2018年雪組「ファントム」をDVD観劇したので、まずその背景から

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なにしろ3時間かかりますから、とても一度に観る時間がとれず、ずいぶんと時間がかかってしまいました。途中でやめてしまうと色々なことを忘れてしまっていて、また最初から観始めるということを繰り返していたからです。ただし、そうやって観ているとやはり細かいところまでよくわかるようになりました。

さて、「ファントム」です。
今年1月には東京にいたのですが、結局チケットがとれず、月組の「オン・ザ・タウン」だけを観て帰りました。取り敢えず初日映像だけは見て、感想を書きました。

2019年雪組「ファントム」初日映像で1年ぶりの雪組を見た感想
今回の東京滞在中には東京宝塚劇場で雪組公演「ファントム」があったにもかかわらずどうしてもチケットが取れず断念して、月組「オン・ザ・タウン」だけを観劇してオーストラリアに戻りました。 そんなわけで後ほどDVDを購入してじっくり鑑賞するつもりで...

今回は全体像としての感想です。

 

「ファントム」と「オペラ座の怪人」の争い

どちらのミュージカルも20世紀初頭に書かれたフランスの作家ガストン・ルルーの小説をもとにしています。
実はミュージカル構想の段階では、「オペラ座の怪人」より「ファントム」のほうが1年早く始まっていました。1983年のことです。ガストン・ルルー財団からアメリカでミュージカルとして上演する権利を獲得したのも、こちらのほうが早かったのです。

ところが、翌年1984年ロンドンでアンドリュー・ロイド・ウェーバーの音楽によるミュージカル「オペラ座の怪人」の製作が発表されました。実はイギリスではこのガストン・ルルーの作品はパブリックドメイン(著作権が消滅した作品)となっており、アメリカで著作権が存在しようともイギリスではその権利を主張できないことになっていたのです。

そんなわけで、1986年にロンドンで大ヒットとなったこの「オペラ座の怪人」は、翌年アメリカのブロードウェイにも進出し、「ファントム」への投資を考えていた財界人たちを躊躇させ、とうとう「ファントム」はお蔵入りとなってしまいました。

ところが、ブロードウェイで「オペラ座の怪人」を観た脚本家アーサー・コピットは、その原作へのアプローチが自分と作詞・作曲を手掛けたモーリー・イェストンの「ファントム」とは全く違うことに気づき、「ファントム」のミュージカルとしての可能性に賭けることにしたのです。

1991年夏アメリカ・ヒューストンでようやく初演にこぎつけたこのミュージカルは、アンドリュー・ロイド・ウェーバーの「オペラ座の怪人(=Phantom of the Opera)」との違いを表すためにシンプルに「ファントム」と名付けて上演されました。

それ以来、「ファントム」は世界各国で1000回以上も製作されている大ヒットとなったのでした。

 

「ファントム」と「オペラ座の怪人」の違い

僕はアンドリュー・ロイド・ウェーバーの「オペラ座の怪人」はすでに何度も観ていますし、映画となったときにも観ました。大好きなミュージカルのひとつで、オーストラリアで上演されたときにも2度観劇しています。日本では劇団四季のミュージカルとして有名ですね。

 

 

美しい名曲の数々と絢爛豪華な衣装、そして舞台装置がすばらしい作品となっています。特にオペラ座のシャンデリアの場面などは息を呑むほどのインパクトがあります。ただし、ファントム自身はどちらかというと残酷でひとに恐怖を与える存在として描かれていて、映画などは最後までまるで「どんでん返し」のような恐ろしい場面で幕を閉じます。

 

 

また、原作とはかなり違ったストーリー展開になっていて、ラウルというクリスティーヌの幼なじみの恋人も登場して、むしろ三角関係としてのプロットがストーリーの中で大きく扱われています。それに、「ファントム」では重要な役割を担う劇場支配人のキャリエールも登場しません。

代わって「ファントム」では、かなりセリフが多くなっています。つまり「オペラ座の怪人」がほとんどが歌のオペラなら、「ファントム」はオペレッタというところでしょうか。

それだけではなく、ストーリーの展開はより原作に近くなっていると言えます。ファントムの生い立ち、苦悩、そして劇場支配人のキャリエールとの関係が、深く原作のファントムを掘り下げていると思います。そういった点でも、「ファントム」のほうが「オペラ座の怪人」より悲劇的で暗い雰囲気を帯びているのです。

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日本での初演、宝塚の「ファントム」

さて、日本での初演は2004年和央ようか時代の宙組でした。それから、2006年に花組の春野寿美礼、2011年に花組の蘭寿とむで再演を重ねて、宝塚での「輸入ミュージカル」として大作のひとつに数えられています。

宝塚版上演に際して2004年にはモーリー・イェストンが新たに2曲書き加えていますが、そのひとつがプロローグでファントムが歌う「僕の悲劇を聞いてくれ」です。
実際の「ファントム」では序曲のあとにすぐクリスティーヌと群衆の場面になっています。宝塚版のプロローグ、つまり序曲から映像を入れて観客を暗い世界へといざなう演出とファントムの歌で、さらにロマンチックに悲劇的に始まるところが見事だと思いました。

「オン・ザ・タウン」などのように潤色が禁止されているミュージカルと違い、宝塚版の「ファントム」は作曲者モーリー・イェストンの協力を仰いで、その舞台に宝塚らしさを余すところなく表現していて、どちらかと言うと地味なオリジナルよりかなり豪華な舞台となっています。

今回の「ファントム」は4度目の公演ですが、歌の上手さでは抜きん出ている望海風斗と真彩希帆の雪組ですから、もちろん大評判になりました。結果としてギリギリで日本にいた僕にも、チケットを獲得することさえできませんでした。

長くなってしまいましたので、個々のキャストの感想は次回の記事で。

 

 

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