1979年実写映画「ベルサイユのばら」デジタルリマスター版を観て

宝塚あれこれ
画像引用元: http://www.happinet-p.com/jp3/special2/1710_bara/
スポンサーリンク

 

若い人たちは知らないかもしれませんが、「ベルサイユのばら」には1979年に日本公開になった実写映画版があります。

実は僕はこのVHSビデオを持っていましたが、すでにビデオを見られる機器もなく、今回このデジタルマスター版が出たというので購入してみました。

 

created by Rinker
コロムビアミュージックエンタテインメント

 

懐かしい、ものすごく懐かしいです。
そして、デジタルで修正された映像は鮮明で色彩も古さを感じさせなくなっていました。

 

本物のベルサイユ宮殿での撮影という豪華さ

僕がまだ日本にいた時ですから、実はこの映画のことはよく知っています。

まずはスポンサーとして資生堂がバックにいましたから、主演のオスカル役を射止めた新人カトリオーナ・マッコールを起用して「劇的な、劇的な、春です。レッド」というキャッチフレーズでコマーシャルを作っていました。今でもそのいくつかをYouTubeで見ることができます。

さて映画そのものですが、監督は「シェルブールの雨傘」で有名なジャック・ドゥミ、そして彼のフィルムでは必ず音楽を担当しているミッシェル・ルグラン。この二人がいれば興行的にも成功するはずだったのですが…日本以外ではイギリスの映画館で短期間上演された以外はビデオに直行だったそうです。

池田理代子が字幕を担当していますが、原作とは全く違うラストによく妥協したものだと感心しました。ラストどころか様々な設定が変更されており、どうも僕たちのよく知る「ベルサイユのばら」とは違うものとして観たほうがよさそうです。

長編漫画をこの2時間の映画にまとめるのは大変だったでしょうが、宝塚で大成功したことを考えると、脚本のミスと言うほかはありません。原作は全て翻訳されて英語を話すスタッフに渡されていたそうですが、それも原本しかなくて映画ができるまでに紛失してしまいました。監督のジャック・ドゥミが脚本も担当していますが、その翻訳を読んでいないのではないかと昔初めて観た時にも疑問でした。

それでも、この映画は全てロケで制作されていますし、フランス政府の協力を得てベルサイユ宮殿まで撮影に使われています。衣装も宮殿も言葉につくせぬほど素晴らしいと思いますし、音楽もミッシェル・ルグランの美しい調べが印象に残ります。キャストもまさに「ベルサイユのばら」から抜け出てきたような美しい白人たちばかりです。

 

スポンサーリンク

 

キャストは全員が白人だった

資生堂が協賛でしたから、主演のカトリオーナ・マッコールの化粧はとても美しくて、当時の常識だったのか青いアイシャドウもきれいに塗ってありましたし、赤い口紅も印象的です。

あまりにも完璧に塗ってあって、僕などは「お人形さんみたいだ」と思った覚えがあります。どの場面の立ち姿も素晴らしいですし、特にドレスになったときなどはまさに「フランス人形」でした。そして、それだけに軍服姿のオスカルはどちらかというと女性的で、あの凛々しく男勝りの長身オスカルとはかけ離れていたように思います。

彼女が表情に乏しいことも相まって、その美しさだけが強調されて日本以外ではあまり評判にもなりませんでした。「ベルサイユのばら」のオーディションで選ばれた無名女優でしたが、その主演映画の失敗でB級女優というカテゴリーになってしまったのか、その後の彼女は何本かホラー映画にしか出演していません。

マリーアントワネット役のクリスティーネ・ベーム(Christine Boehm)もつんととがった鼻と魅惑的な唇をもつ女優で非常に美しく、マリーアントワネットと同じオーストリア人でした。
残念ながら、日本で映画が公開されたその同じ1979年春にイタリアでハイキング中に不慮の事故で亡くなっています。まだ25歳でした。

フェルゼン役のジョナス・フェルシュトロームはやはりフェルゼンと同じくスウェーデン人です。こうしてみると、配役はその点も考えて作られていたようですね。

最後にアンドレ役のハンサムな大男バリー・ストークですが、こちらも「ベルばら」後の作品は鳴かず飛ばずで、1985年を最後に俳優を辞めてしまいました。

 

現在のカトリオーナ・マッコールのインタビュー

BDには2017年のカトリオーナ・マッコールのインタビューも収録されていました。年取ったなあ、というのが第一印象。そりゃそうです。あのころ大学生だった僕だって初老ですから。

彼女の話で気づきましたが、フランスの名優ランベール・ウィルソンが出ていたのですね。今回見て彼の若い風貌を確認しました。自らの剣を売り払いオスカルに「魚に食われた」と言い訳をするどうしようもない衛兵隊員として登場しています。さしずめ緒月遠麻のアランと言ったところでしょうか。
彼の父親ジョルジュ・ウィルソンもオスカルの父親ジャルジェ将軍役で出演していました。

こうして見ると、このウィルソン親子以外はほとんど無名のまま終わってしまった俳優たちが揃っています。

 

それでも観ておいて損はない映画だと思う

もうひとつのこのBDのおまけとして、1980年にテレビの「水曜ロードショー」で放送された時の吹替版が収録されていました。オスカルの吹き替えはなんと汀夏子。アンドレ役はベテランの堀勝之祐です。

カトリオーナ・マッコールの声が、いきなり懐かしい汀夏子になってしまってびっくりしましたが、これもまた何となく宝塚的雰囲気になっていて興味深かったです。

いずれにしろ、漫画と宝塚の舞台を熟知しているファンたちには、その時代を切り取った歴史的映画として楽しく観られる映画だと思います。また、オスカルの生きた時代の雰囲気を実写で観られるという感動もあります。
お時間がありましたらぜひ一度はご鑑賞を。

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村ランキングに参加中。クリックしていただけると嬉しいです。

コメント