音咲いつきと言えば歌の上手い男役「だった」生徒さんだと思いますが、2017年に男役7年目で娘役に転向しました。なんて古い話だと思うでしょうが、まあ、日本から15000キロも住所が離れているとこういうことも起こります。
実は、彼女は僕にとっては男役から娘役になった過度期を初めて見た生徒さんなのです。2015年末あたりから細々と観劇を始めた僕でさえも、男役としての音咲いつきを星組公演やTV録画で目にしました。
「LOVE&DREAM」で初めて音咲いつきの歌の実力に驚いた
僕が初めて彼女を見たのは、なんと何十年ぶりかの宝塚観劇「LOVE&DREAM」でした。ノバ・ボサ・ノバの場面でソロを与えられていたときです。
そのことについては当時の記事にも書いています。
若々しい声が会場いっぱいに響き渡っていたのが、印象に残っています。当時のその星組公演は礼真琴を筆頭とするバウホール公演「ミュゲ」とこの「LOVE&DREAM」に分かれていましたから、人数もあまり多くなくて色々と若手にもソロが与えられているのだなあと思いました。
数十年ぶりの観劇ということで僕もかなり浮かれていて、ずいぶんと沢山の記事を書いたのを覚えています。
「マグノリア・ドゥ・タカラヅカ」の音咲いつき
当時まだ星組に在籍していた天彩峰里と小桜ほのかを両手に配して、「ファントム」などの歌を披露していたのが、音咲いつきでした。
タキシードもよく似合い、凛々しい男役姿です。
僕はこのときに彼女が小柄だとはわかりましたが、娘役転向など全く想像していませんでした。
骨太な芝居を見せた「軍師・竹中半兵衛」と「阿弖流為」
「竹中半兵衛」では明智光秀を演じていましたが、どちらかと言うと「ちょい役」程度で、他の歴史ものと違い織田信長を中心に置いているわけではないので、あまり印象に残る役ではありませんでした。
ところが「阿弖流為」では諸絞というかなり豪快で骨太な蝦夷・稗貫の族長役でした。セリフこそそう多くはありませんが、原作の諸絞よりかなり重要な役どころと言えます。顔をつぶして戦についていくところなど、涙を誘うエピソードでした。
彼女の発声の良さが表に出ていて、艶のある低い声が族長として負う責任感と義務を苦しげにたたえていました。お見事です。
そしてこの勇ましい諸絞の役を最後に、音咲いつきは娘役に転向してしまいました。
段々と男役から娘役になっていく…
男役10年、というのは確かに使い古された言葉ですが、それだけ男役の仕草や声を習得するには時間がかかるということだけはわかります。退団した宝塚OGたちが最初スカートを履くことさえ逡巡し、舞台ではホンモノの男性をリードしてしまったり、振り返り方が男性そのものだったりとかなり苦労しているようですし。
今までも男役から娘役に転向した生徒さんたちは沢山いますが、それでも多いのはやはり入団後2−3年で転向が多く、音咲いつきのように研8で転向というのは珍しいと思います。
それだけに、男役の仕草と声をいきなり娘役とすることには大きな葛藤があったに違いありません。なぜそうした決断に至ったのかは本人しか知らないことでしょうが、歌に関してはそれまでにも定評があっただけに、翌年の公演ではすぐにエトワールに抜擢されて見事に大役を果たしました。
なんと音域の広い美しい歌声だろうと、初めて彼女の娘役姿を映像で見た時に驚きました。
Twitterなどで見る普段着姿の彼女は、髪を伸ばし始めてスカートを履き、徐々に娘役姿になっていきましたから、ファンのひとたちもそれほど違和感はなかったろうと思います。そして、それとともに公称身長167cmもいつのまにか164.5cmになっていました…。
いずれにしろ、最近観た「アルジェの男」でも美しい女性として舞台に登場していましたし、彼女の美声はこれからの星組にはなくてはならないものとなるでしょう。それとともに、「阿弖流為」で見せた見事な芝居ごころを、娘役としてももう少し使ってほしいと思いました。
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