続・宝塚OG公演「CHICAGO」観劇@KAAT(神奈川芸術劇場)

スポンサーリンク

迫力のある歌声は杜けあきだけではありません。

K. Okamotoとだけ出演者の欄に書かれていましたので、男だか女だかわからず。それでも「ソプラニスタ」だということをプログラムで読んで、たぶん男性だろうなと思っていました。美しく華やかな声量のあるオペラ風歌声で、会場が一気に明るくなりました。男性だとわかっていても、途中でいきなり白い下着に胸毛の変身にはビックリしましたが。

あの胸毛はホンモノなのでしょうか…。
しかし彼の実力はホンモノのようで、YouTubeで僕の大好きなオペラ「トゥーランドット」のNessun Dormaを見つけましたが、素晴らしいです。

ビリー・フリン役の姿月あさとは伸びやかな歌い方が美しく、出てきたときに会場の雰囲気がガラリと変わりました。いまだに中年の贅肉をつけもせず、スリムで男役としての華もあります。僕は一度も彼女がトップだったときの舞台を観ていないのですが、美しく歌の上手な男役だったことは容易に想像できます。ただし、いささか無表情が目立ちました。そのせいで、ビリー・フリンの憎めないけれどドロドロとした悪徳弁護士のインチキ臭さが見えてこないのです。つまり「宝塚の男役」としてはもう完璧と言ってもいいのでしょうが、その枠の外に出た「生身の金に汚い人間」としての匂いがないと言ってもいいかもしれません。

朝海ひかるですが、コケティッシュではあるけれど利用できるものはトコトン利用するあたりの第二幕からどんどんと艷やかになり、「これじゃあ皆落ちるよなあ」と納得できるセクシーでカワイイ女性になっていきました。偽妊娠を真実だと言わせるためにたぶん自分の身体を使って医者をたらしこんだりしたことが、医者の尻をそっと触ることで明白になったり、いやー、やられましたね。

さて、CHICAGOの舞台では僕は監獄タンゴが大好きです。ここでは6人の女たちの傲慢で浅はかでセクシーな殺人の言い訳が、迫力を持って次々と語られていきます。そして、ひとりだけ、なぜか薄幸の面影を宿す星奈優里のハンガリー人殺人犯ハニャック。「無罪!」という以外全く英語を話さず、最後には処刑されてしまいます。ハナモゲラ語にしか聞こえませんが、台本ではカタカナで書かれたハンガリー語だそうです(オフィシャルサイトによれば)。

蒼乃夕妃も最高にセクシーです。星奈優里も蒼乃夕妃もどちらも宝塚時代は娘役トップだったそうですが、CHICAGOでも脇役ながら光っていました。

さて、もうひとり僕が目を離せなかったひとがいます。彼女が出てくるとどうしても目が追ってしまって、真ん中で踊っている(または歌っている)朝海ひかるを逃しそうになったくらいです。最後まで名前がわからず、後で検索してようやく月央和沙という元花組の男役だったことを知りました。ダンスが抜きん出て上手く、僕は全身から放たれるオーラと蛇のように自在に動く手足に見とれてしまいました。

ボブ・フォッシーのダンスは腰と肩の両方を官能的にグラインドさせる動きで有名です。また、群舞でも舞台を大きく使って踊るわけではなく、ダンサーはかたまって密な空間の中で別々の動きをしながらうねりを表現します。月央和沙は男役ですから黒い長袖トップにカーゴパンツというシンプルな衣装でしたが、それでもその官能的な動きがあまりにも刺激的で、どうしても目が離せませんでした。すごいなあ、宝塚時代はどのような役をしていたのでしょうか。

いずれにせよこのCHICAGOの舞台には現役生たちの宝塚独特の華やかさはなく、どちらかというともっと大人の世界。宝塚OGとしては画期的な試みではないでしょうか。まだまだ彼女らの才能を埋もれさせるには早いような気がしますし、こうした機会が「懐かしの宝塚メロディー」以外の場で設けられるのはファンにとっても大変喜ばしいことです。

ネットで近況を探すと、定期的にコンサートを行ったり、ダンス教室のインストラクターになったりというひとたちも沢山いるようですが、もっとなにか「宝塚以後」のこうした試みを繰り返してほしいですね。特にダンス。歌ばかりではなくこのダンスに関しては、実力のある宝塚出身者たちの出番が少ないと思います。湖月わたるは他の分野のダンスにも進出しているようですが、まだまだ他の実力者たちはダンス教室のインストラクターとしてのみの活躍しか見えないのが残念です。CHICAGOのような目を見張る芸を「宝塚以後」として舞台に乗せてほしいと心から願っています。

そうそう、劇場の外に出ると、エスカレーター上の僕の前には背の高いふたりの女性がいました。そのひとりが振り向いたとき、どこかで見たような気がして後で検索してみたら、宝塚でもよく声楽のインストラクターとして登場する楊淑美でした。お隣の女性も一緒に写っている写真があったのでわかりました。宙組組長寿つかさの妹、元男役の達つかさでした。宝塚のひとたちは、退団しても華やかで目立ちますね。

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村ランキングに参加中。クリックしていただけると嬉しいです。

コメント

  1. まぁ様沼に堕ちた研3生 より:

    zukamenさん、日本は楽しまれましたか?
    私も達つかささんとお母さまがご一緒に日比谷でシェイクスピアをご観劇なさる日にお会いしたことがあります。お母さまも長身でとてもお美しい方で、おふたりを溜息交じりに拝見しておりました。
    ところで、花組さんのミーマイはご観劇出来ましたか?

  2. zukamen より:

    まぁ様沼に堕ちた研3生さん、こんにちは。
    日本は楽しかったですが、いや疲れました。ヨレヨレです。今回は会議の間を縫って3つも観劇しましたから。ミーマイも観ました! これからその記事も書くつもりです。
    東京でも観劇などでそうした元宝塚の生徒さんたちを見ることがあるんですね。

  3. 蘭月 より:

    先日はありがとうございました。
    月央和沙さん(愛称よっち)は、現役時代からダンサーでした!
    役者としても渋く上手い方でした。
    蘭寿さんと一緒に卒業されました。今の花組はダンスの花組ではなくなったことが寂しいですね。
    藤本真由さんも書いてくださっています。もしもよろしかったら…→http://daisy.eplus2.jp/article/396742571.html

  4. zukamen より:

    蘭月さん、こんにちは。
    やはり月央和沙はダンサーだったのですね! (今Instagramで確認してフォローしました。NY公演の写真が沢山ありましたので)
    そうですか、花組は「ダンスの…」と形容されていたんですね。そう言えば、蘭寿とむもダンスの上手いひとだったというのは、色々なところで散見しました。
    藤本真由さんのブログアドレスをどうもありがとうございました。
    どうもどこかで見た名前だと思ったら、CHICAGOのプログラムで解説を書いていらっしゃいました。こういう方の評論は、意見が一致するか否かにかかわらず読むのが大変面白いです。さっそくブックマークしました。