僕の頭の中ではまだ「LOVE&DREAM」の最後のシーン、シナーマンが鳴り響いています。
とにかく圧巻でした。会場の誰もが北翔海莉の歌に息を呑んだのです。劇団の意図なのでしょうが、スカイステージの初日映像やプルミエールなどでもその映像は全く公開されていません。つまり、「見て驚け」ということなのでしょうね。そして、その意図は見事に当たりました。
シナーマンとは英語でSinnerman(つまり片仮名のシではなく実はスィですが)で、「罪びと」という意味です。20世紀初頭に歌われ始めた黒人のゴスペルで、冒頭の呼びかけ「罪びとよ…どこに逃げようとしているのだ」でもわかる通り教会で人々に罪の懺悔をうながす曲として使われていました。
そして、黒人歌手ニーナ・シモンの1960年代の代表作ともなった曲です。このバージョンが(少々長いですが)1番知られていると言ってもいい大ヒットでした。
ただし、日本ではこちらの「My Baby Just Cares for Me」のほうが有名かもしれません。元々は彼女のデビュー・アルバムの1曲ですが、1980年代のシャネルのコマーシャルに使われて、リバイバルの大ヒットにつながりました。
さて、シナーマンに戻りますが、この曲は実に様々な映画やドラマにも使われています。例えば最近では英国TVドラマ「シャーロック・ホームズ」でもBGMとしてシーズン2と3で流れています。
もっと有名なところでは1999年の「トーマス・クラウン・アフェアー」ですね。ピアース・ブロスナン演じる美術品窃盗を「趣味」とする大富豪と彼を追う保険会社調査員の恋のお話です。保険調査員のレネ・ルッソは当時すでに45歳ですが、いや何ともセクシーでとうてい20代の女性にはかなわないオーラをかもしだしています。ストーリー自体もスタイリッシュで僕の大好きな映画のひとつです。
実は1969年「華麗なる賭け」のリメイクですが、こちらのほうがはるかに素敵な作品に仕上がっています。オリジナルはスティーブ・マックイーンとフェイ・ダナウェイのディープキス(キスのあとにまだ唾液が繋がっていてキラキラと…)だけが話題になりました。
「トーマス・クラウン・アフェアー」の挿入曲は、主人公が美術品を華麗に盗む場面に効果的に使われていました。編曲ですので、手拍子がその場の手に汗握る緊張感にとてもよく合っています。
宝塚では、鴨川清作の作品「ノバ・ボサ・ノバ」の1971年初演で初めて使われました。
当時声楽専科だった真帆志ぶきがソール役です。残念ながら残っていないようです。
舞台はものすごい迫力だったと思います。見てみたかったですねえ…。
真帆志ぶきの歌声は独特の声量と音域で、たぶんこの曲も彼女のために挿入されたものでしょう。僕は数年後の彼女の舞台をギリギリで見たことがありますが、やはり舞台映えのするとても素敵なひとでした。あのころも「スータ〜ン!!」という大向うは必ず飛びましたよ。
若い宝塚ファンはたぶん100周年記念のときにOG舞台での少々足元のおぼつかない81歳のスータンしか知らないでしょうが、真帆志ぶきは確かに宝塚不世出の大スターでした。81歳と言えど、あの「背中で見せる男役の哀愁」はまだ健在でしたから。
(まだ本業のほうの仕事が大量に残っているので続きは次回へ…すみません)
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コメント
ヅカメン便り様。
いつも、私の知らない世界に連れて行ってくださりありがとうございます。
ヅカメン便り様と同じく新年早々仕事に追われていますが、教えて頂いた作品を検索してながら、感性を広げています。
スピードがついて行けていませんが、教えて頂いた作品を優雅に楽しませて頂いています。
忘れた頃になるかも知れませんが又暇があればお相手して下さいね。
本日も、超早出の出勤です。
とっち。さん、
ちょっとこのごろ宝塚にのめりこんでいます。やっぱり20年ぶりのナマ舞台が北翔海莉だったからかもしれません。ただし、仕事がおろそかになってはいけないので、何だかこのごろヤケに忙しく。
そろそろもう少しスピードを落とそうかと思っています。
いや、ネットとDVDでの観劇は続けますが、1週間に1回ぐらいの記事が適当かなあ、と。元々は自分のためのメモのようなものとして始めたブログなので、とっち。さんのように読んでいただけるひとがずっといてくれるなら励みになりますね!
これからもよろしく。
初めまして。コメント失礼いたしますm(__)m
こちらで昭和の宝塚スターさんの記事を色々と読ませていただき、詳しい内容に当時の公演の様子を想像しています。
「スーターーーン!」の掛け声、youtubeで複数聞きましたが、同じかたによるものでしょうか、絶妙なタイミングに感動します。
声が飛び交う大劇場に行ってみたかったです。
またぜひ眞帆しぶきさんや高宮沙千さんの公演のご感想をお聞かせいただけましたら幸いです。
こんにちは、benihaさん。
真帆志ぶきの大向うはいつも同じひとなのかどうかわかりませんが、確かに絶妙のタイミングです。歌舞伎でもそうですが、この大向うはタイミングがとても大事なので、それができるひとはよほどの通でなければならないと思います。真帆志ぶきが亡くなり、あの大向うのひとの「スータ〜ン!」は行き場を失ってしまいました。寂しいでしょうね…。
また昔の感想も書いてみたいと思っています。