宝塚の北翔海莉は「IL MONDO」で有終の美を飾った

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昨年北翔海莉の退団公演「ロマンス!」をBluRayで観たら、いきなり「IL MONDO」が差し替えになっていました。またか…という失望。

宝塚のDVDではよくあることのようですが、前回「ONE VOICE」でもかなりの数が差し替えになっておりがっかりしたばかりです。北翔海莉の歌が聴きたいから買っているのに、それを差し替えるとは何事か。

北翔海莉の退団公演当時、僕はネットのファンブログなどでその曲の素晴らしさを聞いていました。それだけに差し替えになったBluRayを観たときには憤りさえ覚えたものです。

 

ファンたちの声が届いたのかどうか11月には全編ノーカットが放映されたようで、僕もある方から録画を送っていただいてさっそく観てみました。ですから、今回は「ロマンス!」についてではなく「IL MONDO」についての感想です。

「IL MONDO」はジミー・フォンタナというイタリア人歌手により1965年当時最初イタリアで、そしてそれからは全世界で大ヒットとなった曲です。その後は様々な歌手にアレンジされ、今では古典的な愛の歌となっています。

北翔海莉はその名曲を堂々たる姿勢、そしてその声量で歌いきりました。最初のパートはかなり低音ですが、音程は全く揺るぎません。歌詞も彼女の退団にマッチしていて、どなたが訳詞をなさったのか、静かな、しかし力強い愛が伝わる言葉となっています。
彼女の歌声はしみじみとその歌詞とともに聴くひとびとの胸に残り、これはたぶんあの「シナーマン」と並ぶ宝塚史に残る名曲となることでしょう。

そして、歌い上げたあとの黒燕尾服の短い群舞は、BluRayでは北翔海莉の「フォォッ」の合図さえ消されていましたから、僕はここで初めて彼女の力強い掛け声を聞くことができました。

見事に揃った美しい群舞です。中心で踊るトップはきらびやかに縁取られた黒燕尾だけではなく、ほんの少しの間をとることで「トップ」だという印象を与えますが、北翔海莉はどちらかというと一分のスキもなく整った群舞のほうに重きを置くひとのようです。組子たちの団結力により、短いながら素晴らしい群舞となりました。

(閑話休題:僕は「ゴールデンステップス」という2005年の羽山紀代美の集大成ダンスのDVDも持っていますが、ここに出てくる素晴らしいトップたち、湖月わたる、朝海ひかる、瀬奈じゅん、貴城けいなどがあの有名な黒燕尾群舞の正面で踊ったのを覚えています。いや見事にバラバラでした。群舞にはトップはひとりだけでなければならないと思ったものです)

男役が皆黒髪というのも僕にはとても新鮮に映りました。これはもちろん「桜華に舞え」の設定で全員黒髪に戻したのでしょうが、燕尾服にキリリと映えて美しかったです。

 

「ロマンス!」には北翔海莉と妃海風のデュエットがなかったということで、不満の声も上がったようです。
ただ、僕にはこの「IL MONDO」での後半のデュエットが大変美しく、妃海風の愛らしく一途に相手役を見つめる姿に打たれました。最後には舞台からライトが当たり彼女たちの宝塚決まりポーズがシルエットとなって銀橋に浮かび上がります。真骨頂です。
北翔海莉と妃海風が踊っている間、影ソロは夏樹れいに引き継がれていました。上手く歌っているのですが、北翔海莉の声量と表現力にはまだ追いついていないな、と思ったのは否めません。

僕はたぶんまだ「宝塚の」北翔海莉に未練があるのです。

いやもちろん外のミュージカルやコンサートで活躍するみっちゃんを観たいという気持ちが失せたわけではありませんが、どれだけのひとびとが贅を尽くして彼女を「完璧な北翔海莉」として舞台に出現させてきたのか、また彼女自身が宝塚の舞台にあるべき男役としてどれだけ輝いていたか、と今にして考えてしまいます。

たぶん一度は彼女の「宝塚後」の世界を観てみたいと思っていますが、ここしばらくは過去作品に浸ろうかとDVDの山を崩している正月休暇です。

 

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コメント

  1. にゃん魚 より:

    「IL MONDO」は男役・北翔海莉のこの上なく見事な集大成でしたね。
    銀橋のスポットライトに浮かぶ二人が美しくて、東京公演のあの場面では毎回泣いていたものです。
    訳詞ですが、『歌劇』16年9月号の「ロマンス」座談会(p.76)によれば平野恵子さんという方だそうです。退団に合わせた超訳で、イタリア語の原詞とはずいぶん違います。
    以下、この座談会で北翔海莉・みっちゃんと演出の岡田敬二先生が「イル・モンド」について語った部分です。
    岡田:(略)「イル・モンド」という曲を基本的にはボレロアレンジにしていて、男役は黒燕尾です。振付と音楽は、羽山先生と吉崎先生のコンビで、自分たちの新しい世界に向かって走っていくということを全員で歌い上げるという、かなりボリュームのある場面です。歌詞は平野恵子さんの訳詞です。
    北翔:ここの曲のスケールはやっぱりディナーショーやバウホールではなく、大劇場で歌うものだなと思いました。
    岡田:そう、それを言って欲しかった!
    北翔:2500名を前に生のオーケストラで歌う醍醐味を味わいながら、フィナーレを飾りたいと思います。
    ーーご参考まで。

