日本ではもう様々なメディアで取り上げられている、宝塚OGによる「CHICAGO」のニューヨーク・オフ・ブロードウェイ公演。ヅカ友さんが親切にも色々なリンクを送ってくださったので、僕も少々どんなニュースになっているのか見ることができました。
スタンディングオベーションが出るほど現地のひとたちの評判も良かったとのこと。しかし、日本人ファンも大挙して押しかけたことを思うと、本当の現地の評判は現地の批評家が書いたものを英語で読んでみなければわかりません。
ニューヨークの劇評は日本の「何でもかんでもスバラシイ」としか書かない新聞などと違って、かなり手厳しい記事もあるからです。ですから、初日が終わって次の日の朝、舞台関係者たちはまず新聞を買って劇評をチェックするというのが普通です。
僕がチェックしたのは、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙の7月21日付記事と、ガーディアン(The Guardian)紙の同日記事です。どちらも署名入りで誰が書いたか一目瞭然、こちらでは批評家自身も批評されますから署名は大事なのです。
ニューヨーク・タイムズ(New York Times)
“In Takarazuka’s ‘Chicago,’ the Midwest Looks a Lot Like Japan”
英国英語のことわざを持ちだしてあいまいに「成果の上がらぬ試みだった」とまず書いています。厳しいですね。
目の超えたニューヨーカーたちにとって、この宝塚ヴァージョンはそれこそ何度もオフ・ブロードウェイで繰り返し上演されているCHICAGOと同様の舞台装置、衣装、照明、演出で、なんの目新しいこともない舞台ということなのでしょう。下調べはしていたようで、宝塚がどんな舞台を提供していたかということを並べ、そうした最近の新しい舞台へのアプローチではなく、なぜニューヨークに持ってくるのがCHICAGOなのか、と問いかけています。
「日本語で上演されているのだから」という目新しさは、オリジナルのウィットに富んだ辛口の歌詞などを字幕の英語に頼らなければならないという「めんどくささ」にかき消されてしまったようです。つまり、例えて言えばあの有名な林芙美子の舞台「放浪記」をアメリカ人たちが衣装もそのまま英語で上演し、日本の赤坂ACTシアターに持ってきて日本語字幕付きで僕たちが見るということです。
ただし、パフォーマンスに関しては褒めています。何十回となく観た本場のCHICAGOと比較できる批評家が、和央ようかのヴェルマと朝海ひかるのロキシーの対比が上手く表現されていると書いていました。でも彼が本当に舌を巻いたのは、峰さを理のビリーフリンが朝海ひかるのロキシーを膝に置いて、ビリーとロキシーの声を使い分けて絶妙な芸を見せたことでした。
朝海ひかるが初日に側転を失敗してしまったことまで書かれていました…よく見ていますね。
フォッシースタイルの動きについては、彼女たちは腰の振り方、手首のうねりなどよくやっているが、それはどちらかというと「フォッシーを柔軟剤に漬けてしまったような印象」だったようです。つまり、ダンスの振りはよく勉強しているが、肉体を極限まで見せつけるというフォッシースタイルのしたたるような色気が十分に表現されていないということでしょうね。宝塚OGダンサーたちへのこれからの課題とも言えます。
彼にとって1番楽しかったのはミュージカルが終わってからの15分ほどの「宝塚レビュー」だったそうです。
キラキラと輝く夢のような舞台で懐かしい名曲や宝塚の楽曲が9曲も披露されたということで、ロケットやタンゴのダンスとともにかなり「宝塚風」のフィナーレだったようです。
それでも宝塚のCHICAGO自体はまだそれほど心に残るものではなかったらしく、「そのためには日本に行ってもう少し他の有名な宝塚の舞台を観なければね」と最後に書いています。
全体的には数年前の米倉涼子のシロウトすれすれのロキシーについてよりは、かなり好意的な批評と言えます。米倉涼子の場合、僕も映像を観ましたがあれはどう観てもミュージカルの域に達していませんでした。
しかし、ロケットまで披露したというそのフィナーレ、僕がKAATで観た時には「すみれの花咲く頃」しか見せてもらえませんでした。ロケットは…レディースとジェントルメンが当然ダルマになったのでしょうが、いや見たかったなあ…。
ガーディアン紙の批評も好意的でしたが、詳細は気が向いたらということで。
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コメント
ヅカメンさん
以前に外国人枠チケットについてコメントさせて貰ったフラワーです。 私、只今ニューヨークにおります。 もちろんシカゴを見る為にやって来ました。 ヅカメンさんがおっしゃる通り、こちらの評判はボチボチで、今日は中3日目ですが、キャストがトリプルで、その日によって実力に多少の差が出てる事を指摘されています。 残念ながら、当日券は全て半額になってます。
フラワーさん、こんにちは。
そうですか、宝塚OGシカゴのためにニューヨークへいらしたんですね!
