宝塚大劇場はすでに舞台再開がスタートして、その限りなく慎重な対応にスタッフ、劇団生徒、そして観客たちも粛々と従っています。さすが、宝塚。
しかし、他の劇場ではポツポツと感染者が見つかり、このままでは劇場の再開が世界中で危ぶまれているのも事実です。
大都市の建築家たちの試みが具体化へ
観客をライブイベントに安全に戻そうと劇場とその関係者が方法を模索している中、シドニーとロンドンを拠点とする建築スタジオが、再開支援へ向けてのアイデアに取り組んでいます。
そのひとつが、この「新座席」構想です。
元々はスコットランドの小さな町にあるコミュニティーセンターの座席構想でしたが、こうしたアイデアがひいては他のもっと大きな劇場、たとえばウェストエンドやブロードウェイなどにも適用できるのではないかと考え始めたのでした。
劇場の新座席アイデアとは?
1930年代のラウンジシートに良く似ているこのシートのプロトタイプ(写真を参照)は、平均的な観客席よりも少し幅が広くなっています。ただし、日本の観客席が現在でもオーストラリアの劇場のものに比べるとかなり小さいのは、背の高い僕で実証済み。
プロトタイプでは各列が2段ずつの階段で分離されているため、劇場自体の傾斜が大きくなっています。つまり座高の高い人が後ろの人の視線をジャマすることもありません。
そして、取り外し可能な透明アクリル板プロテクターが、各観客席の側面と背面を包み込むように配置されています。つまり観客の1人1人にアクリル板による心理的安心感が与えられ、隣人の咳にも恐怖を感じずにすむわけです。
このデザインのアイデアでは、観客が全員で一緒に「観る」という従来の一体感をもつことができると同時に、物理的にアクリル板を設置することで、見知らぬ他人と再び並んで座ることもできるのです。
これからの劇場への課題
一番重要な課題は、そうした劇場改造にかかるコストと時間だと思います。
そして、人々の文化に対する感情。
中には舞台芸術の文化的価値をみとめないひとも多く、「経済が停滞している今、娯楽としての舞台など考えることもできない」と言われることも多いです。
しかし、僕たちはロボットではありません。
感情に潤いをもたらし、揺さぶり、心になにか温かいものを残す観劇とその劇場文化の擁護の火を絶やしてはいけないと思うのです。
この観客席の費用をカバーするためには、劇場側だけが費用を負担するのではなく、政府とそして後援者・後援会からの支援も必要になるでしょう。
ただし、こうした観客席を作ることができれば、必ずや芝居、ミュージカルの再開をもたらし、ひいては観客もまた劇場を大入り満員にすることができるのではないでしょうか。
実は、オーストラリアではまだ劇場公演は再開されていません。
楽しみにしていたミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」も中止になり、チケット料金は払い戻しを受けました。
一体再開がいつになるのか、まだ誰もわかりません。
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