続・2016年「THE ENTERTAINER」鏡を使った黒燕尾群舞の素晴らしさ

スポンサーリンク

宝塚に黒燕尾あり。
レビューにこの黒燕尾群舞が出てくると、もうそれだけで身が引き締まる思いをします。
僕は羽山紀代美振付の大階段を使った整然とした群舞も大好きですが、今回は趣向が違い往年のハリウッドミュージカル映画を意識した作りになっていました。鏡の使い方が上手く、百人の群舞が2百人いるかのような豪華な目の錯覚を起こさせます。また、その後の全員のロケットは圧巻です。102期の初舞台生から北翔海莉までの一糸乱れぬロケットには誰しも目が釘付けになったことでしょう。僕はこの舞台をナマで観られなかったことが悔やまれてなりません。

この群舞を見たとき、「ザッツ・エンタテインメント」という1974年製作の映画を思い出しました。それより以前のMGMミュージカル映画黄金期のオムニバスです。フレッド・アステアとジーン・ケリーが進行役で、懐かしい映画の場面を次々と紹介していくのですが、その中にはこんな豪華な「巨星ジークフェルト」の1シーンもあります。

ジーグフェルドというのは1900年代初頭に巴里のフォーリーベルジュールを意識して作られたミュージカルショーですが、宝塚のレビューによく似た雰囲気が感じられます。この曲は大地真央の退団公演「ザ・レビューII」でも使われていましたね。

よく見ると、宝塚の過去現在の演出家・振付家たちがヒントを得たであろう場面がかなりあります。

僕は「ザッツ・エンタテインメント」1巻から3巻まで持っていますが、古き良き時代、僕のようなジジイでさえまだ生まれていないころの金に糸目をつけずに製作された豪華なセットと衣装、そして歌とダンスの実力にめくるめく思いをします。

 

 

あまりに懐かしくて、どうも本題から外れてしまいました。失礼。
さて、群舞が終わると舞台の真ん中で北翔海莉の弾き語りが始まりました。舞台の上で生徒さんが弾くピアノを見たのはこれが初めてではありません。初風諄や麻路さきが舞台で弾くのも見たことがありますが、それは芝居の中の1シーンとしてのピアノでした。

「時は過ぎ行く…今は永遠じゃない…」と歌う北翔海莉の姿には、やはり彼女の退団を重ねて見るひとたちも多いでしょう。僕もそうです。一抹の寂しさがそこにはあります。

レビューの始まりと同じ青い世界が終わると、そこにはイケメンたちのグループが銀色に輝いていました。ただし、歌は…ノーコメントにしておきます。礼真琴が出るまでは、どうしようと思っていましたから。彼女が歌い始めると、初めてゆったりと心地よい響きを感じることができました。歌もダンスもイケメングループを後ろに従えて、金色の衣装とともに光っていました。

そして、黒燕尾と同じくらい印象に残ったのがこの「Take Five」です。
北翔海莉の歌の上手さにはもちろん舌を巻きますが、そのあとの男役たちの群舞も腕まくりをしたスーツ姿でカッコよかったです。

ここには十輝いりすとの短い男役同士のデュエットも加えられています。退団する十輝いりすへの餞別でしょう。

そう言えば、2年前蘭寿とむと一緒に退団した月央和沙にも同じようなデュエットシーンが与えられていましたね。NHKの特集「トップ伝説」を最近見ましたが、そのダンスの稽古場の様子も映っていました。月央和沙が感激して涙を「タオルで」拭っていたのが印象的でした。

妃海風とのデュエットも短いながらしみじみとした歌声とダンスでした。僕はこのふたりのデュエットが大好きなのです。相手を思いやり、その短い時間を楽しみ、優しい目で見つめ合い触れ合う…といった姿からは、相性がいいだけではなく信頼感がうかがえて、観るものに何とも清々しい余韻を与えるのです。

