すでに4年以上もたってしまったのですね。
ちょうど僕が宝塚観劇を再開したころのことです。
月城かなとの名も聞いていましたし、何より「銀二貫」は原作も読んでいたのです。僕は山本周五郎などの人情物が大好きですが、上方の人情物を読んだのはこの髙田郁の「銀二貫」が初めてでした。
そして、何よりも今は月組二番手となっている月城かなと、そしてもうすぐ東京宝塚劇場で退団する専科の華形ひかる見たさに、アマゾンのレンタルで観劇しました。
やはり健在だった和物の雪組
雪組と言えば、もちろん杜けあきの退団公演、1992年「忠臣蔵〜花に散り雪に散り〜」という名作があります。
その後僕の観た傑作では、なで肩で首の長い「まるで着物を着るために生まれてきたような体型の」壮一帆が忠兵衛を演じた2014年「心中・恋の大和路」があります。これは近松の心中物ですが、美しい舞台でした。
そして、早霧せいなの退団公演、2017年「幕末太陽傳」がありましたね。
これも鮮やかな色彩と早霧せいなの軽妙な明るさがうまく混じり合った傑作でした。
こうしてみると、やはり和物の雪組は健在、と言わざるをえません。
そして、最後に観たのがこの2015年「銀二貫」でした。こちらは小劇場のバウホールで月城かなとが初めて主演した作品です。
月城かなとの美しい立ち姿
なんという美しい男役でしょう。
すっきりとした立ち姿も素晴らしいし、こんなふうに月代(さかやき)の似合うひともあまりいません。どちらかというと丁稚というより「品のいい」侍の姿ですね。そして、だからこそこの役にぴったりだったのでしょう。
4年前と言えばまだ新人ですが、今ではすでに月組の二番手です。
押し出しの点ではまだ弱いですが、それでも周囲の芸達者たちに支えられて、その美しさが際立っていました。
専科の華形ひかると英真なおきのいぶし銀演技が光る
原作では華形ひかるの和助(寒天問屋「井川屋」の主人)は、60過ぎの老人です。華形ひかるでは少々若すぎるかと思いましたが、どうして立派で人情に厚い問屋主人を好演していました。
特に番頭の善次郎役英真なおきとの掛け合い。流れるような関西弁、いやはや音楽のようで耳にすっと入ってきます。
この掛け合いがすばらしい。僕はこのふたりが出てくるたびに釘付けになり、主役ふたりの影さえ薄れるような気がしました。専科が光るのはこういう時です。
最後の「善次郎、わてはええ買いもんをしたなあ」には泣かされました。
最後には温かい気持ちが残る珠玉の作品だった
悪人らしき悪人も登場せず、皆が一様に幸せになり、席をたつと温かい気持ちだけが心に残る、そんな作品でした。
先の記事では「僕はやっぱりレビューが好き」と書きましたが、僕は日本物のチョンパもこういう人情物も大好きです。(というより、やはり宝塚自体が好きなのでしょうが)
早くこの新型コロナの騒動がおさまって、宝塚がまたいつものような華やかさを取り戻してくれるのを願うばかりです。
この「銀二貫」はDVDが発売されていないようですが、アマゾンではストリーミングのレンタルがあります。実は僕もこれで観劇しました。
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