東宝「エリザベート・ガラ・コンサート」ー稔幸、白羽ゆり、凰稀かなめ、そして美穂圭子

退団後のジェンヌたち
画像引用元:http://www.umegei.com/elisabethgala20/report.html
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宝塚OG(と現役生が数名)で構成されたコンサートの中でも、懐かしかったのは稔幸。
僕は彼女がまだ駆け出しのころから売れ始めたころまでしか見ていませんでしたから、その懐かしい名前を見るまで彼女がフランツ・ヨーゼフを演じていたことも知りませんでした。

少し調べてみたら、すでに結婚されて中学生になるお子さんもおられるとか。ネットで見かける写真は男役だったころの影もない成熟した美しい女性ですが、舞台に立つ姿はさすがトップだったひとです。現役のころから「星の王子さま」と言われていたそうで、その気品のある姿と歌声は今も健在でした。昔から声は高いひとでしたから、男役の声というより今では女性の美しい地声と言ったほうがよさそうです。

やはりあくまで「コンサート」ですから、歌を歌うだけで精一杯のようにも感じられましたが、フランツ・ヨーゼフの青年から壮年時代は、優しく気弱な性格がよく現れていました。男役は久しぶりなのに、そんな貴公子役はまだまだやれそうな風情です。老年に入った「夜のボート」ではしみじみと歌い上げ、すれちがうときにシシィをそっと振り返りました。こうした数秒で深い愛と未練を表現したのでしょう。他の「エリザベート」もほとんど映像で見ましたが、そのように立ち止まって振り返ったのはこのガラ・コンサートでの稔幸のフランツ・ヨーゼフだけでした。

カーテンコールでは「もうこれで男役としては思い残すことはありません。これが最後です」と忠臣蔵が退団公演だった杜けあきの有名なセリフのようなことを言い、皆を微笑ませていました。いやいや、まだもう10年、30周年もできそうだと僕は思います。

さて、白羽ゆりのエリザベート。
第一幕の少女時代ではそれほど印象が残りませんでしたが、その後婚約から結婚に入るころから段々と光り輝いてきて、あの第一幕の終わり、有名な純白の衣装で階段上に立つ姿は誰もがため息をつくほどの美しさでした。「私だけに」での歌も危なげなく力強い歌声で、僕は不覚にもその美声に涙がにじんで困りました。

いつもひとつ書く「余談」ですが、今回はエリザベートのドイツ語のニックネーム「シシィ」について。
ドイツ語ではSissiと書きます。つまりドイツ語読みのカタカナ書きをすると正しくは「シィ」です。Sがひとつだと濁音なんですね。そしてふたつだと清音。ですから、フランツ・ヨーゼフの母親ゾフィーは正しく発音されています。ルケーニは英語読みのルキーニ、ジシィも英語読みのシシィ、そしてゾフィーだけは正確なドイツ語読みで、僕がちょっと名前については混乱しているのがおわかりいただけたかと思います。

さて、成人したルドルフ役は、凰稀かなめです。
初めてナマの舞台で見る元トップでしたが歌よりも何よりも、このひとは美しい。立っているだけで見とれてしまいました。軍服も非常によく似合い、若く儚げな薄幸の皇太子をよく表現していました。このひとはこの役のために髪を金髪に染めたのでしょうね。ガラ・コンサート直前の写真では茶色の髪でしたから。彼女といい、長い髪をバッサリと切ってしまった稔幸といい、このガラ・コンサートにかける意気込みはどの宝塚OGからも感じられました。

そして僕が口をぽかんと開けてしまったほど妖艶な美穂圭子。ルキーニを演じる湖月わたるの同期です。マダム・ヴォルフを20年前に演じたときよりはるかに円熟した仕草とパンチのある歌声。これはこのひとの当たり役ですね。湖月わたるとの掛け合いも宝塚若手にはない色気があり、絶妙な間合いと視線で僕たちを「宅配の世界」に誘ってくれました。

しかし、何という贅沢なコンサートでしょうか。
OGとは言え、元トップ男役娘役脇役に至るまでかつて名の知れた実力者たちばかりです。これは10年20年たってもまだ舞台に立てるようなひとたちを産み出す宝塚の功績と言わざるをえません。

前記事にも書きましたが、この「ガラ・コンサート」が「コンサート」ではなくフルバージョンのミュージカルとして舞台になることを願ってやみません。あのCHICAGOのように。

 

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コメント

  1. くりきんとん より:

    はじめまして。いつも楽しく拝読させていただいております。
    LOVE & DREAM といい、このガラコンサートといい、
    私にはご縁のなかった公演を観劇なさったZUKAMENさんが
    実にうらやましいです。
    特に、姿月あさとのトート、白羽ゆりのシシィ、
    美穂圭子のマダム・ヴォルフは生で観たかった。
    DVDに収録されているとうれしいのですが。
    ところで「シシィ(Sissi)」の発音のことですが、
    一昨年、東宝エリザを観劇したときに実は私も気になって、
    ちょっとネットで調べてみました。
    どうやら、シシィの故郷のバイエルンやオーストリアでは、
    Sの後に母音が来ても濁らずに清音で発音されるらしいのです。
    スペルも、最初はSisiと本人が署名していたのが、いつからか
    Sissiと署名するようになったとか。
    もしSisiを忠実にドイツ語読みしたら「爺」になってしまう、
    などとと思ってしまいました。
    まあ、ネットで得た情報ですから、どこまで正確なのかは
    わかりませんが、ご参考までに。
    これからの記事も楽しみにしております。

  2. zukamen より:

    くりきんとんさん、こんにちは。
    この「エリザベート・ガラ・コンサート」はDVDになるということで、僕はあの人混みの中の会場では予約しませんでしたが、ネットで予約しました。
    何が入っているのかお楽しみですね…ただし、僕が観たフルコスチュームは入っていないようです。
    美穂圭子のマダム・ヴォルフは圧巻でしたよ。声量がすごかってですし、何よりも湖月わたるとの「オトナの堕落」を表現していて、娼婦の館のマダムにふさわしい貫禄でした。これは宝塚現役では彼女ほど「らしさ」を見せられるひとはいないように思います。
    ほう。オーストリアでは清音なのですね。情報をありがとうございます。
    ただし、それなら「ゾフィー」も「ソフィー」にしてほしかったですね。。。どうも発音がごちゃ混ぜになっているという印象です。