原作はかなりヒットしたハリウッド映画で、有名どころが沢山出ていたし、スタイリッシュで楽しいものでした。そのオリジナルをもとに作られているだけに、3時間という長い1本ものでも十分に楽しめました。
ミュージカルとしての「オーシャンズ11」
出演者たちの設定はミュージカルなので多少変えてあり、例えばテスが歌手だったり、悪徳ベネディクトに乗っ取られそうなバーが出てきたり、またカジノ泥棒の手口にも省略が見えますが、全体的に中だるみもなく整った構成になっています。
オーシャンの集める人数だけでも全部で10人いるわけで、それなりに様々な生徒たちに役がつき、これも観客やファンにとってはお目当ての生徒たちを探すだけで面白いでしょう。
蘭寿とむの色気にぐっと来る
蘭寿とむは、男の僕から見てもキザな男臭い芝居で、出てきただけで舞台がぱっと明るくなるほどの華があります。
ちょっとした仕草とか暗転する前の流し目やウィンクとか、計算された色気なのですがそれでも唸ってしまいそうでした。歌はさほど上手いとは言えませんが、発声の良さと丁寧な歌い方で好感がもてます。
また、最後の黒燕尾ダンスでは、彼女の力強い掛け声もありました。以前にも書きましたが、蘭寿とむの「フオォッ」はやっぱりカッコイイです。
特出の北翔海莉について
さて、北翔海莉は専科からの特出ということになっています。当時確定した二番手のいない花組に、ラスティー役ができる生徒さんがいなかったので当てられたのでしょうが、脇役ながら蘭寿とむと大変息のあったコンビを見せてくれています。
映画ではブラッド・ピットの演ったこのラスティーは、オーシャンの参謀役で信望を集める美味しい役どころです。どちらかというとコミカルな設定なのか、ヘアスタイルもシルクスーツもあまり似合っているとは言えませんが、それでも北翔海莉の実力がそこかしこに見られる演技と歌とダンスでした。
ただ、あのグリーンのタイシルクスーツでは中に着たテロンとしたシャツで胸の形がハッキリ見えてしまい、宝塚の男役にはあまり適していなかったのではないかと思います。
ダンスの花組は健在だった
いずれにしろ、この当時の花組は「ダンスの組」だったようで、舞台最後の短いショーでも激しいダンスやデュエットが繰り広げられていて、他組の追従を許さない出来栄えです。北翔海莉のダンスの迫力もはっきりと見られます。
で、このあと一作で蘭寿とむは退団し、花組は明日海りおをトップとして迎えるわけです。このころが北翔海莉の言う「辛い日々」だったのではないでしょうか。脇役ながらいい役を手にしていますが、それでも専科というどの組にも属さない立場は自分のありかたと将来を問うには十分な時間を与えたことと思います。
望海風斗の悪いヤツは本当に悪く見える
望海風斗に関しては、僕が初めて見たのが「アル・カポネ」の主役で、今回の役とずいぶんと重なります。悪いヤツばかり。それもちょいワルの憎めないヤツと言うより、本当に悪いヤツです。表情の出し方がアルカポネのときのように印象に残ります。
雪組に組替えになり、今回早霧せいなの退団を受けてトップに就任しますが、果たしてこれからどんな「宝塚風貴公子」を見せてくれるのか興味津々です。
仙名彩世と華形ひかるも出演していた
また、花組トップ娘役としてすでに就任した仙名彩世が、3人のいわゆる狂言回しのシンガーズのひとりとして登場しています。この手法はミュージカル「リトルショップ・オブ・ホラーズ」でも使われていますが、ラスベガスの華やかさにぴったり、センスのよい雰囲気でバックの詳しい説明を歌で表現しています。
余談ですが、中国人のヨーヨーの天才役だった華形ひかるが、「…でアルよ」という僕が子供のころに聞かされていた「典型的な中国語訛りだと思われていた変な言葉遣い」をしていました。いまだにこんなものを使ってその役が中国人だということを表現するのでしょうか。
「出っ歯でメガネをかけていてRとLの発音ができない日本人」という欧米での昔ながらの日本人像と重なって、あまりの時代錯誤にため息が出ました。舞台だから誇張したのかもしれませんが、今や中国や台湾からの客も増えているのですから、もう少し配慮が必要なのではないかと思いました。
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