2017年星組バウ「燃ゆる風 -軍師・竹中半兵衛-」で七海ひろきの演技力に触れる

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スカパーの時代劇専門チャンネルで始まった「華麗なる宝塚歌劇の世界」。その日本モノに特化した放送が7月から6ヶ月連続で始まりました。

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その最初の放送が七海ひろき主演の「「燃ゆる風 -軍師・竹中半兵衛-」だったものですから、スカパーなど観られない僕のような在外ファンは地団駄を踏むしかありませんでした。そんなわけで、アマゾン・ジャパンのストリーミング有料配信で発見したときにはとても嬉しかったです。宝塚歌劇もいくつか入っていますので、WiFiさえあれば気軽に観劇できるのが魅力です。

 

 

七海ひろきの人間味豊かな竹中半兵衛

豊臣秀吉の軍師として名高い竹中半兵衛ですが、その名声は次々と勝ち戦さを編みだす頭脳明晰な戦略家としてはもとより、人情に厚く命の重さを座右の銘とするその人間性にも惹かれます。黒田官兵衛の嫡子松寿丸を処刑せずに信長の命令にそむいてかくまったという逸話は本当なのです。
病にたおれ、陣中で息を引き取ったということですが、まだ36歳でした。

七海ひろきはどちらかというと着物と刀の武士より燕尾服の紳士のほうが似合うように思っていましたが、なかなか所作も美しい戦国時代の武士の姿を見せてくれました。青天の似合う男役では忠臣蔵の杜けあきが筆頭にあげられますが、七海ひろきもまた美しさの点では引けをとらないように思います。

作品自体は彼女のためにつくられたという構成で、ソロは主題歌一曲しか歌っていません。親しみやすい旋律です。ほとんどの歌を歌ウマさんたちに譲り渡すことで、返って七海ひろきが物静かな竹中半兵衛を描き出すことに成功しています。

また、武功をあげる武士としてより理性と人情のひととして生きた竹中半兵衛に重きをおくことで、七海ひろきの優しげな風情と一貫した命への思いをうかがわせていて、大変好ましい舞台となっていました。

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麻央侑希と悠真倫の存在感

織田信長に扮したのは麻央侑希
長身をいかした堂々とした傍若無人ぶりで、いかにも天下の信長らしいダイナミックで傲慢な性格を全身を使って表現していました。どうも今まではこうした役が与えられず、どちらかというとなよっとした雰囲気でしたので、僕にとっては少々意外でした。

惜しむらくはその発声ですね。
どうも内にこもる声質のようで、甲高さの残る発声が乱れるたびに少々危うげに感じました。

木下藤吉郎の悠真倫
物語の「語り」でもあり、重要な役どころの鷹揚で小人物的な性格を豪快に演じていて、安心して見ていられる実力、さすが専科とお見受けしました。ちょっとふくよかな体型で、美城れん、天真みちるなどのいい若手脇役がいなくなってしまった今、専科の若手脇役を演じられる男役としては唯一ではないでしょうか。大事にしていただきたいものです。

 

泣きどころ満載のストーリーにホロリ

僕のようにヘンに涙もろいジジイにとっては、この作品は実に満足の行くものでした。
いやいや、泣かせる場面がいくつも撒き散らしてあるからです。

第1幕ではもちろん三郎太を演じる天華えまの場面。こういうさわやかな青年をまっすぐに演じられるのは天華えまの若さだけではないようです。

そして第2幕では涙の大盤振る舞いでした。松寿丸の場面から始まって、半兵衛といねの別れの場面、濃姫といねの出会い、黒田官兵衛と松寿丸の再会などなど。天寿光希はコメディーからシリアスな芝居まで、いい脇役に成長しましたね。

そして、いい場面では必ず木下藤吉郎の悠真倫が滂沱たる涙とともに場を盛り上げていて、観客の涙をなおも搾り取っているように思えました。

 

いずれにせよ、「燃ゆる風 -軍師・竹中半兵衛-」は七海ひろきを中心に脇役たちが手堅い演技を見せていて、安心して見ていられる舞台となっています。もちろん「ミュージカル」としては少々物足りなさもありますし、キャストの少なさからか戦闘シーンも戦国時代の作品としてはあまり多くありません。

それでも、それを補ってあまりある迫真の演技、そして竹中半兵衛の「命の大切さ」を投げかけるテーマの重さとその一生に、観客には涙だけではなく何か温かいものを残した作品だったと言えるでしょう。

 

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