

何でこんなに詳しいかというと、どちらもDVDで持っているからです。こういう勧善懲悪の楽しいドラマは僕の趣味でもあります。

 

安蘭けいの華と実力の舞台に魅了される

さて、主役のパーシー・ブレイクニー、義賊の顔はスカーレット・ピンパーネルです。

僕は初めて男役としての安蘭けいを見て、感心してしまいました。一番最初に映像で見たのが「王家に捧ぐ歌」の王女アイーダで、どちらかというと女役のイメージがあったからです。かなり小柄なのに、舞台に登場するたびにぱっと光が差すような存在感、要するに華があります。軽いタッチの表の顔と、裏での正義感の強い義賊の顔を見事に使い分ける演技力。そして、ワイルドホーンが彼女のために書き下ろしたという、あの有名な「ひとかけらの勇気」の歌声に、その初演の成功が彼女の実力と華にあったのだろうと納得がいきました。

彼女の雰囲気自体が英国貴族そのもので、コメディーの中にもあくまで格式と品があり、皮肉と氷のように冷たい視線を送る態度に至っては、これぞ「紅はこべ」と言いたくなるような完璧なパーシー・ブレイクニーでした。

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柚希礼音の悪役、ショーブラン

柚希礼音は、これ以前に見たのがやはり「王家に捧ぐ歌」の脇役であまり目立たなかったのですが、数年後のこの変化に驚きました。僕はそのころの批評は知りませんが、このショーブラン役で彼女はきっと次のトップとしての地位を確固たるものとしたのではないでしょうか。

人を見下す酷薄な人間をよく表していて、歌はさほど上手いとは言えませんが、低い声と視線の迫力が只者ではありません。しかし、「悪役」というと黒髪なのはどうしてなのでしょうね。

 

遠野あすかの美声に心を揺さぶられる

遠野あすかと言えば、僕は今までブログでの楽しそうな笑顔しか見たことがありませんでした。その彼女とこの舞台のマルグリットとしての彼女が一致するまでにしばらく要したのは、その舞台化粧の濃い顔が全く違って見えたからです。宝塚の舞台化粧というのは独特なのですね。パーシーとの別れを決心したときの 「別れましょう」は、彼女のひたむきな愛とそれが報われないことへの悲しみを素晴らしい歌唱力で歌い上げ、会場を涙と感動へ導いているようでした。退団後の顔しか知らなかった僕は、彼女のこの切なく響く高音の美しさに聞き惚れてしまいました。

 

おや、美城れんが…

他にも書ききれないほど今では退団してしまった生徒さんたちが 出演していますが、中でも目を引いたのはそのころまだ星組生だった美城れんです。

名前が出るまで彼女だとわかりませんでした。髭もさることながら、あまりにも細いので。いや、年月で体型も変わってくるのは当たり前なのですが。

 

スカピンはストーリーと音楽の勝利だ

お芝居としては笑いあり涙ありドラマありアクションあり、イギリスとフランスを股にかけてフランスから王太子を救出するという、前代未聞の大仕事をやり遂げるパーシーの活躍に、彼と妻の マルグリットとの愛をからませ、しかも悪役ショーブランの存在も見逃せません。そこにワイルドホーンの心に残る名曲がちりばめられているのですから、面白くならないはずがないのです。こういう見事に完成したミュージカルが、オリジナルとして宝塚にももっとあるといいのですが、なかなか難しいのかもしれません。

安蘭けいはその後2016年の梅田劇場で、石丸幹二のパーシーの相手役マルグリットとして舞台に立ちました。つまり、彼女は主役パーシーとその相手役マルグリットをどちらも演じたことがあるという前代未聞の女優となったわけです。僕はこちらもぜひ観たかったのですが、残念ながらDVDは出ていないようですし、再演が来るのをひたすら願うしかないようです。

しかし、この2008年星組公演もすでにDVDは廃盤になっているようです。スカイステージでまた放送されるのを待つしかありません。音源はCDとして発売されていました。

ところが!中古ならアマゾンにも楽天にもありました。

 

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コメント

  1. ナミ より:

    はじめまして。落ち着きとユーモアが感じられるヅカメンさんのブログが好きで、こっそり愛読…大分経ちます。読む側でしたがスカピンネタが!と興奮、思わず。初演お二人の歌声は本当に素晴らしいですね!私は再演の霧矢さんのパーシーも好きなんです。芸達者な方で歌声も素晴らしいしグラパンもおかしみがあり。ショーブランは明日海さんと龍さんの役替わりです。機会がありましたら是非ご覧下さい。以前北翔さんと咲妃さんが「あなたこそ我が家」をデュエットしたことがあり、北翔さんのパーシーも見たかったな…と。風ちゃんのマルグリットも…。そう望む声もよく聞きました。新生星組の歌は初演や再演と比べるとなかなか厳しい面もありますが、演出やフィナーレも少し変わるようですし、紅さんの持ち味を生かせる場面もあり、星組子の活躍も楽しみでワクワクしております。長々と失礼いたしました!これからもお邪魔させて頂きますね。

