星組「ロミオとジュリエット」キャスト感想:美城れん、紅ゆずる、礼真琴、天寿光希…そして鶴美舞夕

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前回に引き続きキャスト感想です。トップコンビに関する感想が長くなりすぎて、他の生徒さんたちについては改めて記事にすることに。

美城れん:ジュリエットの乳母から西郷隆盛へ

この配役に一番ビックリしました。
いや、僕が最後に彼女を見たのは「桜華に舞え」の西郷隆盛でしたから。そこからいきなり「ふくよかなジュリエットの乳母」で、女性らしい声で伸びやかに歌っていましたから。

これは彼女の代表作と言ってもいいのではないでしょうか。
わざとらしく笑いを誘うこともなく、ジュリエットを思う愛情豊かな乳母を表現していて温かな情がそこここに感ぜられ、何度もジンと来ました。

歌も無難にこなしていて、普段は男役の抑えた声だっただけにとても豊かな表現力を楽しめました。

ひとつ苦言(と言ってよいのかどうか)を加えるとすれば…美城れんはとても真面目なのだと思いました。
真面目だなけに、演出家の提案・アイデアを最大限に表現しようとし、100%演出家の考えを舞台で見せようとし、そして「見せて」いました。つまり、「美城れん」としての特徴というものがあまりないように感じられました。これを言っては酷なのかもしれませんが、演出家のアイデアをそのまま打ち出しながらも、ほんの少し「美城れん」を観客に見せることも大切なのではないかと思った次第です。そして、美城れんほどの芝居上手にはそれができたのではないか、と。

 

顔芸のない紅ゆずるに凄みが見えた

僕は「風と共に去りぬ」で初めて見た顔芸にビックリして以来、紅ゆずるをあまり評価していませんでした。

ただし、このロミオとジュリエットでは舞台化粧をきつめにしてティボルトの「陰」を表していた代わりに、顔芸が全く見られず。そしてそれが功を奏したのか、抑えた演技と仕草でティボルトとしての苦悩が返って凄みをもたらしていて、とてもよかったと思います。

それにしても、ジュリエットの母、キャピュレット婦人が花を一輪投げ与えたときに、それを「落とし物だ!」と怒ってバルコニーに投げ返したら…紅ゆずるのコントロールも音花ゆりのキャッチも見事で、思わず「おお」と声が出てしまいました。

 

礼真琴:ベンヴォーリオの苦悩

礼真琴は2013年には研五ぐらいでしょうか。若々しくとても新鮮に見えました。歌はこのころから安定していますが、芝居に関しても若さだけが表にでているわけではなく、「どうやって伝えよう」の苦しい熱唱であますところなく伝えていました。それだけに、その後のベンヴォーリオのロミオへの思いやりと、彼を救えなかった無力感が、ことさら舞台に映えていました。

やはり、このころから礼真琴の路線男役としての立ち位置が段々と決まっていたのだと思います。

 

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天寿光希のヘアスタイルにビックリ

天寿光希といえば、僕にとっては「ガイズ・アンド・ドールズ」の救世軍の上司、サラの後見人としての老成した演技が思い出されます。

パリスは長いひさしのような前髪をつけ、まるで漫画の中から抜け出てきたようで、金も地位もあるけれど、あまり真面目に受け取ってもらえない間の抜けた人物を好演していました。

ところがフィナーレの群舞で出てきた天寿光希は…えっ、ショッキングピンクに染めて逆毛を立てたパンクスタイルで右側に大きく剃りが入っています。ビックリしました。戻って何度も見直したくらいです。

調べてみたら、役替りではマーキューシオ役になり、狂気さえ秘めたやんちゃな男を演じていたのですね。しかし、役のために地毛をこのものすごいパンクヘアにしてしまうなんて、どんな役も無難にこなしているような天寿光希の新たな一面を見た思いでした。

美しい顔立ちなだけに返って凄みのある風情で、このひとのマーキューシオが見られず残念です。

 

鶴美舞夕の「愛」のダンスから目が離せない

真風涼帆の「死」もすばらしいと思いましたが、僕はなぜか「愛」を踊る鶴美舞夕にむしろ惹かれました。この役はオリジナルではなかったそうですが、「死」との対比として宝塚の舞台では登場しました。

