月組「1789 − バスティーユの恋人たち」の鮮やかな舞台とその迫力

スポンサーリンク

そういえば最近の月組の舞台を見ていないと思い、さっそく日本から送られてきたDVDのひとつを開けました。去年上演された「1789 − バスティーユの恋人たち」です。前回観た月組「メリー・ウィドウ」では龍真咲ではなく当時専科の北翔海莉が中心となっていましたから、これは2015年の月組全員が揃った舞台です。

 

フランスのロックミュー−ジカルの秀作「1789」

 

フランス版のオリジナル映像を見ましたが、斬新な演出と舞台装置、衣装なども面白く、宝塚の少々違った一面が見られると思い、ネットに浮かぶその他のコメント類は見ずに先入観ナシで観劇しました。

まず驚いたのがやはり衣装。18世紀を念頭に入れずに自由に(金に糸目をつけず)作成したものと思われます。いやーこれだけお金をかけられるなら、星組のLOVE&DREAMの衣装にももう少し回してくれてもよかったのでは…と要らぬことを考えてしまいました。

とにかく衣装は素晴らしいの一言につきます。あまりにも絢爛豪華で宮中キャストだけではなく民衆が全然貧しく見えないところがミソですが、それでもしばし芝居を忘れて見入ってしまいました。(DVDだとその点進めたり戻ったりできるから便利ですね)

ストーリーは僕たちのよく知る「ベルサイユのばら」とは違い、群衆側から見たフランス革命です。それだけに役どころとセリフのある登場人物も多く、史実に沿ってお話が進められていきます。

スポンサーリンク

 

龍真咲のクセのある芝居がロナンにピッタリだった

 

トップスターの龍真咲の舞台を通しで見たのは初めてです。
歌い方や芝居に独特のクセがあるということは見知っていましたが、今回は初めてだからなのかあまり気になりませんでした。ロナンという役がそもそも思慮深いというより感情のままに一瞬一瞬を生きる青年であり、彼女の若々しい風情と声がピッタリ合っていると思いました。歌の音域も広く、高いキーも難なくこなしていて声量のある男役です。

ただし、ペイロールによる拷問の場面では、シリアスな芝居であるにもかかわらず少々不謹慎な笑いが漏れてしまいました。龍真咲の苦しみの声が「ああ…ん」となぜかいやに切なく響いてしまったからです。痛い、苦しいというにはあまりに甘い声でした。すみません。

 

セクシーな美弥るりかとサディスティックな星条海斗

 

それだけに今回は憎々しい2人の男役が強く印象に残っています。
1人目はアルトワ伯爵役の美弥るりか。
目鼻立ちの大きく舞台映えする姿で、抑えた色のシックな衣装もよく似合っており、表情の変化が妖しくもセクシーな悪役となりました。媚薬を使って女をものにするということですが、そんな媚薬なぞ使わなくても簡単に女たちが落ちそうな存在感と色気があります。

 

もうひとりはペイロール役の星条海斗。
堂々とした立ち姿と黒い衣装で、邪悪でサドっぽい男を見事に表現しています。野心を抱くアルトワ伯爵とは違い、人を殺すことを何とも思わず、傷めつけることを使命(または快感)と思う性格が舞台からうかがわれました。このひとの演技のせいで、よけいに龍真咲の「ああ…ん」がマゾっぽく感じられちゃったのかもしれませんね。ただし、ペイロールの登場は他の主要人物に比べると少なく残念でした。

スポンサーリンク

ボディーパーカッションの迫力

 

シーンの中では、群衆の音楽ナシの群舞「ボディーパーカッション」に驚きました。これは今まで宝塚では見たことのない異質の迫力。群衆の一致団結と意志とその底力を表していて、これから何が起こるかを予測させています。

宝塚では近年「劇団お抱えの振付師」以外にも外から様々な専門家を招聘しているらしく、その試みがこうした新鮮なアプローチにつながっているのかもしれません。

 

ボディーパーカッションは「全員一致の迫力」でしたが、他の群舞で気づいたのは、ひとりひとりが全く違った動きをしているものがあるということです。

宝塚の「群舞」は、黒燕尾などのように美しく整然と一体化した動きで代表されると思いますが、今回は群衆という生身の人間のひとりひとりの動きとしてかなり大胆な振付になっています。僕はまだ宙組の「王家に捧ぐ歌」を観ていませんが、湖月わたるがトップだったころの初演(DVDで観劇)でマヤ・プリセツカヤが振り付けをした部分で、やはり「雑然とした群舞の美しさ」をも表現していたのを覚えています。

 

宝塚風にアレンジされた「1789」とオリジナルの舞台

 

今回はオリジナルのフレンチミュージカルをかなり宝塚風にアレンジしたそうですが、それでも今までとは少し違った味付けの舞台でした。普段ならロナンとオランプ、そしてアントワネットとフェルゼンの愛に重きを置いたストーリーラインとなるところを、群衆から発生したフランス革命の登場人物の「数名」として描いています。だから、宝塚月組トップの龍真咲が演じるロナンが中心とはいえ、むしろ狂言回しのような時々登場する人物としての印象を受けました。

オリジナルはフランスで大ヒットを記録したそうで、斬新なイメージを残す舞台です。
今度は東宝・帝劇と大阪の梅田芸術劇場の舞台でも上演され、何人かの主要人物として宝塚OGも登場するということをネットで読みました。男性が入ると、また違った印象を受けることでしょう。どんな舞台になるか楽しみですね。

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村ランキングに参加中。クリックしていただけると嬉しいです。

コメント

  1. とっち。 より:

    L&D北翔海莉さんの素晴らしい余韻冷めやらぬ所で1789の感想ありがとうございます。心待ちにしていました。
    早く、ヅカメン便り様に感謝の気持ちをお伝えしたかったのですが、私のコメント読み返す度、私の乱文に凹み中々送信できませんでした。結果乱文にて失礼します。
    私は星組のL&Dの舞台は見れていないのでわかりませんが、北翔海莉さんの人気で衣装にお金かけずとも満員御礼になると思われていたのでは無かろうかと感じました。
    あくまでも私的感想です。ファンの多いスターがいる組は、中々いい演目や舞台にお金かけないような気がしてなりません。
    月組が人気が無いとは思わないですが、日本初上陸のミュージカルだったので気合い入ったんでしょうか(?)
    私は月組に特別好きな方はいないのですが、1789バスティーユは3度大劇場で見てもまだまだ見たいと思いました。
    龍さんの感想は全く同感で癖は全く気になりませんでしたが、ペイロールの拷問の所は同じく笑ってしまいました。
    若さ溢れるボディーパーカッションは私の身体中に響き渡り震えました。
    そしてヅカメン便り様の感想の群舞。
    特に「悲しみの報い」。
    龍さんは勿論ですが、愛希れいかさんと専科の美城れんさんのハモりに何度も涙が溢れました。背景の群舞も全員素晴らしく感動しました。私の1番大好きな場面でした。

  2. zukamen より:

    とっち。さん、
    1789の舞台での「悲しみの報い」は歌と群舞で感動的でした!
    僕の印象に残っているのは、悪役2人と群舞なのですよね。だから、なおさらナマの舞台で見てみたかったと思います。絶対迫力が違いますから。