ニュースと写真を見て、「ああ、エドガーはやはり明日海りおの当たり役なのだ」と思いました。
かつては、早霧せいなが退団後にまた「るろうに剣心」の緋村剣心を演じましたが、これも同じような経過をたどっています。「るろうに剣心」も宝塚で大ヒットしましたね。どちらも小池修一郎の脚本・演出ですし。
昔は、というより今までは宝塚在団中に演じた男役としての主役を「外の世界」でも演じるということはまずありませんでしたから、これは時代が変わったというべきでしょう。
もちろん、「エリザベート」では、花總まりを筆頭に次々と元宝塚トップたちを起用していますが、それはあくまでエリザベートという「女性」の役であって、トートは男性俳優に演じられているのです。
つまり「るろうに剣心」と「ポーの一族」での元宝塚男役トップの起用は、はっきり分かれていたジェンダーの境界線が混じり合ってきた、現在の新しい演劇の姿かもしれないと思いました。どちらの役も「男でもなく、女でもない」妖しい雰囲気を持つ者たちだからです。
そうした役に関して言えば、長く男役を演じてきた宝塚男役トップたちが演じるのがもっとも適しているのでしょう。
特にエドガーはまだ少年(の雰囲気を残すバンパイヤ)です。少年の姿でありながら、心はすでに何百歳にもなる不思議な存在です。こうした役を大人の男性が演じるには無理があり、また10代のあどけない少年が老成した心を演じられるかという問題があります。
ここで出てくるのが、もちろんエドガー役で絶賛された明日海りおです。
あの役を演じることができるのは、「今」の明日海りおしかいないでしょう。彼女もすでに35歳ですし、この「少年」になりきれるのはこれが最後なのではないでしょうか。はかない雰囲気というものが、演技力だけで到達できるとは思えないからです。
男役という「役」から放たれた明日海りおが、今回女優として演じるエドガー。
どのようなものになるのか楽しみにしています。
僕が書いた宝塚時代の明日海りお主演「ポーの一族」感想はこちらからご覧ください。
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コメント
お久しぶりです。
東京ではようやく舞台を楽しめるようになりました。
OGが卒業後に男性の役を演じるようになったのは、私の観劇経験上では壮一帆さんぐらいからでしょうか。本コラムの趣旨とは少し違いますが、それまで男性しか出てこなかった舞台に名を連ねた七海さんなんかも一つの歴史だと思います(観ることはかないませんでしたが)。
そしてそうですね。「演技力だけで到達できるとは思えない」壁があるのは確かですが、卒業して何年経っても少女時代のエリザベートを演じることができる花總まり様のような方もいらっしゃいます。何度か拝見する機会に恵まれましたが、近くで見るとアラがあるというようなものではなく、まさしくそこに、ひとりの少女が存在していました。
年齢や性別の壁を越える方が増えていくことで、より自由な配役が楽しめることを期待しています。
ちなみに、ポーの一族は「バンパイヤ」ではなく「バンパネラ」です。
薔薇を食べ、昼間でもお外を歩くことができる人たちなので・・・。
ペン吉さん、お久しぶりです。
ああ、そうでしたね。バンパイヤではなくバンパネラ。すみません。
東京ではいくつか舞台が再開され始めたようですが、オーストラリアがまだ海外渡航への制限があるため、日本行きは来年以降になりそうです。残念です。