えっと思われた方もいるでしょうが、実はまたもや隠密行動で観劇してきました。
もしかしたら出るかな、と期待していた出張が急に決まったので一昨日から東京にいますが、2日後金曜日にはもうオーストラリアに戻ります。今日午後は「緊急の私用で!」とタクシーを飛ばして1時半からの公演に行ってきました。
VISAと友の会の貸し切り公演だったようですが、かなりいい席でした。お土産は当たりませんでしたが。こういう「貸し切り」に行ったのは初めてだったので、公演前と後に挨拶があることさえ知りませんでした。公演後の望海風斗自身の挨拶といい、抽選で当たる自筆サインといい、貸し切りというのは結構追加の「イイ事」があるんですね。
さて、「ひかりふる路」です。
全く予習せずに観ましたが、大体あのへんの歴史は知っているのでさほど戸惑いはしませんでした。ただし、史実に沿っているいるわけではありません。宝塚独自の歴史ミュージカルとして観ると、大変よくできていると思いました。
まず、舞台装置が素晴らしい。
舞台背景に斜めに貫かれた一線が不気味なギロチンを象徴的に想像させます。また、革命を起こしたジャコバン党は皆そのジャケットの背中にも斜めの一線があり、それで彼らが粛清を行っている者たちであるということがわかります。
シンプルな装置が次々と移り変わり、また恐ろしい断頭台をも赤い光と陰で表していて、残酷な場面ながら美しい最後になっていました。
そして音楽はフランク・ワイルドホーンが全曲担当したということで、期待を裏切らぬドラマチックな曲で満たされています。彼の曲は歌いこなすのが大変難しいという定評がありますが、望海風斗の会場一杯に響き渡る迫力のある歌声でその感動が増したと言っても過言ではないでしょう。真彩希帆とのデュエットも美しく、彼女がなぜ雪組のトップ娘役に抜擢されたかわかるというものです。
ただし、他のトップを狙うであろう男役たちの歌にはいささか不満です。滑舌も悪いひとが多く、早口になると何を言っているのかわかりません。雪組の男役の歌は望海風斗以外では永久輝せあと久城あすぐらいしか頭に浮かびませんが、もう少しがんばってほしいと思いました。
おお、忘れていましたが、月組から組替えで移ってきた朝美絢がサン・ジュストといういい役をもらっています。声もよく通りますし、音程も外しません。かなり斬新な髪型でしたが、よく似合っていました。
ストーリーの展開としては、込み入ったフランス革命時の人間模様を歴史的事実とフィクションを織り交ぜ、ロベスピエールを軸に崩壊する友情、粛清、そして苦悩がよく描けていたと思います。望海風斗は歌も上手いですが、どちらかというとシリアスなドラマのひとですね。物語最初のころの理想に燃えた人物が、その理想を追求するあまり「恐怖」で人心をひとつにしようとする展開が、望海風斗の迫真の演技で舞台に観客を釘付けにしていました。
ダントン役の彩風咲奈は、前回の観劇「幕末太陽傳」では飄々とした若旦那役だったのですが、今回は豪放な性格のダントンを丁寧に演じていて好感が持てます。ただし、時々台詞が聞き取れないときがありました。やはり声が彼女の当面の課題ではないでしょうか。
真彩希帆はトップ娘役として、最初に出てきたときのロベスピエールへの憎悪をもつ頑なな貴族の娘から、次第に彼に惹かれていく女心を声の違いによって巧みに表現していました。線の細い娘役ではないだけに、これからはもう少し男役への「うっとりとした視線」を見せてほしいと思います。
いずれにせよ、望海風斗のお披露目公演は、彼女のシリアスな芝居の上手さとワイルドホーンの歌を的確に歌うその技術に感動しました。次回はもう少し肩の力を抜いたコメディータッチのものも観たいと思いますが、彼女とは正反対の、「味のある軽さ」が光っていた早霧せいなとは、また違った路線で行くのかもしれません。
しかし、僕の出張はどうも雪組と花組の公演時にばかり当っているようで、宙組、月組、星組の公演をなかなかナマで見ることができません。「ウエスト・サイド・ストーリー」はちょうど僕が太平洋上を飛んでいるときに初日です。残念。
次の記事ではレビュー「Super Voyager」について書きたいと思います。
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コメント
昨日の雪組貸切公演、私も観劇していました。
zukamenさんと同じ空間にいたとは!