  2. Yasu より:

    にゃん魚さまのコメントから
    デイナーショーで、二回ともイルモンドを聴きました。
    退団時には、この楽曲の集大成たる意味を、みっちゃんは理解していたのですね。
    安易に、又、一年そこそこで歌うのには、疑問符がつきました。
    特に、夜の部は、いささか退屈でした。
    封印するから、美しさが増すこともありますから。

  3. zukamen より:

    にゃん魚さん、こんばんは。
    ずっと観たいと思っていたので、今回は通しで観られて感激です。BluRayはあの差し替えのせいでゲンナリしました。あの歌は北翔海莉の退団公演のために書かれたのだろうなと僕も思っていました。超訳でもあれだけで皆観客は感情移入して泣いたことでしょう。
    >北翔:ここの曲のスケールはやっぱりディナーショーやバウホールではなく、大劇場で歌うものだなと思いました。
    歌っちゃいましたよね…すぐに。もったいないなあ。

  4. zukamen より:

    Yasuさん、こんばんは。
    この曲を歌うならあと10年たってから…ぐらいにしておいてもよかったかもしれませんね。
    退団公演の歌声が素晴らしかっただけに、少々残念です。

  5. さえぽん より:

    zukamenさんも「IL MONDO」を見る事が出来たのですね。
    あの歌がカットされずに放送された時は 嬉しくて飛び上がりましたよ。
    スカステさんに感謝です。
    素晴らしい シュチュエーションの中で歌いあげたのですから もっと大事に封印しておいて欲しかったという思いは同じです。
    夏樹れいさんも12月に 爽やかにご卒業されていかれました。
    今の星組で彼女がいなくなるのは とても残念で 寂しかったです。

  6. zukamen より:

    さえぽんさん、こんにちは。
    夏樹れいは退団でしたか!
    今の星組で歌える男役は貴重だったのではないでしょうか。残念ですね。

  7. にゃん魚 より:

    >歌っちゃいましたよね…すぐに。もったいないなあ。
    大阪ディナーショーのタイトル「イル・モンド(私の世界)」がオフィシャルサイトで発表されたのは、ショーのわずか19日前の12月5日。告知には”「ロマンス‼(Romance)」のあのシーンの感動をもう一度!!”というコメントが付いていました。
    さらに、「イル・モンド」が歌われたのは本編の演出を変えないで済むアンコールでした。
    これらを考え合わせると、急遽突っ込んだ、という感じがしないでもありません。
    クリスマスイブとあって、大阪ディナーショーの集客は終盤苦戦したようです。じっさいのところはわかりませんが、「イル・モンド」が販促の切り札に使われたのだとしたら、それはそれで淋しいことです。

  8. Yasu より:

    何度もお邪魔します
    帝国ホテル夜の部は、みっちゃんファンというよりは、中年、老年ご夫婦が目立ち、イブの夜のひとときを、ホテルで、という雰囲気でした。
    やはり、あの朗々と歌い上げる[イルモンド]は、ホテルには不向きです。
    そして、あの感動は、黒燕尾服で、男役の郡舞、風ちゃんの可憐さ、全てが合わさってみっちゃんの熱唱が生きたのです。
    その前に、明日へのエナジーを、歌いましたが、この楽曲も然りです。
    楽曲も勿体ないですし、私のチケット代も。

  9. zukamen より:

    にゃん魚さん、こんにちは。
    ああ、なるほど。
    つまり「イル・モンド」投入で集客率が変わると見込んだのですね。うーん、ちょっと考えてしまいました。

  10. zukamen より:

    Yasuさん、こんにちは。
    明日へのエナジーは初演のあの熱気が映像でも伝わってきただけに、あれをたった独りで歌うのは大変でしょうね…。
    結局は退団してもそうした曲を歌ってほしいというファンの要望もあるのでしょう。

  11. トン より:

    こんばんは、またヅカメンさんのコメントが始まり嬉しいです。
    私は観劇初心者です。怪我をして2ヶ月余りスポーツが出来なく家の中での生活、その時スカパ-の無料放送でSkY STAGEを観て契約をし、しばらくしてから観劇が始まりました。
    北翔さんの「IL MONDO」 はとても素晴らしく心に残るひと場面でした! 私もDVDを買いガッカリ・・でも11月放送「ロマンス!!」を観て万歳\^o^/ です!
    12月24日お昼のショーへを観ましたよ。帰る道中、雨も降ってきて寒い中ずっと幸せでした。私はいろいろな事は分かりませんが、北翔さんは「皆様からの要望が多く」のように言ってたと思いますが、北翔さんは観られた方々が楽しめる事に重きを置いてみえるのでは・・と思います。壮一帆さんのディナーショーも観て、壮さんは"今の壮一帆を観てほしい"・・と感じます。それぞれの考えがあると思います。
    もちろん10年後の「IL MONDO」を私も聞きたい! ぜひ!!
    おまけデス・・以前ヅカメンさんが壮さんの和物の美しさをコメン
          トされ、嬉しかった~です。
    また、楽しみにしています。

  12. zukamen より:

    トンさん、こんばんは。
    やはり同じようにDVDでガッカリ、そして11月の放送で「バンザイ!」でしたか。
    「IL MONDO」は北翔海莉の退団公演のための曲だったようで、僕も感動しました。
    トンさんは、壮一帆もお好きですか?
    以前僕が書いた記事を読んでいただけて嬉しいです。僕は彼女の和物がもう一度観てみたいです…実はもう正月休みにまた「心中・恋の大和路」のDVDを観ました。美しかったです。