くそう、人情噺のくだりにゃあ泣いちまったぜぃ、どうしてくれる…と最後に言いたくなってしまいました。
北翔海莉の真骨頂ですね。カッコイイ。何と言ってもカッコイイのです。
江戸っ子弁で始まる開演の挨拶
物語自体は至極シンプルで、悪人はあくまで悪く、正直者が損をし、しかし最後には正直者たちが勝ち、全て丸く収まってハッピーエンドとなります。シンプルではありますが、弁士を使った白黒映像で始まり、立ち回りを経て北翔海莉のべらんめえ調開演の挨拶につなげるところなど、斬新で上手いなあと感心しました。
僕は実は下町の江戸っ子ですので、僕より世代が上の親戚アンチックじーさんばーさんたちは皆巻き舌です。三社祭にはまだよちよち歩きのころからハッピを着て連れて行かれましたし、神輿こそ担いだのは子供のときしかありませんが、その後は隣近所の手伝いをした覚えもあります。
だから、北翔海莉のべらんめえ言葉には本当に懐かしさを感じるのです。巻き舌だけではなく、ヒの発音がシになっています。「こんな子供だましにシっかかりやがってぇ」と言ったときには、「おおっ」となりました。ちなみに真性江戸っ子はヒが言えないのではなくヒとシが混ざってしまうんです。だから、布団は「シく」ものではなく「ヒく」ものなんですね。ちょうど日本人には英語のRとLの違いが難しいのと同じなのかもしれません。
そんなわけで、ちょっと引っかかったところもあります。
「次郎吉さんはアタシにイケズだよ…」とあやめが次郎吉にすねています。…イケズはたぶん「イジワル」の意味だと思いますが、関西の言葉なので東京では、ましてやべらんめえのお江戸では使いません。メディアの影響で今は誰でもが知っている言葉なのでしょうが、ちょっと違和感を覚えました。
北翔海莉の滑舌の良さと粋な仕草
さて、北翔海莉はセリフが実に清々しく、その滑舌の良さも加わって耳に心地よく響きます。黒髪のカツラもよく似合っていますし、何より江戸風仕草が流れるようで感心しました。歩き方、ちょっとした座り方、振り向いた顔の位置、客席を向く立ち姿など、これがあのガイズでの颯爽としたキザ男と同じひとだとも思えません。さぞや日本物に慣れていない下級生たちのお手本になったことでしょう。
だから大御所夏美ようとの場面では、何だか宝塚ではなく新劇の舞台を見ているようでした。どちらもあまりにも自然で芸達者で台詞回しがすばらしくて、宝塚からは逸脱しているようにも感じられたくらいです。見事でした。
美しい旗本浪人の瀬戸かずやと色気たっぷりの悪役紫峰七海
そして、瀬戸かずや。
僕は「ミー・アンド・マイガール」のランベスキングしか見たことがなかったので、あまり印象に残っていませんでした。ところが、ここでは二番手となる遠山の金さん役。着流し姿も美しく、存在感のある芝居をしてくれました。歌と日本物の仕草にはもう少し研究の余地がありそうですが。
物語の中では、金さんはまだ街の旗本浪人の姿。北町奉行になる前の話ですので、このままどこかで瀬戸かずやの金さんを中心とした舞台をもうひとつぐらい作ってほしいと思いました。それほど、彼女の役作りと芝居は光っていたのです。
もうひとり目に焼き付いた男役がいます。名前を知らなかったのですが、残念ながらすでに退団されたようですね。元花組副組長、紫峰七海です。
最初は弁士としてオープニングを飾り、物語の中では悪徳与力の鳳真由と結託して、商売敵の店の手代を陥れる小松屋太兵衛を演じています。
江戸時代、歌舞伎の女形が月代(さかやき、前髪を剃り落とした部分)を隠すために頭に紫の袱紗を載せていましたが、ここではその特徴を当ててワルの小松屋を演じています。時代考証は無視してもいいと思いますが、その「おぬしもワルよのう」の存在感にただ圧倒されます。女形のような優雅な身のこなし、そして張りのある滑舌のよい声。それでいて、その色気のある眼差しに宿る残虐な悪の光。うわあ。
僕は彼女の他の役もぜひ見てみたくなりました。
まだまだ書き足りないのですが、長くなりそうなので今日はこのへんで。
ああ、めでてぇなあ、ほぅーほけきょ。
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コメント
ヅカメンさん、こんばんは。
次郎吉、お正月の公演としては極上の舞台でした!
