宝塚OG公演「CHICAGO」観劇@KAAT(神奈川芸術劇場)

退団後のジェンヌたち
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僕はいいトシをして何をやっているんだろう、と考えながら普段乗ったこともない東海道本線横浜行の電車に揺られていました。荷物だけはオフィスに預けてきましたから手ぶらですが、夏の東京で外に出るとさすがにスーツは辛いです。地獄です。

KAAT(神奈川芸術劇場)は初めてですが、新しい建物らしく吹き抜けの大きさにビックリしました。しかし、なぜ劇場自体は5階なのかなあ。客席シートは快適な硬さです。周囲をぐるりと見渡すと1階はさすがに埋まっていますが、2階3階の側面席と後方席には空席もかなりありました。こんなものなのかなあ…「熱心なファンが複数回観劇する宝塚」以外のミュージカルは。

僕はCHICAGOは、5-6年前に2度観たことがあります。最初は有名なドイツ人のミュージカルスター、ウテ・ランパーをヴェルマに迎えたロンドンの舞台、もうひとつはオーストラリアの歌手がヴェルマの地元舞台でした。映画のCHICAGOもスタイリッシュでしたが、僕は舞台の迫力のほうがはるかに好きです。

舞台自体は簡素です。黒を基調とした舞台後方階段上にバンドが控えていて、その中央の階段も演出上使われます。そして、最初に舞台に登場するオール・ザット・ジャズ。たぶん僕はポカンと口を開けていたことでしょう。鼻の下もかなり伸びていたかもしれません。それは「宝塚」というにはあまりに妖しくセクシーで、生身の人間の身体を感じさせる登場でした。

CHICAGOの舞台はもちろん男女混合ですが、宝塚OGのものは全て女性です。面白かったのは、悪徳弁護士ビリー・フリンを演じる姿月あさとと善良な寝取られ男のエイモスの磯野千尋以外は、宝塚のような肩パッドと身体の線を隠す服を一切かなぐり捨てた衣装だったことです。つまり、オール・ザット・ジャズに登場する「男役」たちは全て柔らかなセーターやTシャツ、または他のCHICAGO舞台では男性たちも着ていた二の腕丸出しの袖なし革ジャンです。下半身はジーンズやカーゴパンツに包まれ、それがまた妙にエロティックなのです。「女役」たちは大胆に肌を露出した衣装で、開脚も自由自在です。
また、あのかなり濃い宝塚化粧もこの舞台では姿を消しています。皆普段の化粧より少し濃いぐらいでしょうか。ですから、宝塚のように化粧をすると別人の顔になるということもありません。

その妖しくも美しいダンサーたちの真ん中に、僕があれほど見たかった湖月わたるがいました。

僕が今まで観ていたのはほとんどが彼女が男役だったときの映像ですが、前から7列目の僕の目の前にいた女性はヴェルマそのものでした。大胆でいながら指先まで神経の行き届いたエロスの化身。湖月わたるは僕が観たヴェルマの中では1番痩せていますが、そのスレンダーな身体を感じさせないほどの柔らかく艶やかで流れるような動きが印象的でした。美しい脚はあくまで長くすらりとしていて、長年それを男装で包んでいたとは思えないほどです。

また、湖月わたるの歌を僕はあまり評価していなかったのですが、そのオール・ザット・ジャズの歌は華やかにあくまでエロティックに会場を包み、いや僕は完全に参ってしまいました。

ロキシー・ハート役は朝海ひかるでした。華奢で女性らしい曲線、そして愛らしい顔立ちの彼女が男役トップだったとはいまだに信じられない思いですが、ここでは不倫と殺人の罪で監獄に送られる悪女を演じています。「チクショウ」だの「オシッコ!」だのビックリするような言葉も飛び出して、浅はかな彼女がどうやって死刑を免れようとするのかを、セクシーに演じています。彼女もダンスが素晴らしく、男に媚を売りながら生きているコケティッシュな面を全身で表現していましたが、もう少しそのいやらしさも垣間見たかったような気がしました。

それは、ママ・モートン役の杜けあきにも言えます。黒のパンツスーツに身を包んでいましたが、それよりはうんと胸の開いたドレスでもっと蓮っ葉な雰囲気を出してほしかった。粋も甘いも噛み分けた、賄賂の額次第で便宜を図ってやる女看守の度胸と押しの強さが感じられないのです。これまた上品すぎると言ってもいいかもしれません。ただし、歌はさすがに出てくるだけで会場をしんとさせる迫力があります。

長くなりそうなので、次の記事に続きます。(というよりこれ以上書き続けると、明日の仕事に差し障りが)

 

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