北翔海莉&石井竜也のコンサート@WOWWOW

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これはあくまでも僕が「映像としてのコンサート」を観ての感想であり、会場で雰囲気をともにした観客のかたたちはまた違った思いがあるかもしれませんので、ご了承ください。

「にゃん魚の水曜日」のにゃん魚さんも同じようにこの一連のコンサートについて様々な記事を書いていらっしゃいます。いつものことながら彼女の洞察力には感心するばかりで、拙文は比較になりません。

今年の3月27日に収録された北翔海莉と石井竜也のコラボコンサート、いやに長いタイトルですが「北翔海莉&石井竜也 The Vocalist Premium Concert Celebration Night」の模様をやっと観ました。Wowwowで放送されたものの録画です。

率直に言って、北翔海莉の第二部に僕はいたく失望しました。前評判が良かっただけに、退団後に宝塚歌劇団のバックアップもプロの演出もないコンサートはこういうふうになるのか、という失望です。

最初の黒を基調としたダンス場面は、これから始まるショーの幕開けとしてはスタイリッシュでわくわくさせるものでした。そして、北翔海莉の新しいことへの挑戦は知っていましたので、ドラムの前に座っていたときに「今度はサックスではなくドラムなのだな」と思いましたが、まさか裕次郎の歌で始まるとは思ってもみませんでした。僕の母の時代ですね。つまり50年代を体験していた80−90歳の方たちへのオマージュでしょうか。カッコイイけれど、あまりにも古い世界でジジイの僕でさえかろうじて覚えている曲です。

ドラムのみっちゃんは素敵でしたが、どうしてもそれは「僕が小学生のときに行かされたピアノの発表会」のような雰囲気でした。つまり、隣で楽しみながら軽やかにしなやかにドラムを叩くプロとは違い、背筋をまっすぐに覚えたてのドラムを習ったとおりにに叩いているというふうで、僕は正直「ピアノの発表会に来た親の気分」になってしまいました。

その後の昭和歌謡のメドレーもあまりにも茶化しすぎていて、僕には退屈でした。ほんの少しのオチャラケは、ぽとりとたらされた清涼剤のごとく楽しいものですが、大量のお笑いは、バロネス・オルツィ作の小説をもとにしたミュージカルの東京千秋楽のように、物語の主題が掻き回され会場の一体感が失われるのではないでしょうか。おっと、閑話休題。

衣装もせめてもっと柔らかい感じのスーツを着てほしかったです。もしくは宝塚風のきらびやかなもの。ダブルブレストのジャケットはダンスには向いていません。手を挙げると一緒に持ち上がって、胸のあたりがダブつくからです。ダンス場面ではジャケットボタンははずしていましたが、それでも、足元を見ればどうも黒いスポーツシューズのようなゴツい形でしたし、そこにパンツの裾が引っかかってお世辞にもスタイリッシュとは言えません。もう少し衣装を考えて北翔海莉のダンスを引き立たせることはできなかったのでしょうか。

それからカット割りが多すぎて目がチカチカしました。これは撮影のひとたちへの苦言です。MTVのミュージック動画ではなくコンサートのダンスなのですから、もう少しじっくり見せてほしいと思いました。

「How High The Moon」と「If We Hold On Together」はしみじみと歌い上げる曲で、ここで僕はやっと北翔海莉の美声に酔うことができました。やっぱり、彼女の歌はひとを引きつけるのですね。

もうひとつ、様々なところで書かれていましたが、バックダンサーたち。
僕の目が宝塚のバックダンサーたちを期待してしまうためか、どうも後ろの(特に女性の)動きがもたついているように感じました。宝塚の下級生たちのダンスよりヘタクソというのは。。。うーん、それとも僕の目がおかしいのでしょうか。神経の行き届いた動きが感じられないのです。群舞がバラバラで美しくない。経験を積んだプロのダンサーと言うより、上手なストリートダンサーの域を出ていないように見えました。

そのうち、ああそうだ、と気づきました。僕が昔テレビで慣れ親しんだ昭和の歌謡曲の舞台でも、このような「セミプロダンサー」たちが後ろでくねくねと踊っていました。そっくりです。僕が「セミプロ」などと言うのは、実はそうした一応オーディションらしきもので選ばれたひとたちの中に、ダンスを習っていた妹の元同級生がいたからです。

ディスコダンスのパートは楽しかったですが、誰の振り付けなのか、これも僕にはあまり洗練されているようには思えませんでした。こちらではそこらのクラブでもこの程度のダンスは素人が踊っています。

苦言が多くなりましたが、最後のコラボの2曲はとてもよかったです。盛り上がっていましたね。これはたぶんコンサート慣れしている石井竜也のトークとその観客(なら誰でも、たとえ北翔海莉ファンであろうとも)を惹きつけるセクシーでリラックスした魅力があったせいでしょう。恥ずかしがるみっちゃんがこれまた少女のようで初々しかったです。

全体としては、何か「寄せ集め」の印象を受けました。僕は宝塚OGのコンサートには行ったことがありませんが、オーストラリアではコンサートにもよく行きます。歌だけのこともあれば、ダンスの得意なスターはそれも披露します。ただし、演出と衣装と舞台装置のせいで舞台自体にメリハリがあり、観客を飽きさせません。今回の北翔海莉の第二部はそうしたプロの演出とは程遠いものでした。

僕は北翔海莉の舞台人としての実力に心酔しているファンのひとりですが、舞台(=コンサート)はその舞台人の実力だけで成り立つものではありません。宝塚の華やかで次から次へときらびやかな場面が続くレビューでもなく、かと言ってじっくり聴かせる歌とカメレオンのように変わる歌い方に魅了されるコンサートでもなく、また石井竜也のように歌とトークでみっちゃんファンだけではなく一般客をも大いに楽しませるわけでもなく、最初から最後までそれは北翔海莉自身がたぶん「宝塚時代はやりたくてもできなかったこと」を全部詰め込んだ「雑然としたおもちゃ箱」だったのだと思います。

彼女の「楽しんでますかー?」が、僕には「わたしがとても楽しんでいるんだから、あなたも楽しんでくださいよー」に聞こえました。彼女の笑顔が最高に美しかっただけに、そして、真ん中のじっくりと聴かせる歌が素晴らしかっただけに、僕にはそれがとても残念でした。どうして僕は楽しめないのだろう、映像だからという理由だけなのだろうか、と何度も自分に問いました。

いずれにせよ、その後の全国ツアーではこれとはまた違った彼女を見せてくれているだろうと期待しています。河口湖のコンサートもきっとこの最初のコラボコンサート以上のものを何か見せてくれたことでしょう。

ご覧になった方がいらっしゃれば、どうぞここでのコメントでもメールでもかまいませんので、ぜひお教えください。

 

 

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