柚希礼音を見たのは、彼女の退団公演「黒豹の如く」が初めてでした。その後は皆さんご存じのとおり、北翔海莉がトップとして短い間君臨しましたが、僕はその前の柚希礼音時代も大変気になっていました。
今回やっと2013年の「ロミオとジュリエット」を観ましたので、その感想を書いてみたいと思います。
フランスミュージカルの熱気と迫力
宝塚では最近フレンチミュージカルが多いですね。というより、実は宝塚がフレンチミュージカルを日本に紹介したと言っても過言ではありません。
世界ではブロードウェイミュージカルが主流で、今までフランスのミュージカルというものが世界に向けて発信されたことはあまりありませんでした。それをいち早く取り入れたのが宝塚の「ロミオとジュリエット」でした。先見の明があったと言うべきかもしれません。
フレンチミュージカルはブロードウェイ・ミュージカルと違い、歌手とダンサーが完全に分かれています。これはフランス発祥のグランド・オペラを踏襲しているようで、ビゼーの「カルメン」などがその代表作です。歌手は歌のみを歌い、ダンサーはダンスのみを披露するというフレンチオペラの特色です。
ブロードウェイでは皆「歌も歌えばダンスもする」という形なので、宝塚と似ていますね。
フレンチミュージカルの舞台では、「群舞」と「合唱」の熱気と迫力が観客に迫ってくるように思います。それはどちらにもプロのひとたちを配しているからなのでしょう。
確かに宝塚の舞台は美しく、群舞も合唱もこの「ロミオとジュリエット」で感動が劇場を満たしていたことと思います。ただし、ソロの歌となると音程の不確かな生徒さんたちも歌っていますし、オリジナルの舞台でのソロとは少し差が出てしまっていることは否めません。
それでも、その歌の不確かさを補って余りある芝居心とセットの豪華さ、そして衣装などの「一体感」がこの星組版の「ロミオとジュリエット」の魅力でもあります。
有村淳の衣装の斬新さに改めて驚く
フランス版の衣装も見たことがありますが、それほど記憶に残っていません。つまり新しい雰囲気ではありますが「普通」だったのです。
宝塚版では有村淳の担当で、また素晴らしいアイデアの衣装を見せてくれました。「また」というのは彼がデザインした「1789」や「カサノバ」の衣装デザインで、僕が熱心に観ていたころの30年前以前とは全く違うことに気づいたからです。
細部に至る美しいデザインとその思いもつかない素材の選択など、僕にとってはあまりに新鮮で目が離せません。時代考証はある程度目を通しているのでしょうが、ほとんど無視されているのも面白かったです。何と言っても、ジュリエットがミニスカートを履いていますからね…。
ティボルトの衣装とヘアスタイルはカサノバに似ていましたが、こちらは紅ゆずるのきつい目つきを強調した化粧で、ティボルトの人物像によく似合っていました。
「柚希礼音」時代の星組の魅力
以前七海ひろきが「星組は『さあ、オレについて来い!』というオラオラ系が多い」というようなことを言っていましたが、これはもしかしたら長期に渡ってトップとして君臨していた柚希礼音の星組だったのではないかと思います。
その後にトップとして入った北翔海莉はかなり短期でしたので、影響を及ぼすまでには行かなかったでしょうし、紅ゆずるは生粋の星組っ子です。
つまり、その星組の伝統がまだ続いているのでしょうね。
柚希礼音と夢咲ねねのトップコンビは、その相性の良さと美しさと演技の幅で宝塚の代表的なトップとしても有名です。今回そのふたりの主役が引っ張るミュージカルとしてこの「ロミオとジュリエット」を観られてラッキーではありました。
そして、星組っ子たちがこのコンビを慕い、一丸となって舞台をつくりあげたところにこのミュージカルの成功があったのだと思いました。先に述べた舞台の熱気と迫力は星組の群舞と合唱の成果であり、映像で楽しむだけでも十分に感じられました。この舞台をナマで観ていたらどれほど感動できたことでしょう。
しかし、フレンチミュージカル。気になりますね。オーストラリアではほとんど上演されないので、ますます興味が出てきました。
キャスト感想は次の記事で。
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