「THE ENTERTAINER」は、古いMGMミュージカルの世界を新しいジャズ、ポップス、フラメンコなどと融合させ、美しい色合いの舞台総合芸術とともに完成させた上質のレビューです。北翔海莉のために書かれたレビューであり、彼女のワンマンショーとも言うべき舞台ですが、そのワンマンショーにもそれぞれの生徒たちの盛り上げようとする一生懸命な姿が投影され、あの鏡で増幅された黒燕尾の群舞のように僕たちの胸に響いてくるものがあります。

MGMのミュージカル映画は衰退の一途をたどり今では見る影もありませんが、宝塚は違います。こうして新しいものを取り入れ、実力のある生徒さんたちを量産しながら百年以上も豪華な舞台を提供し続けているのは、偶然ではありません。そうした宝塚の素晴らしさを改めて感じさせてくれたレビューでした。

 

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村ランキングに参加中。クリックしていただけると嬉しいです。

コメント

  1. ムコ より:

    youtube動画みました!すごい!!まさしくこれでした!
    この映画は、カメラワークの方が動いて行っているのでしょうが
    エンタテイナーの方では、宝塚のすごい舞台装置の盆が回ってぐるぐる上がって行ってました。
    本当に圧巻で、、みっさまがこの大勢の圧巻のラインダンスのセンターに立っていることが嬉しくて嬉しくて涙が出ました。
    まだ退団発表はされていなかったのですが、このショーを見て、ああ、近いなと思ったのも事実です。
    でもこんなにいいショーを作ってもらえたからみっちゃんも今まで頑張ったかいがあったかなと、、思いました。
    みっちゃんもアステアは目標にしていると常に言いますが、若い作家の野口さんも相当色々見て勉強されてるんですね。この二本立ては皆さん、ショーは傑作だったと大絶賛でしたよ。
    わたしもほとんど宝塚の舞台を見たことがない友人に観劇を勧めました。スカイステージでみっちゃん、老けてる、、と思っていた(らしい)友人も、この舞台を見て、思わずみっちゃんのブロマイド買いそうになったと言っていました。

  2. みゆママ より:

    「The Entertainer」1階と2階で観ました。100人ロケットは2階からだと、フォーメーションがクルクル変わるのが分かるし、舞台を埋め尽くした黒燕尾+鏡で大迫力でした。そして、ピアノを弾き終わった後、セリで下がって行くみちこさんの表情。最後まで、目を閉じて微笑んでいて、その笑顔に胸がキュっとしました。
    10月BSプレミアムで放送があるので、上からのアングルがあれば嬉しいなと思っています。

  3. ピノ・グリ より:

    1974年のこの映画の出現で初めて、
    エンタテインメントとかエンタテイナーという耳慣れない単語を、
    中途半端な年齢だった私は知りました。
    普段テレビでしか見ることのない芸能の世界の、本当の本物を表わす言葉…
    そう簡単には名乗っちゃいけない言葉、そう受け取りました。
    観る方にもドレスコードとか洗練されたマナーとか、ハードルが生じる気もしていましたが。
    北翔さん中心の舞台には、夜服来て行かなくても、本物を魅せてくれる素晴らしさを感じます。
    他の演者さんの可能性も引き出している。
    で、風ちゃんとのデュエットは、綺麗な反り姿が好きです。
    他のペアさんよりもキレイな気がします。
    異国のヅカメンさんに申し訳ないなと思いつつ、
    素晴らしいエンタテインメントを観せてもらいました。

  4. zukamen より:

    ムコさん、こんばんは。
    MGMの昔のミュージカル映画は楽しいですよ!まさしく夢の世界です。
    白黒の古めかしいところがまたいいんですけどね。
    この「THE ENTERTAINER」は確かに傑作です。演出の方はまだお若いのですね。
    斬新なアイデアを詰め込んで素晴らしい舞台を作ってくれました。

  5. zukamen より:

    みゆママさん、こんばんは。
    なるほど、こういう群舞は2階からのほうが全景が観られて圧巻でしょうね。
    僕はかなり大きな画面でしかもブルーレイでしたが、それでも会場のナマ舞台にはかないません。
    それにしても観たかったなあ。。。

  6. zukamen より:

