そもそもこの「推し活」という言葉を最初に見た時、僕には本当に見当がつきませんでした。
そりゃ僕は海外生活の長いジジイですので、言葉の使い方が古臭くて長ったらしいのは自分でもわかっていますが、それにしても「推し活」とはなんぞや?と考えてしまいました。
「推す」の意味が変わってきている
「活」は「婚活」や「妊活」という言葉で「活動」、つまり何かを促進するとか単にがんばっているという意味で使われているようですが、それにしても「推す活動」ですか。
だって「推す」というのは元々「推薦する」という意味ですよ。自分が好きだから、またはそれに価値があると思っているから他人にも行ったり使ったり見たり聴いたり読んだりするように薦める、ということです。
ところが色々なサイトで使われている「推す」「推し」などの言葉を拾ってみると、どうやら全く違う意味で使われていることがわかりました。
宝塚の「推し活」サイトにも書いてありますが、アーティストや俳優などを応援する活動のことを「推し活」と定義しているのですね。「推す」が「応援する」に変わってきたということになります。
僕が東京に住んで観劇していた大昔には「ご贔屓」という言葉が使われていましたが、それが「推し」に変化してきたのかもしれません。
言葉は時代とともに変わっていくものですから、良いも悪いもありません。ただ、この「推す」という言葉が、僕の時代には「推薦する」という意味だったということを覚えておくのも知識としてはいいのではないかと思いました。
さて、肝心の宝塚歌劇の「推し活」ですが…
宝塚の舞台に「推し活」という下世話な言葉を使うこと自体、僕には納得が行きません。僕にとっての宝塚はただの「アイドル集団」ではないからです。
宝塚の生徒さんたちは、芸を磨くための宝塚音楽学校にとんでもない数字の倍率を経て入学し、2年後に舞台に立ち、僕たちに愛と夢の舞台を提供してくれる「美しきプロフェッショナル」なのです。
「推し活」などという言葉で促進されなくても、宝塚を一度観たら「きれいだな、すてきだな、楽しいな」という感情を抱くのは当然です。10代の僕がそうでした。
そして、そうした若いひとたちの気持ちをサポートするならまだしも、ただの「広告」としていきなり陳腐な言葉で飾り立てた劇団の真意がわかりません。
なぜ具体的に新しい宝塚ファンを育成できないのか
「ちょっと観てみたいな」と、宝塚を知らないひとたちに思わせるのは大切だと思います。
問題は「その後」です。
「ちょっと観てみたいな」と思っても、さて宝塚歌劇のチケットを簡単に入手できるかというと答えは「否」です。だから、この「推し活」サイトに「チケット購入は意外と簡単。公式ホームページから購入できます。また、各種プレイガイドでも購入可能です」と書いてあるのを見て、苦笑してしまいました。
初めて観てみたいと思うひとが、簡単にチケットを入手できるようなシステムが皆無だからです。誰が「初めて観る前にまず友の会に入って抽選を待つ」ようなことをすると思いますか? 前売り開始と同時に電話をかけ続けるようなことを、まだ「宝塚を観たことがないひと」にできると思いますか?
