いきなりですが、「ローマの休日」観劇@赤坂ACTシアター

雪組
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実は、今東京にいます。
来週の月曜日朝から東京出張の予定がようやく決定。金曜日の深夜にオーストラリアを発って今朝日本に着いて「観劇」というのも正気の沙汰じゃないとは思いましたが、明日で千秋楽になってしまう雪組公演を観るなら今日しかなかったのです。
ということで、観劇と感激の「証明」。

現在の雪組の公演を観るのは初めてです。
早霧せいなの名前は知っていましたが、なんと美しい男役でしょう。少々痩せすぎなのが気になりましたが(ワイシャツ姿になると向こうが透けて見えそうでした)、小柄ながら立ち姿も凛々しく芝居も大変上手い。ゴシップ記事稼ぎのチンピラ記者が次第に王女に惹かれて行く気持ちを繊細に表現していて、好感が持てました。ただし、歌が…。歌詞の感情表現を豊かにしようとしているのか、ときどき強弱が激しすぎて声を張り上げているときが特に少々耳障りではありました。フィナーレのダンスはキレがよく、たぶんとても運動神経がよいのでしょう、動きに素晴らしい躍動感があります。

咲妃みゆのアン王女は愛らしく、そして世間知らずで天真爛漫な女性を無難に演じていました。実は、僕は第一幕ではなぜか少々退屈してしまったのですが、1日の終わりに向かうほどアン王女は段々とひとりの女性として目覚めていき、その一途な姿を表現できた咲妃みゆに盛大な拍手を送りたいと思います。記者会見の場面は、よく知っているはずの僕でもほろりとしてしまったほどです。

僕は原作の映画ファンで、あのオードリー・ヘップバーンの美しさはもう天使のようでした。昔はVHSのビデオを持っていましたが、DVDでコンピューターを使って原版の美しさを再現したものをまた購入したほどのファンです。つまり、映画の細部に渡って記憶している部分がかなりあります。

例えばあの真実の口のシーンですが、元々はジョー・ブラッドレー役のグレゴリー・ペックのアドリブでした。だから、オードリー・ヘップバーンのアン王女のあの場面の驚きはホンモノだったのです。そして、最後の場面。アン王女も記者たちも去った王宮でひたすら立ち続けるジョー。そして、アン王女の姿を思い出しながら微笑み、靴音を響かせながら立ち去るのです。いいなあ、グレゴリー・ペック。

白黒の映画ですが、今でも新鮮な感動を与える名作だと思います。まだ観ていない方はぜひどうぞ。

映画とは多少違っている部分もあります。美容師のマリオですが、なぜスペインのフラメンコをBGMに出てくるのかとまどってしまいました。ローマならイタリア音楽でしょう? また愛の告白も唐突で取ってつけたような不自然さがあります。月城まなとはこういう役は初めてなのか、好演しているのはわかりますが、どうしても「一生懸命さ」だけが表に出てしまっているようです。時々笑いを誘いはしても、出てくるだけで微笑んでしまうような存在感が希薄でした。マリオのアシスタントを演じた男役(陽向春輝という名前を後で見つけました)のほうは、何だか自然に楽しそうに演じているようで目を引きましたが。

そして彩凪翔と鳳翔大。立ち姿も美しく芝居も自然で声もよく通ると思いましたが、やはり歌に難あり。どちらもカッコイイ男役で、僕の周りでも「最後の挨拶のときに、カメラの形を手で作ってたよね、カッコ良かった〜!」「どっちかというと支局長より映画スターのほうが似合っていたね〜。ステキ!」という声が聞かれましたので、歌の精進を期待しています。雪組の路線男役には歌の上手いひとはいないのか…と少々残念に思いました。

さて、元々登場人物の少ないストーリーですから、それを増やす意味でローマ支局と支局長、そして美容院と美容師マリオ(映画でもマリオはいましたが、実はもっとチョイ役)が登場したのではないかと想像します。追加場面が自然だったのは、大使と伯爵夫人そして将軍の場面でしたが、こちらが安心して見られたのもこのひとたちの芝居でした。

おお、歌と言えばクラブの歌手役の久城あすがジャズでいい味を出していました。それにしても、なぜジャズクラブに変更になってしまったのでしょうか。映画では、これは船の上で行われる野外パーティー。将軍に送られたスパイたちに追われて川に飛び込んでから身体を乾かすためにジョーのアパートに行くわけですが、これじゃあアパートに戻る意味がわかりません。川では二人ずぶぬれで初めてキスを交わす印象的なシーンだったのに。でも、舞台では確かにずぶぬれにはなれませんよね。