    ピノ・グリさん、こんばんは。
    おお、では「ザッツ・エンタテインメント」をご覧になったのですね!
    僕もものすごく若かったので、これを最初に観たときにはアメリカの豪華な舞台に頭がクラクラする思いをしました。
    しかも戦前ですよ…財力が違います。
    妃海風の反り姿、首が長いのでうなじが美しいですよね。

  7. さえぽん より:

    こんにちは!
    zukamenさん ほんとにいろいろ見てらっしゃるのですね!
    「A Pretty Girl is Like a Merody」ドキドキしました。
    階段を上がるごとに 幕が開くごとに 美しい場面が展開され最後は頂上にたたずむ美女。
    カメラを引けば さらに下の方にも舞台が広がっていて その装置の巨大さに圧倒されました。
    こんなに美しい映像が戦前に作られたのは驚きました。
    今の時代では 絶対に無理ですね。
    102人黒燕尾の場面 東京公演では初舞台生が抜けていたのでもう少しすっきりしていましたが その分 凄いスピードでフォーメーションがどんどん変わって見ごたえがありました。
    「普通初舞台生はラインダンスしか出ないのですが 今回は初舞台生も燕尾を着せてもらって みんなでできたので良かったと思います。」
    とおっしゃってました。
    さすがみちこさんですね。
    Kairi Hokyou メモリアルBookを購入しました。
    撮りおろしのポートもありますが ほとんどが過去のグラフと歌劇に掲載されたものの切り抜きです。
    でも私は見てなかったので とっても楽しくて 喜んでおります。
    「絵と文」のコーナーは 「運転免許を取りに行った件」「韓流ドラマにはまった件」などを書いていて文章も上手で面白く にやにやしてしまいました。
    昨年 風ちゃんとコンビを組んだ頃のエピソードはウルウルするほどかわいらしかったです。
    zukamen様 最近ファンになられた方 お勧めですよ~
    奇跡の4枚組CDは 過去に収録されている曲がかなりダブっているので もし迷うならメモリアルBOOKをぜひ!

  8. ブレンハイム より:

    ヅカメンさん こんにちは。
    私も、黒燕尾でのシーンと男役群舞、
    青いお衣裳でのブルーバードの場面も素敵だと
    エンターテナーは本当に今まで見たレビューの中で
    一番!!だと思います。
    桜華に舞えのレビューもいいのですが!
    特に青い扉の場面が好きです!

  9. SP より:

    こんにちは。
    迫力があり奥行きのあるシーンは2階はオススメです。
    1789のマリーアントワネット登場シーンなどでもそう思いました。
    ラブドリ(ディズニー&宝塚スタンダード、風ちゃんのためでもある感じ)
    エンテナ(みっちゃんグランドショー)
    ワンボイス(洋楽メイン)
    ロマンス(新作の宝塚王道レビュー)
    この流れを見ると、退団に向けて培った力や思いを全部ぶつけてきた(良い意味で)っと勝手に解釈しています。
    二人のダンスですが、その時ばかりは風ちゃんの表情を追ってしまいます。
    恍惚というか、あの表情が演技なら恐ろしい。
    それ位こちらもなんだか勝手に嬉しくなる表情です。

  10. シャルドネ より:

    Zukamen様は、たぶん私より少し年長だと拝察しますが、時々劇場で、その様な年配の方をお見かけします。
    男性のお客さまは、実のところ、若く美しい女性の魅力だけではない「芸」の実力を女性の観客よりも厳しく求めておられる
    のでは、と思っています。
    Zukamen 様もそんな一人で、だからこ
    そ、みっちゃんを高く評価され、ファンであられるのでしょう。
    私もみっちゃんの実力はトップスターのなかでも抜きん出ていると感じております。
    ただ、ファンというのはワガママなもので、「新鮮さ」というのにとても弱いもの
    です。
    ですから、実力を充分見せつけて、さらっ
    と去っていくみっちゃんがとても輝いて見えますが、
    今はやはり礼真琴の若々しい歌声になんといっても惹き付けられてしまいます。
    Zukamen さんはいかがですか?

