2006年当時宝塚から完全に離れていた僕は、先日初めて映像で「Never Say Goodbye」を通して観ました。作曲を担当したのはその後和央ようかと結婚した、著名なミュージカル作曲家フランク・ワイルドホーンです。素晴らしい曲ばかりで、それだけでもこの公演は観る価値があると思います。
和央ようかのことは、新人時代に雪組にいたときの1990年初頭当時を覚えています。当時はショーになると、僕は端っこの背の高い男役に目を奪われていました。そのころの174cmと言ったら他の男役たちよりアタマひとつ大きいくらいですから、かなり目立っていました。それが和央ようかです。僕はまもなく段々と宝塚から離れて行き、その後和央ようかがどうなったかはあまりよく知りませんでした。
初めてトップとしての舞台を観たのが退団公演ということもあり、僕は彼女の美しい立ち姿と堂々とした演技に心を奪われていました。6年間の長期トップで花總まりとの息の合ったコンビで有名だったそうですね。
そして、大和悠河。なんと華やかで美しい男役なのだろうと思いました。そして、歌い始めたら…ため息がもれました。
ストーリーは…超大作と謳ったわりには地味です。
いやテーマが地味というのではなく、宝塚がいつも押し出している「男女間のロマンス」という意味で地味なのです。ジョルジュとキャサリンはなるほど恋に落ちますが、結局は自分の思い通りにはならないキャサリンを助けるべくアメリカに戻し、ジョルジュは戦いの末に死んでしまいます。死の場面はなぜかイヤに大きい二人に十字架のように抱え上げられて象徴的に描かれています。その二人というのは悠未ひろと十輝いりすでして、このぐらい大きい男役たちでないと、174cmの和央ようかを足が床につかないほど持ち上げるのは無理だったのかも、と要らぬことを考えてしまいました。
でも、これは「ベルサイユのばら」のオスカルの死の場面の二番煎じですね。同じ構図ですから。
キャサリンはアメリカに返されてから一度も舞台には登場せず、姪(これももちろん花總まり)だけが後日談を語りにやってきます。
テーマはいいのですが、スペイン内戦というかなり込み入った歴史を馴染みのない日本の舞台にあげるためには、少々描ききれていない部分があったのは否めません。唐突な場面もいくつかありました。だから、感情移入ができないのです。また、ジョルジュがどういう人間かということは最初のほうで彼自身によって「説明」されますが、それを考慮しても、キャッチフレーズにあった「ファシズムと戦うスペイン内戦に巻き込まれ…」たのではなく、いきなり自ら他国の内戦に飛び込んでいったのがよく理解できませんでした。
それでも群舞はすばらしかったし、何よりも美しいワイルドホーンの楽曲が心に残ります。彼の楽曲は歌うのが大変難しいようで、和央ようかでさえ何度か音を外していましたが。他の生徒さんたちは言わずもがなです。
最後のほうでまた和央ようかが歌い上げる「Never Say Goodbye」を聴きながら、なるほど誰も最後まで「さようなら」とは言わなかったと気づきました。退団公演であろうと、和央ようかは「舞台」から去っていったわけではないのですから。
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