宝塚に再度はまり始めてから、よく日本の宝塚批評も目にするのですが、決まって「褒めちぎり」なんですよね。もう何から何まで。あれでは演出も役者も批判を受け取って向上しようという気にならないのではないか、と心配なくらいです。変わって米国やオーストラリアの新聞で批評を見ると、細かく観劇しているのがわかるほど色々と批評しています。「褒めちぎり」はほとんどないのですが、日本は違うのかなと思っていました。
だから、日本のニュースでシカゴがスタンディングオベーションでものすごい人気、というのを見て少々疑問になりました。英語批評をみたら案の定でしたから。
その日によって実力に差があるというのはわかります。歌えないひとが出ていますから。僕は湖月わたるの歌もあまり評価していなかったのですが、それが結構よかっただけに、さて他のキャストはどうだったのかと思っていました。
当日券が半額…やっぱりそうなんですね。日本のミュージカルはもう少しがんばらないと。
先ほど長々と感想を投稿させていただいたのですが、反映されてないのは、承認制ってことでしょうか、それとも長すぎたのかな?
日本のメディアがいつもほめそやすのは、メディアとタイアップしてることが多いのと、日本の読者が、日本の何かがアメリカでウケたというのを読みたがってるからです。日本人はアメリカや白人対してコンプレックスが強いので、アメリカや白人に受け入れられたという記事を読みたがっている、だからメディアも、そういう記事ばかり出してる(それのほうがウケるので)、真実がどうあれ、ってことですね。
blueさん、こんにちは。
探してみましたが、blueさんからはこのコメントしか来ていませんが…。「長々と感想を投稿…」と書かれているので、読めなくてものすごく残念です。
はい、承認制にしました。
読みたくないコメントが来ることがあるのでそのままゴミ箱行きができるように、です。
日本のメディアですが、どうなんでしょう。
オーストラリアでもコテンパンに叩きのめす批評とか出ますが、日本ではみたことがありませんね。でも褒められてばかりいたら、どこをどう努力しなければならないのかわからないと思います。今回のシカゴについても、初日の「大盛況」以来なんのニュースも日本語では入っていませんよね。英語の劇評はネットで探しただけでもゴマンとあります。それだけ注目は集めたということですが、そこにももう少し日本のメディアが関心を持ってほしいと思いました。
8行ずつくらいに分けて送ろうとしたのですが、どうしても「不正な投稿だと判断されました」と出てしまいます。何が悪いんでしょう?