全体としてはよくできていたと思いますが、原作映画の印象が強すぎるという弊害もあります。特に僕のような映画もよく見ているファンとしては、どうしてもオードリー・ヘップバーンの気品ある美しさが心と頭に焼きついてしまっているのです。

あ、一応付け加えておきますと僕でさえまだ生まれていません。この映画ができたのは1952年ですから。

 

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コメント

  1. ストレッチ友理子 より:

    ひゃー!それは良かったですね〜!
    私は、今日 雪組の梅田芸術劇場シアタードラマシティ 望海風斗主演の ドン・ジュアンを観てきました!
    たぶん 雪組の歌うまさんは、こっちに出演されていたのではないでしょうか? 望海さんの圧倒的な歌唱力と演技力に 魅了されてきました。他の出演者も 凄かったです。
    早霧さんは、歌は イマイチですが、男役としての魅力がたっぷりあるな〜と思います。おっしゃる通りずば抜けた身体能力をお持ちの方ですし、キュンキュンしちゃいます(笑)
    すごく素敵!
    月城かなとさんは、初めてのコメディみたいで、一皮むけた。と言われていますが、まだまだでしたか?
    確か、役替わりもありますよね?
    私は、今月末と来月の2回観る予定です。
    あー、早く 早霧さんに会いたい(≧∇≦)
    月城さんは すごく真面目な方という印象があるので、コメディを経験して、これからもっと弾けて欲しいな!すごくら応援したくなる方です!
    それにしても、今の雪組は イケメン揃いだな〜

  2. yuranrei より:

    雪組の歌うまメンバーはドン・ジュアンを今公演しています。是非ご覧になっていただきたかったです。今回、ローマの休日を観て私も歌のレベルが低いと改めて思いました。
    私も映画ファンでしたので、ラストのアン王女の品をもう少し出してほしかったです。また、川に飛び込むのは無理としても
    もう少し工夫がほしかった。マリオも間のとり方、力の抜け感がもう少し。
    客席マナー、日本は違うのですね。
    私は舞台が始まってから客席に座る人が多くがっかりしています。観たいシーンで前を横切られてがっかりしたことが何度もありました。

  3. ピノ・グリ より:

    はじめまして。
    時々、読ませていただいている者です。
    おかえりなさいませ。
    映画「ローマの休日」脳内上映出来るほど、観ています。
    ラストシーンのグレゴリー・ペックの足音、
    初めてテレビで見た小学生の頃、何故か泣けて仕方なかったです。
    オードリー・ヘップバーンの他の映画は、観る気も起きないほどです。
    だから、雪組の公演、観たいような、観たくない様な…。
    チケットが無いんですけど。
    記者会見の場面は、ふたりの細かい表情が命ですが、
    ほろりと出来るんですね、なら良かった。
    映画ファンの人の感想を、ぜひ伺いたかったのです。
    ありがとうございました。

  4. zukamen より:

    ストレッチ友理子さん、こんばんは。
    「ドン・ジュアン」は見たかったのですが、どうもスケジュール調整が上手く行きませんでした。その代わり、こちらの「ローマの休日」はギリギリ間に合いましたが。
    役替りは赤坂ACTシアターでもあったのかな?よくわかりません。
    早霧せいなは出てきたとき「なんて美しいひとだろう」と見とれてしまいました。が、歌い始めたら「麻路さきか…」とビックリしてしまいました。何しろ初めて早霧せいなの舞台を観たので。すみません。
    芝居もダンスもずば抜けているのに惜しいなあ。
    しかし、イケメン揃いというのは本当ですね。目移りがしそうでオペラグラスをおろせませんでしたから。

  5. zukamen より:

    こんばんは、yuranreiさん。
    他のひとたちからも歌の上手い雪組メンバーは「ドン・ジュアン」に行っているらしいと聞きました。スケジュール調整が間に合わず、のがしてしまって残念です。
    客席マナーについては、ちょっと書き足りないことがありましたので、急遽記事にします。
    舞台が始まってからのことです。ご指摘ありがとうございました。

  6. zukamen より:

    こんばんは、ピノ・グリさん。
    白ワイン好きとお見受けしました。オーストラリアには美味しいピノ・グリがありますよ。イタリアからの接ぎ木が多かったせいか、ピノ・グリ−ジオというイタリア語読みで出荷されていますが。
    さて、「ローマの休日」ですが、「脳内上映ができるほど」というところで大笑いをしてしまいました。わかります、僕もそうですから。
    確かにオードリー・ヘップバーンとグレゴリー・ペックと比較してはいけないと思うので、新しい「舞台」として観たほうがいいのかもしれません。あの映画は名作ですから、とても舞台という全く違った芸の世界とは比べられないのです。
    でも、また映画のほうも見たくなりましたので、オーストラリアに戻ったらさっそく自宅の大画面で楽しもうと思っています。