  2. のぶ太 より:

    ヅカメンさん、こんにちは。
    私もこの作品は大好きで、星組と月組の録画をしょっちゅう観ています。霧矢さんのパーシーはすこし癖がありますが、これを観ていると、安蘭さんのパーシーが物足りなくなってきたり・・・どちらも良いんですけどね。
    遠野あすかさんの化粧化けには私も驚きました。言われても分からないくらいです。
    この作品はショーブランの歌の方が音程が難しいような気がします。礼音さんもよく頑張ったと思います。
    月組のものも是非観てくださいね。

  3. zukamen より:

    ナミさん、はじめまして。
    ご訪問をありがとうございます。
    再演の霧矢大夢バージョンはまだ観たことがないので、機会があれば是非観てみたいと思います。初演はすでにDVDが買えなくなっていますが、月組のはまだDVDがあるようですので。
    ショーブランが明日海りおと龍真咲の役替り…。なるほど、どんな悪役か見てみたいです。
    そう言えば、北翔海莉にスカーレット・ピンパーネルを、という話がファンの間で出ていましたね。なんだか、もっと彼女に演ってほしかったものが沢山あって、もう男役が見られないのかと思うと残念です。
    これからもよろしくお願いします。

  4. zukamen より:

    のぶ太さん、こんばんは。
    ほう、やはり霧矢大夢バージョンも違った役風で面白そうですね。
    こちらも見て比べてみたくなりました。ありがとうございます。

  5. トン より:

    ヅカメンさんの便り、いつも楽しみにしながら北翔さんのDVDを観ています。宝塚観劇が浅い私は、「なるほど・なるほど、そうね~」と頷きながら勉強させてもらってます。とても助かり、ありがとうございます!
    新しい星組さんのスカーレットピンパーネルがどうなるかホント楽しみですね。スカイステージで星組さんと月組さんを観て、それぞれの色がでていてどちらも良かったですョ・・・ひとつ、柚希さんショーヴランはマルグリットへの心残りがよく出ていたように思いました。
    だんだん歳を重ねると、勧善懲悪のお芝居はいいですね!・・・よく父が水戸黄門を観ていた気持ちが少しわかる気がします。

  6. nakof より:

    先日私も初演を観たところです。柚希礼音にも何をやってもパッとしない時代があったそうですが、この役で一皮むけたと感じるファンも多かったとか。トップの彼女しか知らないので、人に歴史ありだなと思いました。迫力がすごいですよね!
    安蘭けいはトップにあと一歩というところで湖月わたるが落下傘トップとなり、2番手に据え置きという経験をしているのを知りました。でも、その時代があるからこそ、このスカーレットピンハーネルがあるのかなとも思います。実年齢が若すぎると役に深みが出づらいなと感じるので。
    みっちゃんも「(専科の)あの時代がなければ」とよく言っていますよね。
    この作品で色々と受賞していて、さすがだなと思います。
    宝塚にはずっとこれくらいのレベルを維持してほしいと思うのは、無茶でしょうか。。笑
    今月、幕が開いて10日目くらいのスカーレットピンハーネルを観ることになっています。
    本が変わっているとのことなので、初演・再演をなぞることは難しいかもしれません。なるべくまっさらな気持ちで観劇してきます。
    ※投稿が届かなかったようなので2回目です。重複していたらすみません。

  7. zukamen より:

    トンさん、お返事が遅くなってすみません。
    スカーレット・ピンパーネルは安蘭けいの星組しか観ていないので、月組も観たくなりました…。
    そうそう、勧善懲悪の水戸黄門は僕の亡き父もよく観ていました。若い頃はあまり日本物は見なかったのに、最近そうしたものが好きになってきたのは年取ってきたからかもしれませんね。

  8. zukamen より:

    nakofさん、こんばんは。
    お返事が遅くなってすみません。
    ほう、あの柚希礼音にもそんな不遇の時代というものがあったのですね…。湖月わたるが星組への落下傘で安蘭けいが二番手になったのも知りませんでした。うーん、華々しくトップになる生徒さん立ちにも停滞期があるのはいつの時代も同じなのかもしれません。というより、歴史は繰り返す、ということでしょうか。
    こんな感じのストーリーがしっかりと立てられているミュージカルが観たいですね。
    でも、今の量産体制の宝塚では無理なのかもしれません。昔はミーマイなんか1年もやっていましたけれど。
    新生星組のスカーレット・ピンパーネル、また感想をお聞かせください。