そして、オンラインチケット購入や各種プレイガイドにアクセスして、全ての公演にバッテンがついているのを見たら、どんな気持ちになると思いますか? そうした感情を抱かせる前に、もう少し具体的に「どうしたら観劇できるか」を教えてあげようではありませんか。
あまり知られていませんが、旅行会社には宝塚ツアーが存在します。
例えば阪急交通社には、現地集合の貸し切り公演・お弁当つきというツアーがあります。8800円のS席プラス昼食弁当つき、抽選会と組長、トップスターの挨拶付きで12400円です。(3月17日現在の東宝劇場宙組公演「オーシャンズ11」のツアーですので、他公演では価格が変わることもあります)
また、新潟、静岡、香川など各県出発のパックツアーもあるのです。この場合は、現地集合ではなく新幹線往復などが付きます。つまり苦労してチケットを手に入れる必要もなく、それこそ「簡単に」宝塚の舞台を観劇できます。多少高くなりますが、お弁当付きでその他色々な貸し切り用の特典があることを考えれば、巷の高額転売チケットを購入しなくてもよさそうです。
ホテルがセットに含まれているものもあります。
阪急交通社だけではなく、読売旅行、クラブツーリズムなど、ネットで「宝塚 ツアー」で検索するとたくさん出てきます。こうしたパックツアーは、電話が繋がる前に売り切れてしまう前売りよりもシロウトには入手しやすいルートだと思います。
もうひとつ、定価または定価以下のチケット交換・譲渡サイト「おけぴ」も良心的です。僕も一度使ったことがあります。これはもう「一期一会」ですね…見つけたら即メールして返事をもらって交換する、という方法です。
郵送ではなく手渡しでしかも偶然ブログを読んでいただいている方だったらしく、「あなた…もしかして、ヅカメンさんですか?」と言われて「はい」と答え、本名も顔もバレてしまいました。やはり男性の観劇は少ないようです。Tさん、その節はどうもありがとうございました。
僕は旅行会社やおけぴの回し者ではありませんが、こうした具体的なアイデアを提示することのほうが、「陳腐な言葉を散りばめて観劇欲をくすぐっておきながら、実際はどうやってチケットを入手できるかさえ知らせていない」サイトを構築するよりはるかに効率的です。
海外からのチケット購入について
以前チケット購入に関しては「劇団の英語サイト」から英語で「ぴあのチケット購入」に向かえば可能、と聞きました。その当時(2−3年前ですが)は可能だったようですが、現在オーシャンズ11の前売り状況を見るかぎり、全ての公演と席にバッテンがついています。つまり満席状態です。海外の宝塚ファンにも、ほとんど観劇不可能なのです。
さて、海外からの旅行者が個人で日本に来る場合、そのほとんどが「ジャパンレールパス」という海外でしか買えない(日本人は今のところ10年以上の海外居住者のみ)JR乗り放題のチケットを購入します。
そのジャパンレールパスを使って「海外からの旅行者」としての証明とし、「海外ファン用」のチケット購入枠またはパックを可能にすればいいのでは。
台湾、韓国などに数多く存在する熱烈なファンに観劇の道が開けると思うのですが、いかがでしょうか。
プロモーションに必要なのは夢だけではなく具体的なアイデア
僕は普段ビジネスに従事していますので、こうした抽象的なプロモーションよりは、かきたてた欲望を具体化するアイデアのほうに魅力を感じます。
アイデアなしのプロモーションが読者(あるいは新規開拓されるかもしれない新しいファン層)に何の「活=行動」ももたらさないのは明らかだからです。
「推し活」を薦めるならその「活」をサポートする態勢の必要性を、少し劇団も考えてみてほしいと思います。
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コメント
こんにちは。
サイトの中身を読んでみると、ここで「推し活」を勧めているのは「大劇場公演」だけのようです。
東京公演や全国ツァーについてはまったく触れられていません。
つまり大劇場(公演および物販/飲食施設)の販促。
しかもこの特設サイト、宝塚歌劇の公式サイトから(少なくともトップページからは)リンクが張られていないようです。
※特設サイトからは公式サイトに飛べるようになってます。
何となくですが、この推し活サイトは本社マターのキャンペーンではなく、大劇場のエライ人(支配人とか)がどこかの広告代理店の口車に乗せられて作っちゃったような気がします。
それにしても皆さん、どうやってこの特設サイトを見つけたのでしょうか???
私はチラッとは聞いてはいましたがどこにあるかわからず、zukamenさんのリンクで初めて訪問できました。
にゃん魚さん、こんばんは。
僕はツイッターで流れてきたのでこのサイトのリンクがわかりました。それにしても陳腐な広告です。
いや、別に陳腐であっても客寄せに繋がるならいいのですが、今月組公演のチケット購入状況をチェックしてみたら、3500円のチケット(それも端っこ)しか残っていませんでした。これなら宝塚ツアーでS席パックを購入したほうがいいような気がします。
なるほど、もしかしたら大劇場が先走っちゃったのかもしれませんね。ツイッターではあまり評判がよくないようで、果たしてこれに引っかかる新しいファン層がいるのかどうか心配になります。大体宝塚のことを知らないひとがどこでこのサイトを知ることができるんでしょう。