礼真琴の全ツ「アルジェの男」を観て、新生星組の始まりを感じる年の暮れ

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星組「アルジェの男」は今まで初日映像を観ただけでした。

星組全国ツアー「アルジェの男」の初日映像で礼真琴の大羽根を見る
星組全国ツアーの初日映像があがっていたので、ワクワクして観ました。 あれ?僕はこの展開の話を一度観たことがあると思い出しました。Wikipediaで調べてみると初演は東京宝塚劇場には来ていないので、再演のときの峰さを理ジュリアンでしょうか。...

 

さて、遅ればせながらやっとBlu-Rayを手に入れて観始めましたので、少し感想を書いてみたいと思います。全国ツアーの舞台は大きさも違いますし銀橋もありませんから、少々東京の劇場とは異なった印象を受けました。

 

名作「アルジェの男」の初演と変則的な2度の再演

「アルジェの男」は1974初演の柴田侑宏の名作です。「赤と黒」のジュリアン・ソレルが下敷きとしてあると思われますが、ここでは第二次大戦前のフランス領アルジェリア首都のアルジェで生きる、スラム街の孤児ジュリアン・クレールとなっています。総督の助けを得て野心を次々と叶えていきますが、その先に待っていたのは挫折と死という悲劇です。

1974年の初演は宝塚大劇場のみでした。昔はこんなふうに東京公演は全ての組と公演が舞台にあがるわけではありませんでした。このときは、鳳蘭がジュリアン、そして奈緒ひろきがサビーヌです。

さて次の公演は1983年、そしてこのときの「アルジェの男」は東京宝塚劇場のみの公演でした。昔はこういうこともあったのですね…。峰さを理のジュリアン、そしてサビーヌは姿晴香です。懐かしいです。この当時、まだ僕は時々東宝劇場で観劇していたのですが、この公演を観たかどうか定かではありません。

映像が某所に残っていましたので懐かしく観ましたが、それでも記憶は呼び起こせませんでした。第一幕最初の部分だけでしたが、峰さを理はダンスはどちらかというと苦手だったのでは?という印象です。日舞は非常に美しかったし、歌も大変上手かったのですが。

そして、1984年にはまた峰さを理のジュリアンで全国ツアーが実施されています。今では非常に珍しい「東京公演のみ」と「次の年に同じ演目で全ツ」となっていました。

 

2011年の霧矢大夢から2019年の礼真琴へ

僕は今回どちらの「アルジェの男」も観ています。
2011年は霧矢大夢のジュリアンに蒼乃夕妃のサビーヌ、そして2019年今回のジュリアンはもちろん礼真琴、そしてサビーヌは音波みのりでした。

幕が開くと、それはもうほとんどウェストサイドストーリーのような下町の雰囲気で、群舞もとてもよく似通っていました。

そこにパッとライトがあたって、赤い革ジャン姿の霧矢大夢または礼真琴が現れます。この2011年と2019年の演出はほとんど同じでs

「やってねえのはタタキとコロシ」とはまたすごいです…。
たたきはしのぎの一種。つまり収入を得るための手段が「しのぎ」で「たたき」は強盗のことです。こんな言葉はもうすでに一般的じゃないと思うのですが…。峰さを理がジュリアンの時代なら皆すぐに理解できたと思いますが、今の若いひとたちはすぐにわかったのか少々疑問に思いました。言葉自体が古いですよね。

そして霧矢大夢。歌もダンスも芝居も無難にこなしていて好感が持てますが、いかんせん彼女は下町のチンピラにするには上品すぎます。もちろん出世してからの立ち居振る舞いなどは完璧なのですが、最初のころのチンピラがどうも似合っていませんでした。

その点礼真琴の「チンピラ感」は、その童顔のせいなのか、世をすねた雰囲気がとてもよく出ていたと思います。また、歌・ダンスはもちろんのこと芝居も阿弖流為のころから非常にうまくなってきていて、安心して観ていられました。