最初彼女のダンスを見たとき、その肉体のしなやかさ、そして筋肉の動きの力強さに目が離せませんでした。このひとは娘役なのか? それとも男役なのか? すらりとしてはいますが細すぎず、かと言って小さくまとまっているわけでもなく、その美しい肢体が編み出す繊細でかろやかな動きは「愛」そのものでした。

現在は宝塚音楽学校のダンス講師として就任しているそうで、やはりこのひとのダンスはどう考えても埋もれさせるには惜しいということなのでしょう。

鶴美舞夕のジャズダンス、コンテンポラリーダンスをもっと見たくなりましたが、現在のところは新しい宝塚の世代を育成することに彼女の力を注いでいるようです。

 

「ロミオとジュリエット」については、この記事でひとまず終了とします。
宝塚の代表作として何度も再演されているようですので、これからもまた次世代の生徒さんたちを配して再演されることもあるでしょう。次回はどんなロミオが、またどんなジュリエットが見られるのか、楽しみに待つことにします。

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コメント

  1. はらぺこ より:

    いつも楽しく読ませていただいております。
    星組再演の「ロミオとジュリエット」
    私も長い長い宝塚ブランクの後映像で見ました。まだ生徒さんの名前もよく分からなかったのですが、道化的なパリスの天寿 光希さん、愛を演じる鶴見舞夕さんのしなやかな踊りに惹きつけられました。役名は「愛」ですね。
    鶴見さんは「REON‼︎」で柚希さんと女役で踊っていましたが背中の筋肉が見事で、この筋肉が自由自在にしなやかな踊りを支えているのだな、と感心したのと同時に男役とはこんなに鍛えているのか!と驚きました。
    ロミジュリは礼 真琴さんがトップになったら再演するのではないかと思っています。
    紅さんでスカピン、真風さんでオーシャンときたら礼さんはロミジュリでしょう。ぜひ観たいです。
    ちえねねコンビのデュエットダンスでは台湾公演の「エトワール ド タカラヅカ」が大好きです。礼さんの台湾語?中国語?の影ソロで正に息もぴったりに踊る二人にウットリします。
    退団後に柚希さんが「私のスパルタによくぞ付いてきた。」とおっしゃっていたので、稽古の賜物なのでしょうね。
    長々と失礼致しました。
    これからもzukamenさんのブログ楽しみにしています。

    • zukamen zukamen より:

      はらぺこさん、こんばんは。
      おっと、「生」と書いてしまいましたが「愛」でしたね。訂正しました。ありがとうございます。

      礼真琴のロミオは新人公演でやったそうですから、なるほど、何となく主演になりそうですね!
      鶴美舞夕のダンスはこのロミジュリでしか見たことがないのですが、「REON!」でも踊っていたのですね。
      見たかったなあ…。

      もう少し柚希礼音の他の公演も観て感想を書いてみたくなりました。

  2. にゃん魚 より:

    こんにちは。
    一昨年に観た謝珠栄演出のダンス・パフォーマンス『Pukul』に鶴美舞夕が出演していました。
    プログラムでは出演者の最後に名前が載るポジションでしたが、彼女のダンスはアンサンブルの中では突出していました。
    美しいとか切れがあるとかを超えて、動きに言葉があるんですよね。
    身体で語ることのできるダンサー。
    主演の湖月わたると並んで強く印象に残っています。

    ダンサーの寿命はシンガーよりも短いです。観られるうちに観ておかなければ、と思います。
    でも観られるかどうかは運とご縁しだい……『Pukul』で鶴美舞夕のダンスを観られた幸運に感謝しています。

    • zukamen zukamen より:

      にゃん魚さん、こんばんは。
      鶴美舞夕はやはりダンスのひとなのですね。
      僕は「ベルサイユのばら45」の断片を観たときに、宝塚OGのダンスにその「ダンサーの寿命はシンガーよりも短い」ということをしみじみと感じました。
      あれほど栄華を誇ったトップたちの何人かがダンスでは形だけの動きを何とかこなしているのを見て、歳月というのはむごいものだと…。