はい、そうです。
いきなり東京にいました。正月休みで、今回は出張ではありません。
最後の宝塚観劇は去年の1月でしたから1年も前です。今回は少し時間があったので「ファントム」を観たかったのですが、チケットが取れませんでした。
でも月組をまだナマで観たことがないと気づき、「オン・ザ・タウン」を。
今回の席は2階下手(しもて、つまり客席から見て舞台の左側)バルコニーでしたが、ナマのオーケストラボックスが丸見え、かなり舞台に近くて1階の11−12列ぐらいと同じぐらいの距離です。オケの音がそのまま立ちのぼってきて、かなりいい音響。その上舞台左端に張り出した部分があり、客席の階段から登って主役級のひとたちが立つことが多いのです。こんなふうにオーケストラボックスを特設したり、銀橋がない代わりに張り出し「お立ち台」を付け足したり、宝塚も結構新しい試みをするのですね。
さて、肝心の「オン・ザ・タウン」です。
ポスターを見たとき、この3人の水兵服にどうも既視感があったのですが、やはりミュージカル映画「踊る大紐育」(1949)のオリジナルでした。ジーン・ケリー主役のこの映画のほうはMGMミュージカル全盛時代のヒット作でしたが、大改変のせいでオリジナルミュージカルの楽曲はほとんど使われていません。僕はテレビで一度観ましたが、イヤに明るいミュージカルという印象を受けました。ここがオリジナルとかなり違うところです。
オリジナルのストーリーは、戦いの間に24時間の自由時間を与えられた3人の水兵のニューヨークでの恋愛騒動です。つまり1944年当時の第二次世界大戦の真っ只中、24時間のあとはまた戦いに戻るわけで彼ら3人が生きて帰る保証はありません。3人ともその日だけの「恋人」を見つけますが、いつかまた会える日を夢見て最後には別れていきます。そして、また新たに3人の水兵が24時間の自由時間を満喫するために上陸し、「ニューヨーク、ニューヨーク」とウキウキと歌って幕を閉じます。
楽しいミュージカルナンバーの間にその事実がふわりと漂って、どこか悲しげな印象を受けるのはそのためです。
今回の宝塚版は脚本の改変が許されず、それだけに忠実に1944年のミュージカルを再現して、ノスタルジックな雰囲気です。
特に僕はあのゲイビーが夢見る幻想的なダンス場面に惹かれました。リングでボクシングをすることになる二人ですが、このときのゲイビー(珠城りょう)の衣装がスケスケでビックリしました。いやもちろんその下にはピッタリした肌色の下着を着ているのでしょうが、肩幅が広いことでほとんど逆三角形の「男らしい」背中を見せてくれました。
珠城りょうは今回無難に役をこなしています。歌は聞きやすいし、時々音程が崩れる以外はハリのある歌声を聞かせてくれていました。しかし、「孤独な街 (Lonely Town)」はもう少し情感をこもらせてもいいのではないでしょうか。メロディーと歌詞が美しいので、そこにあふれる感情だけが不足していたように思います。
「神様の奇跡 (Lucky to be me)」の歌ははその点やはり彼女の若々しさと相まって、とても印象に残りました。このミュージカルの中では一番好きな曲です。メロディーも親しみやすく、会場を出るときに僕の頭の中で流れていたのもこの曲でした。
僕は月組トップ珠城りょうをナマで見たのは初めてです。
もちろんDVDでは見ていたのですが、そう言えばこの「オン・ザ・タウン」も含めて全て「輸入ミュージカル」でした。2015年の「1789-バスティーユの恋人たち-」の記事はこちらです。このときのトップは龍真咲でした。
そして、もうひとつは「アーサー王伝説」で、こちらは彼女がトップとしての最初の舞台です。やはりフランスからの斬新なミュージカルでした。
アーサー王の頃は実に初々しい雰囲気で、それがまさにアーサー王の役柄にピッタリとはまった好演でした。
今回の「オン・ザ・タウン」では、新しい相手役となった美園さくらとのプレお披露目だったにもかかわらず二人きりの場面が少なく、またどちらかというとほかの二人の水兵とその彼女たちのほうが印象的です。これは珠城りょうがヘタクソだというわけではなく、役柄(ひたすら一目惚れした女性を探し求める水兵)のせいもあり、どうも存在感が薄いのです。宝塚作品としては、脚本に手を入れてはいけないという制約でトップを前に押し出した構成にすることができず、少々ファンには肩透かしになってしまったかもしれません。
その点、両側につくチップ(暁千星)とオジー(風間柚乃)はコミカルで場を盛り上げるシーンがたくさんあり、しかもその相手役として与えられたヒルディ−(白雪さち花)とクレア(蓮つかさ)とのそれぞれのコンビが絶妙です。
特にヒルディーのタクシーの暴走には、こちらまでブレーキを踏んで角を曲がりそうになりました。楽しかったです。そして彼女の料理の歌にも拍手を。歌い方が完全に1940−50年代のジャズ歌手風になっていて感心しました。よく勉強していますね。
今回の舞台で僕が最後まで目を離せなかったのは風間柚乃です。が、そのことについては次回の記事で。
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