歌は言わずもがな。安定した音程と伸びやかに広がる歌声にうっとりとしたことを付け加えておきます。「ESTRELLAS〜星たち〜」のほうはまだ観ていませんので、こちらも楽しみです。

礼真琴は普段のイマドキのギャルという雰囲気とそれとは対照的な低い声も魅力ですが、それが舞台となると今度は技術ばかりが称賛されていて、肝心の華についてはあまり言及されないのが不思議です。チンピラとしての「悪いヤツ」の表情などは最高だと思いました。

童顔で高身長ではないので損をしている、という意見も度々目にしましたが、僕は彼女が出てくるとそれだけで舞台が明るくなるような気がします。

「阿弖流為」の重厚な役、そして「アルジェの男」の栄光と挫折を味わう下町のチンピラを経て、さてこれからどんなふうにトップ男役としての約幅を見せてくれるのか、楽しみでなりません。

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音波みのりのサビーヌと愛月ひかるのジャック

こんな美しい娘役がいたのですね…と思いましたが、どこかで見たことがあると記憶(とWikipedia)をたどってみたら、七海ひろきが竹中半兵衛のときに濃姫を演っていた娘役でした。あのときは日本物の化粧と衣装だったので気づきませんでした。

歌が少々弱いような気がしますが、それでも芝居でのひたすらジュリアンを想うサビーヌを好演していました。「ミー・アンド・マイガール」のときのサリーのようですね。

そして、あの妖艶なダンス。様々なブログでかなり称賛されていましたね。僕は技術的には上手だと思いましたが、それ以下でもそれ以上でもないように感じました。

それは蒼乃夕妃のダンスを覚えていたからです。
音波みのりと比較にならないくらい迫力のあるセクシーなダンスでした。たぶんとても身体が柔らかいのでしょう、足が顔につくほど上がっていますし、音波みのりのときはなくなっていましたが、6人の男役が床に並んでゴロゴロと彼女を送っていき、最後に素晴らしいでんぐり返し(というのかどうかわかりませんが)をしていてビックリしました。身体の柔らかさも素晴らしかったです。

音波みのりもがんばってはいましたが、型どおりという印象しか受けませんでした。

 

そして、愛月ひかる。
僕は恥ずかしながら彼女の芝居を初めて見ました。どうしようもないワルという役は大柄な身体と凄みのある声で適役だったのではないでしょうか。あくまでもカッコいいので出てくると目が離せませんが、それでも嫌なヤツだとため息が出て早く行ってくれないかと思います。そして、いなくなるとまた次の出番を心待ちにしてしまいます。そんなカッコいいワルを、愛月ひかるは実にうまく表現していました。

短期間の専科滞在から、この全ツ公演のあとすぐに星組への配属が決まったということで、これは皆予期していなかった劇団の決断と思われます。つまり、全ツで星組での立ち位置が好ましく、そして違和感なく受け入れられたからでしょうね。かなり異例ですが、礼真琴を助けて星組の中堅男役として活躍してもらいたいと思いました。

 

余談ながら…撃たれ方の「美」に舌を巻く

最後になりましたが、愛月ひかるも礼真琴も「撃たれ方」が実に上手です。

ダンスでもないのに、どちらの場面もまた戻して3回ずつ見てしまいました。愛月ひかるはあまり派手ではなく自然に2度撃たれてソファの裏側に崩れ落ち、そのまま動かなくなります。

礼真琴の場合は、やはり主人公の最後ですから一度撃たれて「なんだ、ウソだろ…」という表情のまま、2発目と3発目で右と左に衝撃を受け、そして最後の4発目で正面を向き崩れ落ちます。いやはや、巧みな演出です。

 

さて、次の星組公演は僕にとってはブルーレイの「ロックオペラ・モーツァルト」です。ナマの公演を観ているファンたちより半年ほど遅れるのが玉にキズですが、それでも礼真琴をしばらく追ってみたいと思う今日このごろです。

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