DVDを買ってきたけれど、まだ観ていなかった月組公演から「BADDY」をピックアップ。先日は東京で「オン・ザ・タウン」をナマ観劇したので、ブロードウェイでもフレンチミュージカルでもない月組の宝塚オリジナルレビューを観てみたかったというのが本心でした。
そんなわけで、取りあえず「カンパニー」をすっ飛ばして「BADDY」から。
最初は、一体何が起こるのかとワクワク
いつものことなのですが、僕は何の予備知識もなく観劇することが多く、それはDVDでも同じです。
だから、BUDDYの最初の場面で一体何が起こっているんだろうと面食らいました。SF仕立てなのかファンタジーなのかあまりよくわからず、禁煙している王様がいることはわかりましたが、いきなりデカイ禁煙マークが舞台に降りてきたときにはちょっとびっくりしてしまいました。
そして上演アナウンスが始まり…「とっくの昔に始まっているようだな!」と言われて、そう言えばアナウンスもなしに始まっていたと初めて気づきました。凝っていますね。
ストーリーはショーが主体なので、斬新な発想と設定に比べてかなり単純です。つまり、通しで演じる一幕モノのレビューということでしょうか。最初はセリフばかりで設定を理解するのに時間がかかりましたが、その後は別に最初のシーンがわからなくとも取りあえず楽しめるショーになっています。
珠城りょうの「悪いヤツ」はそれでもあんまり悪く見えない
珠城りょうはどちらかと言うと、「悪いヤツ」というより「ホントはいいヤツ」なんだけどワルぶっているように見えます。楽しいことは楽しいのですが、小道具を使っても昔の紫吹淳ほどにはキザったらしいワルのイメージが感じられませんでした。ただし、あの宇宙服の登場シーンは…とんでもなくて思わず笑ってしまいました。
しかし、いまどき「タバコ」と「サングラス」で悪いやつを表現すること自体、僕が子供のころからあるン十年モノの不良少年モデルで、あまり新しさが感じられません。
帰ってきたバッディーが「今帰ったよ~ん」でお土産を下げているという「イメージ」にも苦笑。今でも、こんな会社員がいるのでしょうか。サザエさんの時代の「酔ってフラフラと帰宅する会社員のお父さん」がこんなふうに弁当だか寿司だかを下げていました。
それとも、もしかしたら僕の子供のころのステレオタイプは、何十年もたつと回り回って若い人たちには新鮮におかしく映るのかもしれませんね。
妖艶すぎて主役を食ってしまった両性具有の美弥るりか
美弥るりかのスイートハート。自分でも「男だか女だかわからなーい」と言っていますが、声も高めにつくり、仕草もどちらでもなく、こちらが惹き込まれるようなセクシーな眼差しです。
彼女のはすでに「女装」じゃないですね。よくあるコミカルな男役の「女装」と違い、美弥るりかのスリットの深いドレス姿は網タイツも悩ましく、びっくりするほど妖艶で印象的でした。
今年退団予定だということで、惜しい二番手をなくしますね。…というより、今回のこのショーに関して言えば、主役を食ってしまうほどに舞台上にオーラが漂っていたように思います。
月城かなとが、大変美しいけれど「オーラ」という点では美弥るりかにはまだ追いついていないことを考えると、さてこれからの月組はどうなるのでしょうね。
愛希れいかの怒りのロケットに感動する
カオスという言葉が一番当てはまるこのショーの中で、僕が一番感動したのがこの「怒りのロケット」です。
通常初舞台の生徒さんたちを配して、楽しく華やかに微笑みながら一糸乱れぬライン上で足を上げるロケットですが、今回は違いました。
顔の表情も険しく「憎しみなんて知らなかった」と歌い、しとやかなで上品な紺のドレスを脱いだ愛希れいかを中心として、ロケットダンスが始まります。皆微笑みも見せず、唇をきりりと結び、足を蹴り上げ、歌い踊ります。僕はその迫力に感動してしまいました。
愛希れいかはそのロケットの真ん中でダンスの技量を遺憾なく発揮していました。
僕は今までこんなロケットを見たことがありません。女性の「怒り」をダンスとして舞台にぶつけること自体、宝塚ではありえなかったからです。男に対する怒り、社会に対する怒り、そして自分たちを押さえつけるものへの怒り。その怒りを男役ではなく娘役として舞台で表現したこのラインダンスこそ、今回の「BADDY」ショーの醍醐味であったように思います。
僕は急いで誰がこの振り付けをしたのか確認してみました。御織ゆみ乃でした。
振付師「御織ゆみ乃」のテンポの速い群舞に時を忘れる
ロケットは、確か今旬である95期の初舞台でも振り付けをしていました。動きが激しく、一糸の乱れもない統率が魅力のラインダンスですが、このショーでもその力量が発揮されています。男役群舞でもその激しい動きとリズムを見せてくれました。
フォーメーションと立ち姿の美しさを狙った、どちらかと言うとゆっくりとした動きの羽山紀代美の群舞とは対極に位置する振り付けだと思いました。
そう言えば、僕は羽山紀代美の振り付けが大好きで、「ゴールデンステップス」という彼女の振り付けの集大成のようなDVDも持っているのです。コチラもいつかブログ記事にしたいと思っています。
「BADDY」が普通のレビューじゃないのは確かだ
いずれにせよ、珠城りょうの歌唱力を踏まえたショーだったのか、ダンスにかなり力を入れていました。歌も聴きたい僕としてはそこが少々不満でもありましたが、斬新なショーとしてはおもちゃ箱のようにゴチャゴチャしながらも一応まとまってはいたと思います。
しかし、最後にひとつ。
輝月ゆうまのあの出向銀行員は何なのでしょう…。僕は彼女がなにかしでかしてくれるのかと今か今かと待っていたのですが、存在のインパクトがあまりに大きいだけで何も起こりませんでした。ちょっと残念。
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