星組「ロミオとジュリエット」キャスト感想:柚希礼音と夢咲ねねのゴールデンコンビ

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前回に引き続き、2013年星組「ロミオとジュリエット」の感想です。

2013年星組「ロミオとジュリエット」で柚希礼音の全盛期を観る
柚希礼音を見たのは、彼女の退団公演「黒豹の如く」が初めてでした。その後は皆さんご存じのとおり、北翔海莉がトップとして短い間君臨しましたが、僕はその前の柚希礼音時代も大変気になっていました。 今回やっと2013年の「ロミオとジュリエット」を観...

録画で観ていると気づきませんでしたが、この公演には役替りがあったのですね。僕が観たのは紅ゆずるのティボルトと礼真琴のベンヴォーリオでした。

 

柚希礼音のロミオは純粋だが大人のロミオだった

「ロミオとジュリエット」は、やっと中学生と高校生の境にあるぐらいの14歳と15歳の幼い恋愛です。燃え上がるのも早く、後先を考えずに行動し、思慮に欠けているのも特徴です。それだけに、純粋で可憐で悲しく、ひとびとの涙を誘うシェークスピアの名作なのです。

柚希礼音のロミオは女性であるという線の細さも功を奏し、若々しい雰囲気を醸し出していていました。必死の恋とキャプレットとモンタギュー両家の争いへの葛藤を、これだけ美しく表現できるのは当時柚希礼音以外にいなかったと思います。芝居心もそうですが、切々と訴える低音の魅力も余すことなく披露しています。

しかし、なんという野太い声でしょう(いや、褒めています)。
僕は、以前ネットで鳳蘭が宝塚音楽学校に訪れたときの映像を見たことがあります。柚希礼音がまだ本科生だったころで、映像に残っていました。鳳蘭の質問に答えるその声はまだ若くて細い声で、それがこんなに力強い低音になるとは考えられませんでした。

柚希礼音は、歌が一番苦手だと聞いたことがあります。確かにトップになる前の歌声を聴いてみると不安定な音程もわかりました。それでも、努力と精進で素晴らしい低音の歌声となったのは見事と言うほかはありません。ただし、もう少し抑えた声量で心に染み入る静かな「迫力」も見せてほしいと思いました。全力をもって朗々と歌い上げ、激しい苦悩を訴えますが、それがしみじみとした歌になると裏目に出てしまうような気がするのです。

しかし、フィナーレでは芝居の中ではあまり見られなかったダンスをやっと楽しむことができました。無理もありません、このフレンチミュージカルはオリジナル版では歌手とダンサーが完全に分かれているグランド・オペラ式なのですから。

ロミオとしては若々しさを押し出した演技でしたが、ここでは一転してセクシーな「ダンスの柚希礼音」が見られます。指先の隅々まで意識された動きに魅了されました。

そして、夢咲ねねとのデュエット。これが彼女らがゴールデンコンビを呼ばれる所以なのですね。なんという息のあった素晴らしいデュエットでしょう。ロミオとジュリエットとしての若い二人というよりは、これはもう妖しいまでの大人の世界です。

「ロミオとジュリエット」という清純なふたりの世界からは、180度回転したミスマッチの世界ですが、ここがまた宝塚のフィナーレのいい所なのです。たぶんファンのひとたちもこういう激しいダンスの柚希礼音が見たかったでしょうから。

余談ながら、柚希礼音のあの「絶対キスしているんじゃないかとほとんど確信してしまうほど」の上手さは一体どこから来るのでしょう。もちろん他の男役たちも舞台ではキス(をしているように見える仕草)をしますが、とてもとても柚希礼音にかなうものではありません。

男の僕でもドキドキしてしまうほどですから、彼女のファンたちにとってはどれだけのインパクトがあるだろうと思いました。

 

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夢咲ねねの可憐なジュリエットに涙する

美しくあくまで可憐で純粋な少女、ジュリエットは、安定した娘役トップの夢咲ねねが演じています。愛と恋を夢見るジュリエットは、仮面舞踏会で偶然会った宿敵モンタギュー家のロミオとひと目で恋に落ちます。

この恋に落ちた場面からの演技が秀逸でした。単に「愛らしい少女」で終わることなく、心情の細かい動きまでかなり深く作り込んでいて、好感が持てます。

歌は高音に音程の乱れが少し見えましたが、それでも表情も仕草も恋にまどい恋に浮かれ恋しかみえない姿をよく表現していて、最後の場面などでは僕も目頭がじんとくるほどでした。

天国でのデュエットダンスの愛らしさは、彼女ならではの無垢なジュリエットとしてひとびとの心に残ると思います。

ところが、その可憐なジュリエットから一転して、フィナーレではなんとも美しく妖しい大人の女性となって登場します。ダンスの伸び伸びとした美しさに(映像なのをいいことに)何度も繰り返して見てしまいました。圧巻です。

 

柚希礼音と夢咲ねねの舞台でピッタリと息の合った演技は、普段からの努力の賜物なのでしょうが、それでもどんなに努力を重ねても得られないものに「相性の良さ」があります。「相性」のせいで、相手役を見つめる眼差しもデュエットダンスで腰に回された手の優しさもキスをする前の頬を包む手も、絶妙な空気をただよわせて観客を魅了します。

そして、それがこのふたりが長期に渡って星組のゴールデンコンビでありえた理由のひとつなのだと思います。

(また長くなってしまって…キャストについてはまだ書きたりないので、もう少しおつきあいください。)

 

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