宝塚には数々の名作がありますが、その中でも日本物と呼ばれる時代劇ジャンルの舞台にも心に残るものが沢山あります。昔と比べて最近は日本物が少なくなったと言われていますが、いやいやどうして、「和物の雪組」は健在です。
それでもまずは僕の大好きな「ちょっと昔の宝塚」から、月組の和物を。
1990年月組「川霧の橋」にみる剣幸とこだま愛のむつまじさ
たぶん若い宝塚ファンの人たちはまだ生まれていないころでしょうが、僕はこの公演をよく覚えています。いなせな剣幸がとてもかっこよかったですし、愛くるしい笑顔のこだま愛はもうため息が出るほど美しかったのです。
いわゆる人情物という和物ではよく舞台にあがる題材ですが、僕はこれが読むのも観るのも大好きです。人情の深さと温かさに心がほっとして、ハッピーエンドになってほしいひとたちにそれが訪れるからです。
この「川霧の橋」もそんな人情物のひとつで、まだ若い天海祐希がただ1人悪役という具合に出ていました。
残念ながら、DVDは出ていません。
NHKでは何回か再放送されたようですが、さてまたやってくれるでしょうか。
1992年の「忠臣蔵〜花に散り雪に散り〜」で退団した杜けあき
「芝居の雪組」として高い評価を受けたこの杜けあきの退団公演は一本物、しかも月代の侍で「男らしく」退団というので話題になった作品です。
脚本と演出はあの偉大な柴田侑宏、そしてあれだけ評判を得た作品なのに、なぜか一度も再演されていません。
僕はそれが杜けあきの当たり役だったからだと思っていましたが、改めて観るとこの杜けあきをトップとする雪組の生徒さんたちがあまりにも完璧だったからではないでしょうか。出演者の名前を見るだけでも、その後にトップになった生徒さんたちも多く、しかも「誰もが歌える」という驚きの層の厚さを見せていたからです。
もうひとつ。僕はこの忠臣蔵で見せた杜けあきの「和物の色気」が、誰にでも出せるものではないからだと思っていました。大石内蔵助と言えば、オジサンです。そのオジサンを演じながらたっぷりとしたたる色気を舞台で放つのは、僕には杜けあき以外には考えられないのです。
復刻版のDVDも出ていますし、探せばどこかに映像もアップされているはずです。
この重厚で美しい当時の雪組をぜひ一度は観てほしいと思います。
2014年雪組「心中・恋の大和路」壮一帆の美しさ惹かれる
このDVDは、僕が観劇を再開してから初めて購入したいくつかのDVDのうちのひとつです。
稽古動画を見て、壮一帆の美しい所作と流れるような関西弁に惹かれて買い求めました。
もちろん心中モノですから、悲しい最後が待っているのですが、それがまた凄惨な美しさでした。真っ白な舞台に真っ白な着物を着た二人。そして、そこにかぶさるのが未涼亜希の独唱。悲しく響く歌と死に急ぐ二人の姿に、テレビの前で涙してしまったのは僕です。
僕はもう少しこの壮一帆の和物が観たかったですが、3作で退団、残念でした。
2017年雪組「幕末太陽傳」にみる早霧せいなの底抜けの明るさ
郭の極彩色の妙と、早霧せいなの所狭しと走り回るコミカルな仕草と明るい笑顔。そうしたものが一丸となって、この早霧せいな退団公演は、和物としては最後まで明るさの目立つ舞台となっていました。
詳しくは僕の記事を読んでいただきたいと思いますが、昭和の雰囲気を保ちながらもポップ調の色彩と言葉の面白さで、とてもよくできていた作品だと思います。
和物というとどこかに寂しさと悲しさがただようものが多いですが、この作品にはそれを全く無視したところに早霧せいなの笑顔の宝塚退団があったのでしょう。
いくつか紹介しましたが、宝塚の日本物にはよい作品がまだまだ沢山あります。
最近、というほど新しくはありませんが、「星逢一夜」も「銀二貫」もとてもいい舞台でした。
コロナ禍のせいで次々と公演が中止になり、涙をのんだファンの方たちも多いと思います。でも、ささやかではありますが自宅で楽しむこともできます。
そしてDVD購入などで宝塚歌劇に貢献することも。
にほんブログ村ランキングに参加中。クリックしていただけると嬉しいです。
コメント