私の席は3階B席だったので、滑舌はもちろんのこと、大きい劇場での見せ方ができる生徒、できない生徒の差がはっきりしていたようです。
よいお席からの感想を伺って(なるほどね)と思いました。
zukamen さま
私は、雪組公演を、最近は見ていないのですが。
芝居の、特に和ものの雪組の伝統は、受け継がれて来ているとおもいます。
昨日、越路吹雪を忍ぶコンサートに行きました。
OG の方が、勢揃いで、素晴らしいステージでした。
特に、咲妃みゆさんが、素敵でした。
詩の朗読も。
咲妃さんあっての、早霧さんだったと思います。
伝統ある雪組を、守って欲しいです。
にゃん魚さん、こんにちは。
おお、同じ時間に同じ場所にいらっしゃったとは!
僕は一度しか観られないので、観劇を再開してからはもう1階席か2階の前方しか座りませんが、上のほうがフォーメーションがキレイに見えてよい場合もありますよね。
あとは、上の席ではオケの音が上にのぼるので、滑舌の悪いひとの歌はほとんどオケ音に消されることも。望海風斗の声量は消されないと思いますが。
色々な席で見るのも楽しみですね。
Yasuさん、こんにちは。
亡き父が越路吹雪の大ファンで、苦労してチケットを取っていたことを覚えています。
カラオケでも彼女の歌しか歌いませんでした。
宝塚OGたちの歌った越路吹雪の歌CDも買いました。懐かしいです。
こんにちは!
お元気でしたか?ブログを更新していらしたので嬉しいです。
望海さん、いいですよね。みちこさん退団後は雪組月組を中心に観劇しています。望海さんは以前から注目していました。二番手時代は、あまり役に恵まれていなかったように思います。トップになり、思う存分発揮している感じがします。歌えて踊れるトップコンビで、観ていてストレスがありません。ヅカメンさんが雪組公演を見てくださって良かった~。
雪組公演にサッと行けるなんて…さすがです!
私は大劇場で2回観ましたが…トップコンビの歌が本当に素晴らしく感動しました!
やはり歌える!って ものすごい武器になりますよね。
ただ ヅカメンさんも書かれていましたが、他のメンバーとの差がくっきりハッキリ出てしまうので、組子はめちゃくちゃ頑張らないとダメだな〜と思いました。レベルアップできるチャンスでもありますが…
そんな中で 朝美絢は 目立っていましたね!今 2番手の人もオチオチしてられないのでは?と感じました。
ショーは 野口先生、どんだけ北翔さんが好きなのよ?と一回目の時は ツッコミまくってましたが、ヅカメンさんは どう思われました?(笑)
とにかく雪組は これからも楽しみです。
次回の公演は…なぜ?という思いが消えませんが…大人の事情でしょうか?
のぶ太さん、こんばんは。
お久しぶりです。
たまにしか書きませんが、まあ、長く続けていきたいと思っています。
僕も望海風斗の歌を聴くとほっとします。あまりにもヘタなひとだと、手に汗を握ってしまうんですよね…いつ音が外れるかハラハラ。今回の芝居の歌はやはり美しくダイナミックなものが多くて楽しめました!
ストレッチ友理子さん、こんばんは。
朝美絢はよかったですよ。僕はあんなに花があるひとだとは知りませんでした。月組では何だかどういう位置にいるのか今ひとつわかりませんでしたが、雪組で伸びるような気がします。
あ〜あの「アンダルシア」ですか?
ちょっと雰囲気が違いましたが、前奏を聴いてすぐにわかりました。
雪組公演を観に行かれたのですね!
感想…感じてらっしゃることは私も思いました。
トップコンビの歌の上手さ、セリフの明瞭さが圧倒的で…他の生徒は滑舌や発声、歌のレベルが違いすぎる。
しかし、これは北翔海莉が星組トップ就任したときも思いました。ガイズ&ドールズのときの星組の滑舌の悪さ、発声のできてなさは驚きましたが、桜華に舞え!では気にならなくなり、阿弖流為の出演者に至っては全く問題を感じないくらいでしたから…。雪組全体がこれから底上げされていくでしょうね。楽しみです。
zukamenさん、宙組の和希そらはご存知ですか?小柄なのが惜しいところですが、北翔海莉、望海風斗とくれば、きっと彼女の芸には納得されるかな?と思います。今、研8なのでまだまだなところがありますが、ダンスがとてもうまい。そして、北翔海莉、望海風斗とは、声がいいところが共通しております。
実力派ですが、なかなか宙組では活躍のチャンスが与えられず…モヤッとする生徒さんの1人です。
椿さん、こんばんは。お久しぶりです。
和希そらという男役は確か僕が書いた以前の記事にも(というより映像に)出ていました。小柄ですが確かにキレのいいダンスですね。ウエスト・サイド・ストーリーではアニータ役をしているとネットで読みました。どこかで彼女の歌も聴けるといいのですが。