とにかく、ひたすら楽しめる作品で、
細かいところは、まあいいか―と思える作品でした。
私も映像で観て、瀬戸さんのかっこよさと、
紫峰さんの「ワルぶり」にやられたクチです(;^_^A
仙名さん(花乃さんの後にトップに決まりました!)、
桜咲さんもしっかりと自分の役割を果たしていましたし、
なにより、一人一人がイキイキと舞台に出ていて、
チームワークの良さを感じる舞台でした。
月組の「メリー・ウィドウ」は、下級生が多くて、
北翔さんがグイグイ引っ張っていく公演でしたが、
こちらは「花組出演者」の力量が感じらた公演でした。
実は今、大阪です(;^_^A
どうしても、最後の公演を観たくなり(観ないと後悔すると思い)急遽、遠征中です。
東京も、なんとか観られることになりました。
北翔さんの最後の舞台、しっかりと目に焼き付けてきたいと思います。
次郎吉をご覧になったのですね。
どんなに踊っても少しもぶれないという、驚異的なみっちゃんの歌もいいですが、組子のみなさんものびのびと本領を発揮しているというか、本当に楽しそうに演じていて、見ると幸せになります。
主観が暴走していますが、この作品での瀬戸かずやさんは、安定した日本物の仕草を獲得した…というよりは最近のゲームやらアニメやらから出てきたような美しくも悩ましい2.5次元な出で立ちが魅力かと思います。小さい顔、長い手足、薄めの胸板を生かした和服の着こなしです。そこがみっちゃんと良い対比になっているという印象です。
ところで、手妻の幸を演じた仙名彩世さんが次の娘役トップという発表がありましたね。何度もエトワールを演じている歌うまさんで、2014年花組エリザベートのヴィンディッシュ嬢が特に出色の出来映えと思います。
最近の娘トップとしてはかなり上級生での就任ですが、彼女のような実力者が娘1になるところ、宝塚もずいぶん成熟したのだなと思います。
風の次郎吉、わたしがみっちゃんにタレーランで再会して
悶々とした日々を送っていてから初の主演だったので
勇んでチケットを取りに行こうと色々と手をまわしましたが
どーしてもとれず。。本当にチケット難でした。
でもその頃はブログを始めていたおかげで
ヒトサマからお声をかけていただき、幸運にもお正月の初日に娘とみました。
それはそれはもう楽しいハッピーミュージカルでした。
みっちゃんの江戸弁がうま過ぎて笑いました。
確かカーテンコールで演歌みたいなのも歌ったな。
そうそう。このチケットがとれた!!やったーー!
と言っていたのがその前の年の秋で、しばらくしてから
みっちゃんのトップ就任の発表が12月にあった後の公演だったので
それはそれは会場全体がもうみっちゃんおめでとうーーー!!