  9. ピノ・グリ より:

    前作星組、月組共に、スカステで見ました。
    よく響く歌声の安蘭さん、深い響きの霧矢さん、
    このお二人は自分の中で不動の、歌の上手い男役さんでした。
    (北翔さんの歌を聴いて、その上に更に特別枠が出来ちゃったカンジでして…)
    敵役の柚希さんと、自分が見た龍さんは、あまり積極的に作品を見ないかたでしたが、
    スカピンに関しては、悪役上手い!と思いました。
    もっと見た目に「冒険活劇」かなと想像していたので、
    意外とおとなしい作品、などど思ってしまいました。
    一人一人の演技、歌が見どころなのかな、と。
    今回の星組公演、1回分だけチケットが手に入りました。
    期待してるよ、頑張って!とエラそうな?応援の想いを込めて見に行ってきます。
    楽しみです。

  10. たれぱんだ より:

    ヅカメン様、お久しぶりです。
    本日、新生星組のスカーレット・ピンパーネルの初日を観て参りました。幸運にもチケットが取れまして…。初日(それも新トップコンビお披露目公演)は初めて観たのですが、やはり独特の雰囲気がありますね。拍手も凄くて、まわりには涙ぐんでいる方も多かったです。
    私はこの作品は全くの初見だったのですが、とにかく歌の多いこと!出演者の皆さんはお稽古大変だっただろうなぁ、と。そして楽曲も素晴らしいですね。ただ、今までに聞き過ぎているせいか、北翔さんの声で脳内再生されてしまう曲もあるのですが…。
    紅さんはさすがのコメディエンヌ振りで、初日から笑いが起きていました。まだ少し緊張されているようにも感じましたね。
    そして、とにかく礼真琴さんは歌が上手い。低音が大変素敵でした。多分、パーシー役よりショーブラン役の方が歌唱力が必要なのではないかと思いました。あとやはり七海さんは素敵でした。
    この作品は、パーシー役者によってかなり印象が変わるように思いましたので、初演や再演、外部版も観てみたくなりました。
    北翔さんの卒業された宝塚ではありますが、久しぶりに見出すと楽しくて、完全にヅカファン復帰しつつあります。せっかく地元住みですしね。勿論、北翔さんも応援しますので、ちょっと大変ではありますが。

  11. zukamen より:

    ピノ・グリさん、こんばんは。お久しぶりです。
    コメントへのお返事が遅れて申し訳ないです。
    霧矢大夢バージョンは、龍真咲がショーブランだったのですね。なるほど。
    やはりDVDを買ってしまおうかなと思っています。
    この作品は歌がいいですね。
    ブロードウェイ・ミュージカルは歌に重きを置くものも多いので、これは心に残る歌が散りばめられていて僕は感動しました。
    今回の星組公演、気になりますね。
    もうご覧になりましたか?

  12. zukamen より:

    たれぱんださん、こんばんは。お久しぶりです。
    お返事が遅くなりました。
    初日が観られたのはラッキーでしたね。
    色々なブログで礼真琴の歌が褒められていて、さてどんなものなのか気になります。
    コメディーに強い紅ゆずるがどんなパーシーを演じているのかも。

  13. トン より:

    こんばんは、お久しぶりです。桜が満開になり、 みっちゃんのまたまた忙しい日々が始まりましたね!
    先月の星組貸し切り公演を観劇してきました。第一印象は群集の歌声が圧巻!と、礼君の歌声は奥ゆきがあり、たれぱんださんの感想と同じで素晴らしかったですよ!誘い込むような歌声・・
    ちょっと残念なのが、紅さんの笑いを誘う場面が多いのは楽しいですが、話の内容がボケそうで・・・また、この作品は歌の見せ場が多い演目です。トップお二人の進化を期待したいと思います。
    みっちゃんファンとしては、心の中でやはりみっちゃんで観たかったなーとわがままを言っております。

  14. zukamen より:

    トンさん、こんにちは。
    北翔海莉は今年は走り続ける予定のようですね!
    そうですか、スカピンはやはり礼真琴が目玉のようですね。
    紅ゆずると綺咲愛里のコンビは結構評判がよいようですが、僕は観ていないのでなんとも言えません…。
    あとで霧矢大夢バージョンを観てみますが、歌が多い演目は紅ゆずるにはちょっと荷が重いかなとも思っていました。
    うーん、北翔海莉だったら…と考えてしまうのは僕も同じです。僕がまだ「桜華に舞え」を観ていません。アレを観たら「宝塚の北翔海莉」は終わりなんだなという気持ちが先にたってしまいグズグズしているのです。