個人的感想としては、清く正しくで育った元宝塚女優たちでは、頑張ってるのはよくわかりましたが、この作品の猥雑なエネルギー感が表現しきれてなくて、いまいちだったと思います。ワタさん、コムちゃん、ズンコさん、3人ともスレっからし感なさすぎ。
意外とよかったのが、かんちゃんさま。あんな役がおできになるとは、思ってもいませんでした。唯一、ちゃんとヤサグレ感を出してた。
観客は、普通のブロードウェイの客とはちょっと違いましたね。若い子たちは、アニメとか好きそうなオタク系が多かった。それとゲイやレズのカップルやグループも多かったです。3分の1ほどがアジア系でしたが、その半分以上は、非日本系のアジア人。つまり、日本人は2割くらいかそれ以下でした。これはすごく大きいことです、日本人客に頼らずとも、客が入ったということなのだから。
大浦さんの時は、日本経済のいい頃で、日本から大ツアーを組んで、ファンを大量動員したり、日本企業の駐在員とその家族を招待したりして、席を埋めたんでしょうが、今回そういうのに頼らず、あれだけの大きさの劇場が6回埋まったというのは、半額券が出ていたということを考慮しても、快挙じゃあないでしょうか。お客さんの反応もすごくよかったですよ。
大浦さんの頃と比べると、日本文化への関心が高まっていますからね。これは今後が期待できると思います。日本の芸能人のアメリカ進出は、人種と英語の壁に阻まれて、ほぼ不可能だったんです。なにせ黄色猿の芸にお金を出して見に来るやつはいなかったってことですよ。昔のピンクレディのアメリカ進出もそうでしたし、米倉涼子も多額のお金出して買うわけです、テレビの番組やミュージカルの役を、恥知らずにも。それをやることで、日本で名前に拍がつくから。
今回の招聘は、誰がどういう意図で企画したかというのが、よくわからないのですが、少なくとも、普通の宝塚の海外公演のような、大損覚悟で、日本での箔付けのためにやるというのとは、少し違っていたんじゃないでしょうか。過去のヨーロッパでの公演などを見たわけではないので、一概には言えないですけどね。
かなり、色物として興味をひいたというのは間違いないです。男装女装芸能の伝統のないアメリカでは、そういうのはすぐ同性愛的なものだと見られてしまうわけですし、実際ゲイやレズビアンだとすぐわかるような人たちも多かったので。それでも、在ニューヨークの日本企業に招待券ばらまいたりしたのではなく、アメリカ人のお客が入ったというのは、やはり大きい。ま、由緒あるリンカーンセンターのフェスティバルの一環だったことも大きかったとは思いますけど。
今回、この組み合わせのキャストを選んだのは、ズンコさんの歌唱力に期待したから。みねさんも現役のころは素晴らしかったんですが、ちょっともう声量落ちたかなって感じだったので。でもズンコ・ビリーは、歌はよかったですが、役作りと演技は、宝塚の男役以上でも以下でもなかった。これなら、峰ビリーのほうが良かったのかも。でも結局、日本の場合は、お客は宝塚のファンが主でしょうから、このくらいの役作りのほうがいいんでしょうね。ワタさんとコムちゃんの歌唱は期待してなかったので、意外と良かった。2人ともニューヨークのお客さんに喜んでもらおうという意気込みがすごく伝わってくる演技で、それだけでも観客は満足したんじゃないでしょうか。ただ厳しく言えば、3人とも、シカゴという演目をやるための、すれっからし感、狡猾さ、どんな汚いことをやっても生き抜いてやるという貪欲さが感じられない。
blueさん、こんにちは。
投稿できないとのことでしたので、僕も一旦ログオフしてから匿名で長いコメントを書いてみました。50行ぐらいありましたが、コメント投稿できました。変ですね…どうしてblueさんのはダメだったのでしょう。
とにかく、そんなこんなで承認制は今のところホールドにしてあります。イチイチ承認するのがめんどくさくなりました。所詮僕はズボラなのかもしれません。
blueさんのコメントですが、ありがとうございます。NY観劇にお詳しいとお見受けしました。
観客が喜んで宝塚を知ってくれたということは僕も評価していいと思います。ただ、なぜシカゴなのかという疑問も残りますが。もっと宝塚らしい、清く正しく美しい演目でもよかったのでは、と感じました。
僕が横浜KAATで観たのは、姿月あさと、湖月わたる、杜けあきのヴァージョンでした。
その感想はすでに記事にしましたが、姿月あさとはやはり芝居に関してはあまりにも淡々としていてビリーの貪欲な雰囲気があまり出ていないように感じました。初風諄のママモートンも見てみたかったですねえ。残念です。
フラワーさん、blueさんのコメント、凄く良かったです。
ごめんなさい、それだけ…。