というムードで熱く熱くなっていましたよ。
わたしの小学生の娘は、その頃花組エリザベートを映像で見ていて
ヴィンディッシュ嬢の仙名さんに心を奪われていたので
仙名さんがヒロインの和物が見れたということで大喜びでした。
でも仙名さん、、言ってみれば、娘役の北翔海莉なんですよね。
歌もダンスもダントツにうまくて美人なのに、新人公演の主演を
一度もさせてもらえず、冷や飯状態だったのです。
実力も美貌も客観的に見たら、うーーーーー、、、かなり微妙、
と言わざるを得ない自分より下級生が長くトップを務めたり
していてもずーーっと頑張ってきたんですよ(涙
そんな彼女、おとめでもずっと今まで一番心に残った役を
次郎吉のおゆき、と書いていました。轟理事の別箱公演でヒロインを
やったということで、え?流れが変わった??と思っていたら今回の
就任発表。そうそう、あきら(瀬戸かずや)もここへきてバウ主演。
あの時みっちゃんが「今まであまり光が当たっていなかったけれど
いいなと思う役者さんに光があたってほしかった」と言っていたので
(アンチには、何様やとかまた叩かれてましたが)
あれから1年半ほどたって、徐々にジロキチメンバーに本当に光が
あたってきて本当にうれしいです。
いやーーほんっと、理事長がかわって、人事が相当変わったと思います。
ちゃんと先のことを考えての人事配置になってきました。
清く正しく美しい人にも光が当たるようになった。
これならみっちゃんが卒業しても、宝塚5組の内どこかはみてもいいかな
と思えそうです。
本当によかった。みっちゃんの卒業公演、明日見に行きますが
清々しい気持になってきました。長文失礼しましたー。
yuraraさん、こんばんは。
そうか、次郎吉はお正月作品だったんですね! 何しろ映像だけの観劇なもので、どうも季節感がありません。
確かに次郎吉のほうは、チームワークの良さが表に出ていました。とても楽しい作品で、DVDを買ってよかったです。
大劇場も東京おご観劇ですか、羨ましいなあ。
やはり会場の雰囲気込みの「観劇」ですから、ナマ以上のものはありません。
涙用のタオルを忘れませんように、楽しんでいらしてください。
ペン吉さん、こんにちは。
次郎吉は傑作だと思います。でも、これは北翔海莉だからなのでしょうね…。
こういう1本ものは、花組生のひとりひとりにセリフがあったりして楽しくなりますね。皆、生き生きとしています。
瀬戸かずやの金さんは、おっしゃるようにまるで漫画から出てきたようで、楽しかったです。記事にも書きましたが、彼女の金さんでもう1本書いて舞台にしてほしいなと思いました。
僕は花組エリザベートをまだ観ていないんですよね。そうですか、仙名彩世も出ていたとは。これは、やはり1度は映像で観てみないと。
ムコさん、こんにちは。
次郎吉は本当に楽しい舞台ですね。DVDを買ってよかったと思います。
初日に行かれたとは、ラッキーでしたね。
ヴィンディッシュ嬢の仙名彩世は、ペン吉さんからも教えてもらいました。
これは、どうしても観てみなければ。
そう言えば、轟悠の「リンカーン」にも出ていましたね!
僕も仙名彩世の抜擢を聞いたとき、北翔海莉を思い出しました。
なので、もう1本記事をすぐに書いてしまいました。彼女は次郎吉でもかなり光っていましたから。
実力も、もちろん。
花組がこれからどうなるのか、ちょっと気になりますよね!
まあさん、こんにちは。
北翔海莉は本当に何でもできて、安心できる舞台を提供してくれるんですが…うーん、皆さんおっしゃるように化粧がやっぱりヘタクソなのかな。
僕はあまり化粧に詳しくないのでそんなものかな、と思っていましたが、CHIHARUさんがメイクしたときはやはり美しかったです。なんで下手なんだろう…。
そこがまたかわいいけど。素顔のほうがキレイというのも珍しいですね。
そのB席後方の観客のお話が聞けて、嬉しいです。
若い人たちが、熱烈ファンでなくとも楽しんでくれたのですから。
日本も昔は車椅子のひとたちが入れるような劇場が少なかったのですが、今はきちんと整備されていますね。僕だってあと30年たったら車椅子で観劇ということになるかもしれませんので、そういう制約がなくなったことで今までは観劇もままならなかったひとたちができるようになったのは、いいことだと思います。