  11. zukamen より:

    さえぽんさん、こんにちは。
    ああ、初舞台生の男役たちは初めて燕尾服を着せてもらったんですね…。嬉しかったでしょうね。
    実は僕もメモリアルブックを購入しました。グラフと歌劇は読んでいないのでやっぱりいい買い物でしたね!
    4枚組CDは確認したら、僕の持っているものとかなりダブっていました。どうしようかな。

  12. zukamen より:

    ブレンハイムさん、こんにちは。
    黒燕尾の場面は、まさかと思うぐらい素晴らしい出来でした。
    宝塚の歴史に残りそうですね。
    「ロマンス!」はDVD発売まで待たなければならないので、ウズウズしています。

  13. zukamen より:

    SPさん、こんにちは。
    北翔海莉がトップに就任してから話題作が続いていますね。
    今度は1度2階席から見てみたいものです。
    退団公演の「ロマンス!」には北翔海莉と妃海風のデュエットダンスがないそうで、少々残念です。

  14. zukamen より:

    シャルドネさん、こんばんは。
    僕は星組公演についての感想をアップするときには、やはり礼真琴が気になり、一言二言彼女についても書いています。
    歌もダンスも実力があり、アデレイドのような可愛い女の子から男っぽい役までこなせますので、これから二番手として活躍してほしい若手だと思います。

  15. ゆく道 より:

    こんにちは、先週BSでNHKバージョンによる『こうもり』の放送がありました。その日のために何日も前から3台のHDDに録画予約し、アクシデントに備え実家のHDDにも録画する熱の入れよう?
    頼むから事件事故などでテロップが出ませんようにと祈る気持ちも込めて宙組エリザベートライブビューイングに出かけました。泣いた。退団者のところで次はみっちゃんだと思うだけでじわじわと泣けて…今からまいったな。
    急いで帰宅し、NHKバージョン観ました。大好きなエンタテの黒燕尾の『ショーほど素敵な商売はない』は映画も見たことがないのに物心つく前から大好きで聴いていた曲。みっちゃんはぶれない声、トルソー、フリ全てにおいて真ん中がふさわしい人。誰よりも高く上がる脚にはいつも脱帽です。(もしかして二重関節?以前のトークでカチッって入るみたいなこと言ってたような?)
    見たいと思っていた2階からのフォーメイションの場面にはこれ!これ!これを見たのよ。と、興奮冷めやらず。(TCAより立体的に思えました)
    シャカリキなダンスもありだけど組子みんなのうれしそうな顔にも注目です。
    ZUKAMEN様にもぜひ堪能していただきたいなぁ。
    流石NHK様。全編においていろんなカット割りやアングルなどノウハウがあるなぁなどと感心(みっちゃんのピアノを弾く手元のアップとか顔や顎から汗がにじみ出ていたのには感動して言葉がなかったなぁ。必見です。)
    とにかく嬉しくてハクハクして観ました。
    それからカメラの違いかなぁ。ブルーレイより画面が鮮明に思えたのは私だけかなぁ?
    NHKなので高画質にかわりはなく、TCAとHNKと2つもありとっても嬉しい。それに来年は東宝の千秋楽の放送もあるに違いないので3種類になりますね。
    このみっちゃんの『こうもり』『エンタテ』がNHKのライブラリーに並ぶのだと思うだけで誇らしい気持ちになります。ねぇ皆さん。
    それからジョンソン106歳 好みは年上の女性。 観客席に高齢のご婦人たちがいたからこのアドリブにしたのかな?
    相変わらずまとまりのない稚拙な文章で判読願います。

  16. zukamen より:

    ゆく道さん、こんばんは。
    おや、僕は知らなかったのですが、このNHK交響楽団バージョンはDVD/BDのものと違うみたいですね。
    比べてみるとおもしろいでしょうね。
    NHKの撮影はやはりアングルも違うでしょうし、とても興味があります。ふむふむ。
    しかし、3台のHddに録画予約というのも、ものすごい念の入れようですね(笑)。ゆく道さんの周到な用意でいい録画がとれたようでよかったです。