宙組の「TOP HAT」で初めて朝夏まなとの舞台を観る

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ご存じの方もいるかと思いますが、僕は前回の予期せぬ出張の際にも沢山のDVDを買って帰りました。

そのひとつが2015年宙組の「TOP HAT」です。大昔、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのコンビで大ヒットした白黒映画の傑作です。僕も何度も観たことがありますが、戦前の楽しくて何も厭うもののない善人ばかりの上流社会ミュージカルコメディーで、一度は観たことのあるひとも多いと思います。燕尾服とロングドレスの世界は、まさに宝塚にうってつけの作品とも言えましょう。

舞台は夢のように、そして軽いコメディータッチを添えて進んで行きますが、朝夏まなとの若々しく軽やかな雰囲気にとても合っていたように思います。相手役の実咲凜音も相性がよく、とても楽しい舞台となっています。

幕が開くとすぐにあの有名な「Putting on the Ritz」です。
僕は往年のミュージカルも大好きで、曲を聴いただけで「ああ、アレアレ!」とすぐにシーンが目に浮かぶほどです。この曲はフレッド・アステアの「ブルー・スカイ」という1929年の映画で大ヒットとなりました。タップの天才と言われたフレッド・アステアの華麗なる足さばきで有名です。

映画のTOP HATと違い、ミュージカルの舞台ではこの「Putting on the Ritz」で舞台の幕が開きます。これはロンドンのウェストエンドの舞台でも同じでした。最初から笑顔の群舞で、幕開けから豪華で楽しい雰囲気にドキドキします。

朝夏まなとの舞台を観たのは、実はこれが初めてです。

Brilliant Dreams NEXTで仲間たちと様々なダンスを再現するのを見て、ダンスの上手さに感銘を受けてこのブログを始めたころにひとつ記事を書きました。まだ宙組トップということも何も知らなかったころです。笑顔が美しくて、娘役としてもイケそうな雰囲気だなあと思ったらすでに「風と共に去りぬ」でスカーレットを演じていたと知りました。

今回のこの2015年のTOP HATではタップにも力が入り、トップになってからは歌も上手くなったということでしたが、冒頭のPutting on the Ritzでは低音が少々聞きづらく、音程が不安定になるという印象を受けました。これからの課題かもしれませんね。

また、タップダンスというのは床に打ちつける靴底の強弱を自由自在に繰るのが特徴です。その強弱がタップのステップに振り回されて、時々弱くなるべきではないところで弱くなっていました。つまり一定の力強さに欠けるような気がするのです。日本舞踊からタップダンスまでこなす宝塚の生徒さんたちに、全て完璧にというのは酷なのかもしれませんが、ロンドンで観た舞台やフレッド・アステアのタップを見ると、少々物足りなさを感じてしまいます。

ただし、全体的に見ると、華やかさと軽やかさに関して言えば宝塚も負けてはいません。
このCheek to Cheekのダンス場面など、うっとりするほど美しいではありませんか。

1935年の映画「TOP HAT」は戦前の白黒映画の大ヒットで、戦後日本で公開されたときにはその現実とも思えぬ夢の世界に皆酔いしれたと言います。僕もこのCheek to Cheekが大好きで、ビデオからDVDへと変遷を重ねながら時々今も観ます。そして、今でもダンスのステップまでハッキリと目に浮かびます。それほど好きな場面なのです。

すでに80年前の映画。かかわったひとたちはフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースを含め皆すでにこの世のひとではありません。それでも、まだ観るひとがいきいきとしたそのダンスに感銘を受けるとは、何とすばらしいことでしょう。

朝夏まなとと実咲凜音のダンスを見ながら、美しいものは時代を超えても美しく見えるものなのだな、と僕は感慨を新たにしました。

朝夏まなとはまだ若く、荒削りなところもありますが、堂々とした立ち姿とそのアイドル性で観客を魅了していくと思います。これからも目が離せませんね。

 

 

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