北翔海莉トップ就任記念のアルバムCDを聴きました。
「Applause HOKUSHO Kairi ~MUSIC PALETTE~」という、スカイステージの番組「Music Palette」から彼女自ら選んだ音源だということです。
僕は宝塚舞台での北翔海莉しか知りません。それも、ほとんどがネットでの動画やDVDで観たものばかりです。ですから、このCDから流れてくる歌声を聴いたとき、彼女の多彩な才能をまた確かめる機会を与えられたように感じました。
何しろ、宝塚の楽曲で男役の声を聴かせたかと思えば、エルビス・プレスリーの甘い歌声になり、ジャズのビブラートを効かせたセクシーな声に切り替わり、最後にはサウンド・オブ・ミュージックの「全ての山に登れ」を熱唱します。これだけ「七色の声」を自在に繰るのは…現在の宝塚では北翔海莉ただひとりのように思います。
このアルバムの中で好きな曲と言えば、僕がジャズ好きだということにも関係してくるのかもしれませんが、「As time goes by」です。往年の名画、ハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマン主演の「カサブランカ」でのバーでピアニストの弾き語りで歌われた曲です。日本では「時の過ぎゆくままに」と訳されています。
北翔海莉は、たぶん沢山のジャズアルバムを聴いてひたすら研究し、練習したのではないでしょうか。こういうスタンダード・ジャズの歌い方は、宝塚風の男役の歌とは全く違う発声法だからです。大きくビブラートを効かせた、ジャズ歌手と言ってもおかしくない彼女の声に、身体がリズムに乗って軽く動き出してしまいそうです。
モダーンジャズのスタンダート「Take Five」も素敵でした。
この難しい曲をこれだけスムースに歌いこなせるとは。北翔海莉の軽快なジャズをもう少し聴いてみたくなりました。
宝塚の歌い方は外の世界からみると独特な発声だと思います。
それを「消す」のではなく、そのうえに全く違った発声を試し練習を続ける努力の人、北翔海莉には天才という言葉はふさわしくありません。また、彼女もそう呼ばれることを良しとしないのではないでしょうか。
持って生まれた美声を精進によって最高の境地にまで高めるのは、オペラ歌手たちの厳しい日々の努力と練習にも似たものがあります。
ただ、最後の素晴らしい「Climb Every Mountain」のあとの北翔海莉のもらした言葉に、僕はやはりつらいことも沢山あったのだなとしみじみとしてしまいました。
『試練のときも深い絶望のときも、どんなときでもわたしを気にかけてくださり、そして信じて離れずに応援してくださった皆さんのおかげで、わたしはこうしてステージに立っているんだと感謝しています。』
北翔海莉は、その類まれなる実力にもかかわらず、長い年月をかけてやっと宝塚トップになった男役です。その長い年月を彼女とともに生き応援し続けたファンの方たちも、この言葉にきっと涙したことと思います。
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